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【小児科医blog:ER, 小児】小児科医が熱中症について解説〜熱中症といっても分類は様々〜

小児
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総論

定義

・熱中症とは、体温上昇と水分や塩分の喪失により発症する臓器障害の総称である。

発熱の仕組み, 熱中症の発熱との違い

・通常の発熱では、感染症などで外因性の発熱物質や、内因性の発熱物質が放出され、その刺激を脳の視床下部というところが受けて、体温を調節する。ここで調節される体温をセットポイントといい、感染症罹患時はこのセットポイントをあげて、免疫でウイルスを倒そうとしている。

・しかし、熱中症の場合、熱産生の異常な増加、熱放射の障害、外部からの加熱などで体温が上昇している状態である。つまり、通常の発熱と異なり視床下部のセットポイントはあまり関係が少ない。

・アセトアミノフェン(=解熱薬の1種)は、視床下部のセットポイントに影響して熱を下げる薬であり、熱中症の場合は効果がなく、むしろ代謝が亢進してしまう恐れすらある。熱中症の治療の第一は、なにより「冷却」が重要である。

診断のポイント

①児が熱熱環境にいたかの確認

・病歴聴取が重要。暑い環境にいた患者の意識消失では熱中症を疑うべき。

②他疾患の除外

・熱中症でふらっと倒れた後に頭部を負傷したエピソードがあるなどの場合、頭部CT撮影も必要

・また、以前より意識消失を繰り返すエピソードあれば、脳波・心電図も有用。

特徴的な所見

・暑熱環境での神経症状 (頭痛、めまい、神経症状など)

・発汗のない高体温

….などなどが参考になります。

状況での分類:運動性・古典的熱中症

・熱中症は、状況により小児の場合大きく2つのタイプがある。

・一つはスポーツなどの運動時に多い、運動性熱中症。もう一つは乳幼児の車内の閉じ込めなどで多い古典的熱中症である。

運動性熱中症

年齢:若年者

発症様式:5-8月に多い、炎天下の運動中など

背景:特になし

薬剤:通常なし。アルコール飲酒時などは起こりやすい

皮膚:汗で湿潤

循環:脱水著明、循環虚脱している

中枢神経障害:よくある

酸塩基平衡:代謝性アシドーシス

横紋筋融解症:あり

腎不全:ときどきあり

肝障害、DIC:ときどきあり

古典的熱中症

年齢:乳幼児

発症様式:車内閉じ込め、高温環境での閉じ込め

背景:体温調節未発達の場合に多い

皮膚:乾燥肌

循環:脱水はないこともあり(高度脱水になる前に、高体温による中枢神経障害を起こす)、過剰輸液はNG

酸塩基平衡:呼吸性アルカローシス

横紋筋融解症:まれ

腎不全:まれ

肝障害、DIC:まれ

熱中症の分類

・熱中症は程度により、Ⅰ〜Ⅲ度の分類される。

Ⅰ度-1:熱けいれん(heat cramp)

・熱中症の中で最も頻度が高い

・高温多湿下での激しい運動や作業による、発汗とNa喪失のため引き起こされる、筋肉の攣縮。下肢の筋肉に多く、「こむら返り」と言われる。

・Naの補給を伴わない水分摂取が原因で、通常体温は正常か軽度上昇(38℃以下)にとどまる

・頭痛、めまい、腹痛・嘔吐を伴い、運動後や休息時に発症することが多い。

・皮膚は蒼白で、温かく、発汗を認める。

・血液検査では、低Na血症、血液濃縮を認め、筋攣縮が強い場合、CKやミオグロビンの上昇を認めることがある。

Ⅰ度-2:熱失神-日射病(heat syncope)

・直射日光下での長時間起立や運動で起こる。

・温められた皮膚への血流分布異常から末梢循環不良が生じて引き起こされた起立性低血圧状態であり、通常体温上昇はみられない。

・頭痛、めまい、一過性の意識障害を認めることがあるが、回復は速やかである。

・検査では通常異常は認められない。

Ⅱ度:熱疲労(heat exhaustion)

