こんにちは、小児科医りんご🍎です。
今回は、インフルエンザ脳症についてをまとめていきます。
「インフルエンザ=高熱が出る病気」と思われがちですが、本当に怖いのは熱そのものではなく、稀に合併する「インフルエンザ脳症」です。
発症すると進行が非常に早く、後遺症を残す可能性もあるため、私たち小児科医が最も警戒する合併症の一つです。
それでは、その特徴についてから解説していきます。
特徴:インフルエンザ脳症とは?
・脳症では、ウイルスが直接脳を攻撃するのではなく、体内の免疫システムが暴走する「サイトカインストーム」によって脳に強い腫れ(浮腫)が起きる状態を指します。
- 発症時期: 発熱から数時間〜1日以内と、極めて初期に起こることが多いです。
- 対象: 主に5歳以下の幼児に多いですが、学童期以降でも油断はできません。
・急激な全身炎症で始まり、脳浮腫・多臓器不全に至る経過、上記で述べた通り、主な病態は「サイトカインストームによる急激な多臓器障害」である。
・発熱から神経症状発現までの時間が非常に短く、24時間以内に30%、48時間以内に70%が発症する。
・一般的な臨床症状は、非特異的な発熱、頭痛から始まり、その後に中枢神経症状が出現する。
病態
・インフルエンザ脳症患者では、末梢血白血球におけるサイトカイン(TNF-α, IL-6, IL-10)遺伝子の発現は、神経合併症を認めない患者と比較して有意に亢進していることが判明している。
・大量の炎症性サイトカインが脳や肝臓でのアポトーシスや血球貪食症候群を引き起こし、血管内皮の傷害が血管透過性の亢進や血流傷害を引き起こすことにより、結果的に多臓器不全になると考えられる。
熱せん妄との違い
一時的な「熱せん妄」と、命に関わる「脳症」の違いを改めて整理します。
緊急性のチェックリスト
以下の症状が「1時間以上続く」場合は、脳症を強く疑い、迷わず救急外来を受診してください。
| 症状の項目 | 熱せん妄(様子を見てOK) | インフルエンザ脳症(すぐ受診!) |
| 意識の状態 | 呼びかけに反応する。ママがわかる。 | 呼びかけに反応しない。視線が合わない。 |
| 持続時間 | 数分〜15分程度でおさまる。 | 1時間以上ずっと様子がおかしい。 |
| けいれん | 伴わないことが多い。 | 5分以上のけいれん、または繰り返す。 |
| 言動 | 「アニメのキャラが見える」など。 | 意味不明な叫び声、親を他人扱いする。 |
絶対にやってはいけない!薬の注意点
インフルエンザ脳症のリスクを高める可能性があるとして、使用を避けるべき解熱剤があります。
- NGな成分: ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)、メフェナム酸(ポンタールなど)
- 推奨される成分: アセトアミノフェン(アンヒバ、アルピニー、カロナールなど)
⚠️ 注意: 以前処方された「余り」の解熱剤を自己判断で飲ませるのは、インフルエンザの時は絶対に避けてください。
私たちができる最大の防御:予防接種
「ワクチンを打ってもインフルエンザにかかるから意味がない」という声も聞きます。しかし、ワクチンの真の目的は「重症化(脳症や肺炎)を防ぐこと」にあります。 完全に防ぐことはできなくても、脳症という最悪の事態を避けるための「盾」を、お子さんに持たせてあげてほしいのです。
保護者の方へ:違和感を信じてください
診察室で多くの親子を見てきて思うのは、「お母さん・お父さんの『いつもと違う』という直感は、どんな検査よりも鋭い」ということです。
少しでも「様子がおかしい」と感じたら、夜間であっても遠慮せずに医療機関に連絡してください。その一歩が、お子さんの大切な未来を守ることにつながります。
診断基準 (ここから医療者向け情報)
・神経症状と、画像所見から診断を行う
神経症状
確定例
・JCS20以上の意識障害が24時間以上続く場合
疑い例
・意識障害が経過中、増悪する場合
・JCS10以上の意識障害が12時間以上続く場合
・JCS3以下の意識障害であっても、その他の検査から脳症を疑う場合
画像所見(頭部CTあるいはMRI検査)
確定例(CT)
・びまん性低吸収域(全脳、大脳皮質全域)
・皮髄境界不鮮明
・脳表クモ膜下腔・脳室の明らかな狭小化
・局在性低吸収域(同側視床、一側大脳半球など)
・脳幹浮腫(脳幹周囲の脳槽の狭小化)
疑い例(MRI)
・拡散強調画像で高信号域の病変
・T1強調画像で低信号域、T2強調、FLAIR画像で高信号域の病変
その他の検査所見
脳波検査
・びまん性高振幅徐波
・electrical storm
血液検査
・血小板減少
・AST、ALT上昇
・CK上昇
・血糖以上
・凝固異常
・BUN、Cre上昇
・高アンモニア血症
尿検査
・血尿
・蛋白尿
予後不良因子
①症状
・最高体温(41°C以上)
・下痢
②使用薬剤
・ジクロフェナクナトリウム
・メフェナム酸
③検査所見の異常
- 血液検査:Hb 14 g/dL 以上,血小板 10 万 /μL 未満,AST・ALT 100 IU/L 以上,
CK 1,000 IU/L 以上,血糖 50 mg/dL 未満または 150 mg/dL 以上,PT 70% 未満, アンモニア 80μg/dL 以上 - 尿検査:血尿,蛋白尿.
- 頭部画像検査:大脳のびまん性浮腫状変化,出血
鑑別診断
・意識障害を来す他の疾患との鑑別が重要
中枢神経感染症
・細菌性髄膜炎
・ウイルス性脳炎 など
代謝異常症
・糖尿病性昏睡
・低カルシウム血症
・尿素回路異常
・有機酸・脂肪酸代謝異常 など
その他
・中毒
・虐待
・熱中症 などなど
治療や画像所見については、下記記事にまとめてあります。
インフル特異的治療としては、ラピアクタがあります(インフルの記事の最後の方にまとめてます)。







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