呼吸窮迫症候群(RDS)について | ゆるっと小児科医ブログ
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呼吸窮迫症候群(RDS)について

呼吸器

RDS:respiratory distress syndrome

・早産児に見られる、肺サーファクタントの不足により肺胞が潰れやすくなっていることを原因とした呼吸障害です。

・適切な治療を早期に行うことで、改善の程度が変わってくるので、検査や治療法についてまとめておきます。

リスク因子

・早産児(肺サーファクタントが十分につくられていないため)

・帝王切開で出生した児(分娩時の適度なストレスが不足している)

・糖尿病母体児

・新生児仮死

・双胎第2子

・男児

病態

・肺胞内ではⅡ型肺胞上皮細胞から産生される、肺サーファクタントが界面活性剤として肺胞内面の表面張力を低下させることにより、呼気時に肺胞の虚脱を防ぎ、呼吸仕事量を軽減している。

・しかし早産児の場合、肺胞上皮細胞の未熟性のため肺サーファクタントが不十分となり、肺胞が虚脱して呼吸障害を起こす。

・さらにサーファクタントが欠乏して呼吸障害が起きると、生成を阻害する病態(低酸素血症、循環不全、低体温など)や、不活性化させる病態(虚脱した肺胞内に漏出したフィブリノゲンやアルブミン、ヘモグロビンなど)が影響してさらに呼吸障害が増悪する悪循環となる。

検査

マイクロバブルテスト(SMT:stable microbubble test)

・早産児の出生時羊水または胃液を用いた検査。

・マイクロバブルという、直径15μm以下の小さな水疱(安定小泡)の数を顕微鏡で評価する。

・安定小泡(stable microbubble)が乏しいことがサーファクタント欠乏を示唆する所見。

・血液や胎便の混入はサーファクタント活性を低下させるため評価に注意する。

胸部単純X線検査

①肺容量の低下

②肺野の網状顆粒状陰影またはすりガラス状陰影:グレード分類として、Bompel分類が用いられる。

③気管支透亮像(air bronchogram):肺野が全体的に白く見えることで、本来見えにくい末梢の気管支が黒く見える。

Bomsel分類(X線所見による肺硝子様膜症の重症度評価)

網・顆粒状陰影肺野の明るさ中央陰影の輪郭air bronchogram
Ⅰ度かろうじて認められる微細な顆粒状陰影
末梢部に比較的多い
正常鮮明欠如または不鮮明
中央陰影の範囲を出ない
Ⅱ度全肺野に網・顆粒状陰影軽度に明るさ減少鮮明鮮明
しばしば中央陰影の外まで伸びる
Ⅲ度粗大な顆粒状陰影著明に明るさ減少不鮮明
中央陰影拡大
鮮明
気管支の第2、第3分岐まで認められる
Ⅳ度全肺野が均等に濃厚影で覆われる消失鮮明

治療

呼吸器管理

・気管挿管の基準を満たす場合、あるいはX線所見などから今後、人工呼吸器を必要とする可能性が高いと判断した場合は、早めに人工呼吸器管理とする。

換気条件の初期設定の1例

モード:IMV

PIP:15-18 (cmH20)

PEEP:4-6 (cmH2O)

換気回数:40 (/min)

吸気時間(IT):0.4-0.5 (sec) ※サーファクタント投与時は長めに設定

酸素濃度(FiO2):0.21-0.40

肺サーファクタント補充療法

 サーファクテン®︎(ST-A) 1回 120 mg/kg(1バイアル=120mg)を生理食塩水3-4mLに懸濁

<溶解方法>

・薬剤を取り出した後、溶解前に最初はまず薬剤の塊をできるだけ細かくする必要がある。サーファクテンの入っていた箱などで瓶を軽く叩いて粉にすると良い。

・溶解する時は、泡立たないようにゆっくりと生食を瓶に回し入れる。その後、ゆっくりと溶け残しがないようにバイアルをまたゆっくりと回して薬剤を溶かしていく。溶解後、27G針を通して、固まりをつぶす。

<投与方法>

・5mLのディスポシリンジに溶解してサーファクテン®️を吸い取る。流量調節式バックで酸素投与下、ゆっくり加圧しながらバギングを行う。バギングの際は肺が虚脱しないようにPEEPが十分かかるよう注意して行う。

・気管チューブを介して数回に分けて体位変換を行ながら投与する。正面→右側臥位→左側臥位…という感じに介助者と協力して投与する。

・通常すぐに呼吸状態の改善を認めるが、効果不十分であれば追加投与を検討する。

補充療法後の呼吸管理

・人工呼吸管理は肺へのダメージの主因であり、その結果慢性肺疾患の予後を左右することもある。

・FiO2 0.3-1.0、換気回数40-60回/分、PIP 16-20/PEEP 5、吸気時間0.4-0.6秒で開始。

・RDSではサーファクタント投与後に急激に肺コンプライアンスが増大するため、変化に合わせて呼吸器設定変更を心がける。

・PEEPは高めに(PEEPを下げても肺損傷軽減にはつながらない)、1回換気量は小さめに、FiO2は低めに管理する。

・換気条件を下げる手順としては、FiO2>PIP>吸気時間>PEEP>換気回数

  FiO2:0.21-0.3程度まで下げていく

  PIP:1-2ずつ下げて、12-14までweaning

  Rate:5くらいずつ下げて、20-30程度までweaning

・換気圧を下げ始める時期は、サーファクタント投与後3時間以上経過し、PaCO2が低下(または1回換気量増加)し始めたとき。遅れると、低CO2血症やair leak合併の危険性があるので注意する。

・可能であれば早期に侵襲的陽圧換気療法を離脱し、nasal-CPAPなどの非侵襲的な呼吸補助療法で管理するようにする。

RDSの発症予防

・分娩前の母親へのステロイド投与により、胎児の肺成熟を促し、RDSの発症率や重症度を軽減し、児の死亡率や頭蓋内出血、壊死性腸炎、感染症のリスクを軽減することが可能。

・在胎34週以下の早産が予想される場合、分娩前の母親へのステロイド投与を行う。

  ベタメタゾン(リンデロン®︎)12mg/回 24時間ごとに2回 筋肉内投与

・さらに可能であれば、ステロイド投与後24時間以上待って分娩することが望ましい。

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