・高温多湿下での激しい運動により引き起こされ、Ⅲ度熱中症の前段階と考えられている。

・大量の発汗などによる細胞外液と塩類の大量喪失が引き起こす循環不全がこの病態。

体温は正常か中等度上昇(40度以下)である。

・全身倦怠感が強く、頭痛、めまい、悪心を伴う。脱水、頻脈、起立性低血圧を呈する。

・検査では、血液濃縮、CK上昇、肝腎機能障害を認める。

Ⅲ度:熱射病(heat stroke)

・熱負荷および熱産生と熱放散のバランスが崩れ、体温調節機能が障害され高体温が生じ、循環不全と相まって全身臓器障害が生じる。

体温は40℃以上、深部体温では41℃以上となる。

・けいれん、昏迷、昏睡などの中枢神経症状をきたし、特に小脳、基底核、視床下部、大脳辺縁系が障害されると言われる。

皮膚温は高く乾燥し、低血圧、頻脈となる

・検査では、横紋筋融解によるCK上昇、肝腎機能障害、電解質異常、代謝性アシドーシス、DIC、ミオグロビン尿を呈する。ミオグロビン尿は尿試験紙に反応するので、尿沈渣で赤血球がなければ強く疑っても良い。

熱射病(Ⅲ度熱中症)の合併症

・上記にまとめた通り、Ⅲ度熱中症では全身臓器障害を呈する。具体的な異常について下記に記す。

中枢神経障害

脳浮腫:脳温上昇による細胞内酵素活性低下、高サイトカイン血症

脳虚血:循環不全、血圧低下

けいれん・意識障害:脳虚血、脳神経細胞障害

循環器系障害

・低血圧

・心機能障害

・心電図異常:ST-Tの異常、上室頻拍

呼吸器系障害

・肺水腫

・ARDS(急性呼吸窮迫症候群)

消化器系障害

・腹痛嘔吐:肝臓や腸管膜動脈の血流障害

・肝酵素上昇、胆汁うっ滞、肝不全

腎機能障害

・急性尿細管壊死

・急性腎不全

血液・凝固障害

・ヘマトクリット上昇

・血小板減少

・DIC

電解質・酸塩基平衡障害

・代謝性アシドーシス

・高Na血症

・高K血症

・低血糖

・高乳酸血症

鑑別疾患

・鑑別疾患は、発熱+意識障害をきたす疾患となります。

①敗血症+髄膜炎

②外傷性脳損傷

③急性脳症

④けいれん重積

⑤脳出血

→身体所見のみでの熱中症との鑑別は難しく、暑熱環境への滞在などの病歴聴取が重要。

治療

冷却

・直腸温が40度以上の場合は要注意。速やかに冷却を行う。

・氷水で、とにかく直腸温を39.0度未満に下げる。

・0.1度/分の以上の速さで冷却するのがよい。氷水で全身を冷やせば、0.2度/分の速度で冷却できる

・浴槽で冷やすのが一番だが、シーツの両脇を持ち上げて、そこに氷と水を入れて体を10cmほどつかるようにする方法もある。扇風機であおぐことで急速に冷却できる。

輸液

・運動性熱中症の場合、輸液で循環血液量を増やしてあげる。冷やした輸液を用いるのが良い。

・エコーで下大静脈をモニターすると脱水の補正の程度がわかりやすい。

・輸液量は、10-20mL/kg/hr程度を目安に開始する。尿量や血液検査を参考に投与量を調節する。

・横紋筋融解症の場合は、大量の輸液が必要となる。

経口補水

・熱中症の予防としては、口渇感があれば、その都度、糖分と塩分を含んだ水分を摂取することである。

・糖( グルコース)とNaが1molずつあって水分が細胞内に共輸送されるため、ただ糖分の含まれたスポーツ飲料を飲むだけでは、水分吸収の効率が悪い。

・もしくは、重症度Ⅰでは経口補水のみで改善が得られる。

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