【小児科医blog:感染症】マイコプラズマ感染症について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:感染症】マイコプラズマ感染症について

呼吸器

総論

・ヒトに感染するマイコプラズマとしては、Mycoplasma pneumoniae, Mycoplasma hominis, Ureaplasma urealyticumの3種が知られている。

・ウレアプラズマは、母体からの垂直感染により、新生児の呼吸器疾患、特に慢性肺疾患と関連することが報告されている。

特徴・疫学

・5歳以上の小児市中肺炎の19%を占める

・家族内感染の頻度は40%と高い。

・15-55%は不顕性感染

流行パターン

  • 3-7年周期の大流行(P1遺伝子型の交代と関連)
  • 季節性:夏季から秋季にかけてピーク

症状

・小児におけるマイコプラズマ肺炎は従来学童期に多いとされていたが、幼・小児期における感染も決して稀ではない。この場合、上気道感染~気管支炎が主体で、肺炎の病態をとらないことが多い。

・一般的には、発熱、乾性咳嗽、頭痛、倦怠感などの感冒様症状で発症する。鼻汁は病初期には目立たないとされ、マイコ感染を疑う一助になる。咳嗽は比較的頑固で長期間。

症状の時系列変化

前駆期(感染後1-2週間)

  • 無症状またはごく軽微な上気道症状

急性期(1-7日目)

  • 37.5-38.5℃の発熱(弛張熱パターン)
  • 乾性咳嗽(金属性、非生産性)
  • 咽頭痛、頭痛

進展期(8-14日目)

  • 咳嗽の増悪(特に夜間)
  • 胸痛、呼吸困難感
  • 全身倦怠感、食欲不振

回復期(2週間以降)

  • 遷延する咳嗽(3-8週間持続可能)
  • 徐々に症状改善

年齢別特徴

  • 乳幼児:発熱が主症状、咳嗽は軽度
  • 学童期:典型的な症状経過
  • 思春期・若年成人:重症化リスク増加

肺炎のスコアリング項目

・以下の項目で、細菌性肺炎とマイコプラズマ肺炎の評価法がある。

①年齢が6歳以上

②基礎疾患がない

③1週間以内にβラクタム系薬の前投与がある

④全身状態が良好である

⑤乾性咳嗽が主体である

⑥胸部聴診でcracklesが聴取されない

⑦胸部X線写真上、肺炎像が区域性である

⑧血液検査で白血球数が10000/μL未満

⑨血液検査でCRPが4.0 mg/dL未満

①〜⑥のうち3項目以上あてはまる場合はマイコプラズマ肺炎の可能性が高い

①〜⑨のうち5項目以上あてはまる場合はマイコプラズマ肺炎の可能性が高い

経過

・潜伏期間は1-3週間

・抗菌薬が有効であれば、48時間以内に80%が解熱する。

・抗菌薬が無効であっても、5日程度で解熱することが多い。

・咳嗽は第3-5病日に悪化し、2-4週間持続する。夜間に悪化する。

検査

血清診断

微粒子凝集(PA)法

・ペア血清で抗体価の陽転あるいは4倍以上の変動を認めれば有意。

・IgM反応の強さに依存する

・単一血清では、320倍以上で感染の疑いが強いと考えられる。

イムノカード法

・陽性結果が必ずしも現在の感染を意味しない

・発熱から4日以内の病初期は不十分

補体結合(CF)法

・ペア血清で抗体価の陽転あるいは4倍以上の変動を認めれば有意

・IgG反応の強さに依存する

遺伝子・抗原診断

LAMP法

・陽性は、ほぼ間違いなく感染急性期を示唆する

・検体採取手技、保存、運搬などに依存する

抗原検出法

・陽性は、ほぼ間違いなく感染急性期を示唆する

・必ずしも十分ではない

治療

抗菌薬

第一選択:マクロライド系

経口 アジスロマイシン(AZM) 10 mg/kg/day 最大500mg 分1、3日

経口 クラリスロマイシン(CAM) 10-15 mg/kg/day 最大800mg 分2-3 10日間

第1選択はマクロライド系抗菌薬。しかし、投与後2-3日発熱が続く場合はマクロライド耐性マイコプラズマを考えて、テトラサイクリン系またはキノロン系を考慮する。

第二選択:キノロン系

経口 トスフロキサシン(TFLX) 12mg/kg/day. 分2 7-14日間

第二選択:テトラサイクリン系

経口or点滴静注 ミノサイクリン(MINO) 2-4mg/kg/day 分2 7-14日間

※8歳以上の使用とすること

免疫調節療法

  • 全身性ステロイド:メチルプレドニゾロン(1-2mg/kg/日、3-5日間)
    重症例や遷延する咳嗽に対して考慮
  • マクロライド少量長期投与:抗炎症作用を期待(慎重に検討)

合併症と管理

呼吸器合併症

  • 難治性肺炎:胸腔ドレナージ、ECMO考慮
  • 器質化肺炎:ステロイドパルス療法

肺外合併症 

多彩であることに要注意

  • 皮膚粘膜症状:Stevens-Johnson症候群(HLA-B*54:01との関連)、多形滲出性紅斑
  • 神経症状:脳炎、横断性脊髄炎(血漿交換療法の有効性)、髄膜炎、Guillain-Barré症候群、ADEM
  • 心血管系:心筋炎(トロポニンIモニタリング)
  • 血液系:冷式自己免疫性溶血性貧血(リツキシマブの使用)、血球貪食症候群
  • 運動器:関節炎、筋炎
  • 消化器:肝炎、膵炎

遺伝的素因

  • MBL(Mannose-Binding Lectin)遺伝子多型と重症化
  • IL-18遺伝子プロモーター多型と肺外合併症

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