【小児科医🍎blog】猫の噛み傷がきっかけで…。小児科医が警告する『パスツレラ菌』の深部感染と正しい対処法 | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医🍎blog】猫の噛み傷がきっかけで…。小児科医が警告する『パスツレラ菌』の深部感染と正しい対処法

感染症
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こんにちは!小児科医で、現在2歳の娘の子育てに奮闘中の小児科医りんご🍎です。

最近、うちの娘も動物への興味が爆発中で、道端で猫を見かけると「にゃんにゃん!」と目を輝かせて駆け寄ろうとします。動物とのふれあいは子どもの心の発達に素晴らしい影響を与えますが、親としてはヒヤッとする瞬間でもありますよね。

実は小児科の外来で、親御さんが「少し引っ掻かれた・噛まれただけなんですけど…」と連れてこられるケースで、ちょっと注意しなければならないケースがあります。

それは「猫による咬傷(噛み傷)」です。

今回は、一見小さな傷に見えても実は非常に恐ろしい、『パスツレラ菌による深部感染リスク』について、小児科医の視点から解説します。いざという時のために、ネコを飼っている方、近くに野良猫が多くいる方、ぜひ最後まで読んで保存しておいてくださいね!


1. ほぼ100%の猫が持っている「パスツレラ菌」

パスツレラ菌(Pasteurella multocida)は、犬や猫の口腔内や爪に常在している細菌です。

  • 猫(口腔内)の保有率:約100%(犬の口腔内は約75%、ネコの爪には約25%)
  • 感染経路: 噛まれる、引っ掻かれる、傷口を舐められる

ここで一番お伝えしたいのは、「健康で清潔な飼い猫であっても、室内飼いであっても、ほぼ確実にこの菌を持っている」ということです。

ちなみに、猫からうつる感染症として「猫ひっかき病(バルトネラ菌)」を聞いたことがある方もいるかもしれません。あちらは数日〜数週間後にリンパ節がゴリゴリに腫れるのが特徴ですが、今回の「パスツレラ菌」の恐ろしさは、全く別のところにあります。

2. なぜ「犬」より「猫」の噛み傷が危険なのか?

犬に噛まれた傷よりも、猫に噛まれた傷の方が感染症が重症化しやすいケースが多々あります。その理由の一つは「歯の形状」です。

犬の歯は太く、噛まれると傷口が大きく開くため、出血とともに細菌が外に洗い流されやすい傾向があります(もちろん犬の噛み傷も危険ですが、挫滅傷といって組織が潰れるケガになりやすいです)。

一方、猫の牙は「細く、鋭く、長い」のが特徴。 猫に深く噛まれると、牙がまるで注射針のように、皮膚の表面には小さな穴しか開かないのに、組織の奥深く(深部)に直接パスツレラ菌を注入してしまいます。

表面の傷口はすぐに塞がりますが、それは「皮膚の下の密室に細菌を閉じ込めた」ことを意味します。これが恐ろしい「深部感染」の引き金になります。

3. 数時間で悪化?恐怖のスピード進行

パスツレラ感染症のもう一つの恐怖は、発症までのスピードが異常に早いことです。

  • 潜伏期間:早ければ受傷後2〜3時間(遅くとも24時間以内には症状が出ます)
  • 初期症状: 傷口の周囲が急速に赤く腫れ上がり、激しい痛みと熱感を伴う。

菌が深部に到達している場合、たった半日で以下のような重篤な状態を引き起こすリスクがあります。

  • 蜂窩織炎(ほうかしきえん): 皮下脂肪の広い範囲に炎症が広がり、パンパンに腫れ上がる。
  • 化膿性関節炎・骨髄炎: 牙が関節や骨に達していた場合、骨や関節が細菌に破壊される。特に皮膚が薄い「手や指」を噛まれた場合は要注意です。
  • 敗血症: 小さな子どもは免疫力が未熟なため、菌が血液に乗って全身に回り、命に関わる事態になることもあります。

4. もし子どもが噛まれたら?

「ちょっと血が出ただけだから、絆創膏でいいか」は絶対にNGです。

以下の3つを徹底してください。

① とにかく大量の流水で洗う!

傷口の奥まで洗い流すイメージで、水道水で数分間しっかりと洗い流してください。消毒液を探す前に、まずは「物理的に菌を洗い流す」ことが最優先です。少し血を絞り出すように洗うのも効果的です。

② 密閉型の絆創膏は絶対に貼らない!

親御さんが一番やってしまいがちなのが、キズパワーパッドなどの「ハイドロコロイド素材(湿潤療法)」で傷口をピタッと塞いでしまうことです。 パスツレラ菌は酸素を嫌う性質があるため、密閉すると皮膚の下で大繁殖してしまいます。清潔なガーゼを当てる程度に留めてください。

③ すぐに医療機関を受診する!

「明日腫れてきたら病院に行こう」では遅いので、受傷したその日に、小児科、外科、整形外科、あるいは皮膚科を受診してください。

5. 治療

私たち医師は、動物による咬傷を見た瞬間、深部感染と破傷風(はしょうふう)のリスクを評価します。必要に応じて破傷風トキソイド(ワクチン)の追加接種を行うこともあります。

治療の要は、早期の抗菌薬(抗生物質)投与です。 パスツレラ菌には、セフェム系・ペニシリン系などの抗菌薬を使用します。第一選択としてはアモキシシリン・クラブラン酸(AMPC/CVA)が用いられることがありますが、小児ではワイドシリン(AMPC)を使用するケースもあります。

また、関連する疾病として、動物咬傷では「破傷風」についても注意が必要です。

以前破傷風についてもまとめたブログ記事がありますので、紹介します👇️

6. 動物との「対等な関係」を子どもに教えるチャンス

ここまで怖い話をしてしまいましたが、動物との触れ合いを遠ざける必要はありません。大切なのは、安全に関わるための「ルール」を親子で共有することです。

「危ないから触っちゃダメ!」と上から押さえつけるのではなく、

「猫さんにも『今は触られたくないな』って気持ちの時もあるんだよ。」

と伝えてみませんか?

動物が食事をしている時、寝ている時、しっぽをバタバタさせて怒っている時はそっとしておく。これは、「相手の境界線を尊重する」という、人間関係にも通じる大切な学びになります。

動物も自分と同じように感情を持つ存在として扱う姿勢を、親から子へ伝えていきたいですね。

まとめ

  • 猫の噛み傷は「注射針のような鋭さ」。深部感染のリスク大!
  • 傷口は密閉せず(キズパワーパッドNG)、流水で念入りに洗う!
  • 症状がなくても、その日のうちに必ず医療機関へ!

正しい知識をお守りにして、お子さんと一緒に素敵な動物とのふれあいを楽しんでくださいね。


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🍎小児科医りんご🍏

1児の父・小児科専門医。地方の若手医師として、日々勉強中。

小児医療・育児関連ブログ「ゆるっと小児科医ブログ」では、より詳しい医療情報や、小児科医として勉強したことのまとめをしています👇️

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