アスペルギルスの特徴
・アスペルギルスは環境中に幅広く存在する真菌である。
・約185の菌腫が含まれるが、ヒトにといて病原性を有するものの大半は、A. fumigatus, A. flavus, A. niger, A. nidulans
・ヒトにおけるアスペルギルス症の多くは、空気中に浮遊している分生子を吸入したものが生体内で発芽し、菌糸体として組織に侵入することによって発症する。
・一般的な免疫正常者ではアスペルギルスは排除され疾病を持たないが、宿主の状態によりアレルギー性、非侵襲性、侵襲性の疾患をきたす。
疾患について
・臨床的には侵襲性感染症が重要だが、組織浸潤を必ずしも伴わないアスペルギローマやアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)もある。
感染臓器
・原発巣として肺の感染頻度が最多。他に副鼻腔、まれに皮膚に直接感染する。
・肺病変から全身に播種して、中枢神経系、皮膚、眼、心臓、骨、腎臓、消化管など各種臓器に感染のリスクがある。
侵襲性疾患
侵襲性アスペルギルス症(IA: invasive aspergillosis)
・菌糸体が組織実質や血管に侵入した結果発症する。
・免疫不全者における疾患で、特に悪性腫瘍または化学療法に伴う重度および長期に渡る好中球減少、造血細胞移植、重症複合型免疫不全症や慢性肉芽腫症などの原発性免疫不全、高用量ステロイドの長期投与などでみられる。
侵襲性肺アスペルギルス症(IPA: invasive pulmonary aspergillosis)
・IPAはアスペルギルス症の中で最多の病型。
・経験的な広域スペクトラムの抗菌薬を開始しても持続する発熱・咳嗽・胸痛・喀血を呈する。
・免疫抑制療法のため、発熱や症状を伴わないことも少なくない。
・血管系への侵入により血栓形成や壊死に伴い、組織破壊や血行性播種をきたす。
画像検査
・IPADに典型的な画像所見には、以下のようなものがある。
・好中球回復期に顕在化することが多いため、複数回の検査が必要になる場合もある。
典型像
・肺CT上の複数の境界不明瞭な結節像。肺葉性もしくはびまん性の硬化像もまれではない。
Halo徴候
・血管侵襲に伴い出血性を伴う結節を虚血領域が囲む像。
・早期には結節を取り囲む縁状のすりガラス様陰影を認める
三日月徴候(air crescent)
・真菌塊の周囲で肺が壊死し、その結果形成される空洞病変(小児では少ない)
Target sign
・MRI上の所見。結節の中心部が低信号域で末梢側にリング状の増強効果を示す。
血液検査
血性ガラクトマンナン
・免疫不全患者や小児患者における検討では80%近い感度と報告されている。
・好中球減少を伴わない患者における感度が劣ることや偽陽性が報告されており、固形臓器移植患者や慢性肉芽腫患者では推奨されていない。
・血液血性PCR検査の感度は84%、特異度は76%と報告されている。
β-D-グルカン
・真菌の細胞壁成分であり、感度はガラクトマンナンよりも優れているとの報告もある。
・一方、アスペルギルス以外の真菌、その他グルカンが含まれているガーゼ、透析膜、一部の抗菌薬でも偽陽性になりうることから、他の所見と合わせて使用する。
治療
・抗真菌薬の長期投与が基本となる。
・第一選択としては、ボリコナゾールが基本。
1st: ボリコナゾール VRCZ (ブイフェンド)
2歳未満:9mg/kg/回、1日2回 点滴静注
2-11歳または12歳以上で体重50kg未満
初日のみ:9mg/kg/回 1日2回 点滴静注(最大350mg)
維持量(静注):8mg/kg/回、1日2回 点滴静注
維持量(経口):9mg/kg/回、1日2回、経口投与
12歳以上で体重50kg以上
初日のみ:6mg/kg/回、1日2回、点滴静注
維持(静注):4mg/kg/回、1日2回、点滴静注
維持(経口):200mg/回(最大1回300mg)、1日2回、食間経口投与
目標
治療効果目的のトラフ値: >1-1.5 μg/mL このトラフ値を維持する
安全域: 5μg/mL未満
2nd: アムホテリシンBリポソーム製剤 (アンビゾ‐ム)
5mg/kg/回、1日1回 点滴静注
3rd: エキノキャンディン系
・VRCZとエキノキャンディン系抗真菌薬の併用療法により、若干の予後改善報告があり考慮される。
ミカファンギン(ファンガード)
3-6 mg/kg/日(最大300mg) 1日1回 点滴静注
カスポファンギン(カンサイダス)
初回投与:70mg/㎡ 1日1回 点滴静注
維持:50 mg/㎡ 1日1回 点滴静注(最大70mg)
治療期間
・最低6-12週だが、感染部位、免疫抑制の程度、治療反応性によって延長を考慮。


コメント