いつも御覧いただきありがとうございます。今回は、小児の破傷風対策についてブログにまとめます。
近所の野良猫に子どもが喜び、近づいていくのは、大変ほほえましいのですが、もし噛まれたらどうするのか??ということはしっかり理解しておく必要がありますよね。
小児が猫に噛まれた場合、猫の口腔内細菌(特に Pasteurella multocida)による感染リスクが非常に高いため、「創部の徹底洗浄」「抗菌薬の予防投与」「破傷風の予防」の3点が治療の柱となります。
以下に、専門的なガイドライン(日本外傷学会、感染症学会等の標準治療)に基づいた対応をまとめます。
破傷風の予防(Tetanus Prophylaxis)
・猫による咬傷は、深部への穿刺創となりやすく、嫌気性菌が繁殖しやすいため、原則として「汚染創(Dirty wound)」として扱います。
・患児の母子手帳を確認し、DPT-IPV(四種混合)などのワクチン接種歴に基づいて判断します。
| 過去の破傷風トキソイド接種歴 | 最終接種からの期間 | 処置方針 |
| 3回以上ある (定期接種完了児) | 5年以内 | 接種不要 |
| 5年以上経過 | 破傷風トキソイド を1回接種 (ブースター効果を期待) | |
| 3回未満 または 不明 | ― | 破傷風トキソイド + 抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG) の両方を投与 |
- 定期接種の目安: 日本の標準スケジュールでは、1歳半までに4回(DPT-IPV)接種し、次は11〜12歳(DT)です。
- 未就学児〜小学校低学年: 通常は最終接種から5年以内のため、追加接種は不要なケースが多いです。
- 小学校高学年(DT接種前): 最終接種(1歳半頃)から5年以上経過している場合があるため、トキソイド追加接種(0.5mL 皮下注または筋注)が推奨されます。
子どもは最も動物咬傷を受けやすく、感染が起きやすいのは手部です。
・穿通性の創の方が感染を起こしやすく、ネコ>ヒト>イヌの順で穿通性が高く感染を起こしやすいです(実は保育現場などでは、ヒト咬傷もあります。噛みつかれることもあるんですね….)
・また、子どもは爪を噛むクセや指しゃぶりの中で、あやまって噛んでしまい傷が付き、爪周囲炎を起こす場合もあります。
感染予防・抗菌薬の投与
・通常、皮膚軟部組織感染症では、S.aureusやGASが原因となりますが、咬傷の場合は原因菌が変わってくるのが特徴です。
・猫咬傷は受傷後数時間〜24時間以内に急速に感染徴候(発赤、腫脹、疼痛)が現れるのが特徴です。特にパスツレラ菌(Pasteurella multocida)は通常のセフェム系抗生剤が無効な場合が多いため、薬剤選択が重要です。
- 推奨度: 深い咬傷(穿刺創)であれば、感染徴候がなくても予防的抗菌薬投与が強く推奨されます(期間は通常3〜5日)。
- 第一選択薬:アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン®等)
- パスツレラ菌、嫌気性菌、黄色ブドウ球菌をカバーするため。
- 用量: (AMPCとして) 90 mg/kg/day, 分2, 10日間
- 腱滑膜炎合併例2~3週間、骨髄炎合併例4~6週間
- 注: 第1, 2世代セフェム系(ケフラール等)はパスツレラに効きにくいため推奨されません
- ペニシリンアレルギーがある場合:
- クリンダマイシン + ST合剤(または第3世代セフェム)などの併用を検討します。
- ST合剤(TMPとして) 10 mg/kg/day 分2 +CLDM 30 mg/kg/day 分2
創部の局所処置
- 洗浄: 大量の水道水または生理食塩水で、高圧洗浄(シリンジ等を使用)を行い、菌を物理的に洗い流します。創部培養は発症すぐ(8時間以内)、また受傷後24時間経過しても感染兆候がなければ採る必要はありません。
- 切開排膿:明らかな皮下膿瘍を呈していれば、切開排膿します。培養提出を忘れずに(嫌気性培養含めて)。
- デブリードマン: 壊死組織があれば除去します。
- 縫合:
- 猫の牙による「穿刺創」は、深部に菌を封じ込めるリスクがあるため、原則として一次縫合は行わず、開放創(Delayed Primary Closure)とします。
- 顔面など整容的に問題となる部位で縫合が必要な場合は、形成外科医による十分な洗浄・デブリードマン後の処置が望まれます。
動物別の原因菌
ネコ:Pasteurella multocida (75%)
イヌ:Pasteurella canis (50%), Capnocytophagacanimorsus
ヒト:Streptococcus anginosus, Eikenella corrodens, 50%に嫌気性菌 (Prevotella spp. Prophyromonas spp. )が関与し、大半はβ-ラクタマーゼ産生菌です。
その他の注意点(狂犬病・猫ひっかき病)
- 狂犬病: 日本国内での受傷であれば、現在リスクはほぼないと考えられていますが、海外での受傷や輸入動物の場合は暴露後接種が必要です。
- 猫ひっかき病(Bartonella henselae): 受傷から数週間後にリンパ節腫脹が出現することがあります。この時点では予防策はないため、後日リンパ節が腫れたら受診するよう保護者に伝えます。
まとめ:医師への確認事項
受診の際は、以下の情報を医師に伝えるとスムーズです。
- 母子手帳の「予防接種の記録」(破傷風ワクチンの回数と時期)
- アレルギーの有無(特にペニシリン系)
- 受傷からの経過時間
何かこの記事が御役にたてば、幸いです。


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