特徴
・急激な全身炎症で始まり、脳浮腫・多臓器不全に至る経過から、主な病態は「サイトカインストームによる急激な多臓器障害」である。
・発熱から神経症状発現までの時間が非常に短く、24時間以内に30%、48時間以内に70%が発症する。
・一般的な臨床症状は、非特異的な発熱、頭痛から始まり、その後に中枢神経症状が出現する。
病態
・インフルエンザ脳症患者では、末梢血白血球におけるサイトカイン(TNF-α, IL-6, IL-10)遺伝子の発現は、神経合併症を認めない患者と比較して有意に亢進していることが判明している。
・大量の炎症性サイトカインが脳や肝臓でのアポトーシスや血球貪食症候群を引き起こし、血管内皮の傷害が血管透過性の亢進や血流傷害を引き起こすことにより、結果的に多臓器不全になると考えられる。
診断基準
・神経症状と、画像所見から診断を行う
神経症状
確定例
・JCS20以上の意識障害が24時間以上続く場合
疑い例
・意識障害が経過中、増悪する場合
・JCS10以上の意識障害が12時間以上続く場合
・JCS3以下の意識障害であっても、その他の検査から脳症を疑う場合
画像所見(頭部CTあるいはMRI検査)
確定例(CT)
・びまん性低吸収域(全脳、大脳皮質全域)
・皮髄境界不鮮明
・脳表クモ膜下腔・脳室の明らかな狭小化
・局在性低吸収域(同側視床、一側大脳半球など)
・脳幹浮腫(脳幹周囲の脳槽の狭小化)
疑い例(MRI)
・拡散強調画像で高信号域の病変
・T1強調画像で低信号域、T2強調、FLAIR画像で高信号域の病変
その他の検査所見
脳波検査
・びまん性高振幅徐波
・electrical storm
血液検査
・血小板減少
・AST、ALT上昇
・CK上昇
・血糖以上
・凝固異常
・BUN、Cre上昇
・高アンモニア血症
尿検査
・血尿
・蛋白尿
予後不良因子
①症状
・最高体温(41°C以上)
・下痢
②使用薬剤
・ジクロフェナクナトリウム
・メフェナム酸
③検査所見の異常
- 血液検査:Hb 14 g/dL 以上,血小板 10 万 /μL 未満,AST・ALT 100 IU/L 以上,
CK 1,000 IU/L 以上,血糖 50 mg/dL 未満または 150 mg/dL 以上,PT 70% 未満, アンモニア 80μg/dL 以上 - 尿検査:血尿,蛋白尿.
- 頭部画像検査:大脳のびまん性浮腫状変化,出血
鑑別診断
・意識障害を来す他の疾患との鑑別が重要
中枢神経感染症
・細菌性髄膜炎
・ウイルス性脳炎 など
代謝異常症
・糖尿病性昏睡
・低カルシウム血症
・尿素回路異常
・有機酸・脂肪酸代謝異常 など
その他
・中毒
・虐待
・熱中症 などなど
治療や画像所見については、下記記事にまとめてあります。
インフル特異的治療としては、ラピアクタがあります(インフルの記事の最後の方にまとめてます)。







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