こんにちは。『小児科医りんご』です。
子どもの急な発熱。 「保育園で風邪が流行っているし、また風邪かな?」と思いますよね。 しかし、もしお子さんに「咳や鼻水などの風邪症状がないのに、熱だけが高い」という特徴がある場合、私たち小児科医が真っ先に疑い、除外しなければならない病気があります。
それが『尿路感染症(UTI)』です。
あまり馴染みがないかもしれませんが、見逃してはいけない小児科の重要疾患の一つです。 今回は、なぜこの病気が怖いのか、なぜあの痛そうな検査が必要なのか、専門医の視点で詳しく解説します。
また、今回は非医療従事者向けの、尿路感染症についての解説となります。UTIの治療や検査の詳細については、過去ブログ記事を参照下さい👇️
総論:尿路感染症とは?なぜ「早期発見」が必要?
・UTIとは、おしっこの通り道(尿道・膀胱・尿管・腎臓)に細菌が入り込んで炎症を起こす病気です。 大人の膀胱炎(排尿痛や残尿感)とは異なり、小さな子ども(特に乳幼児)では、細菌が腎臓まで達する「腎盂腎炎(じんうじんえん)」になりやすいのが特徴です。
なぜ、早期発見・治療が必要なのか?
・それは、腎盂腎炎を繰り返したり治療が遅れたりすると、腎臓に「瘢痕(はんこん=消えない傷跡)」が残ってしまうことがあるからです。
・腎臓の傷が増えると、将来大人になった時に腎機能が悪くなったり、高血圧の原因になったりするリスクがあります。 『将来の腎臓を守る』ため、私たちはこの病気について、いつも注意を払って診察しています。
症状:こんな時は要注意!年齢別のサイン
言葉で訴えられない乳幼児の場合、症状は非常に分かりにくいです。
- 0歳~2歳くらい(乳幼児)
- 「発熱のみ」が最も多い症状です(ここが最大のポイント)
- なんとなく機嫌が悪い、おっぱいの飲みが悪い
- おしっこの臭いがいつもよりきつい、色が濃い
- 3歳以上(幼児~学童)
- おしっこをする時に痛がる、回数が増える(頻尿)
- 腰や背中を叩くと痛がる
- おねしょ(夜尿)が急に増えた
「風邪症状がない発熱=尿検査」というのは、小児科診療の鉄則です。
検査:親御さんにお願いしたいこと
・尿路感染症の診断には、尿の中に白血球や細菌がいるかを確認する尿検査が必須です。
・ここで、親御さんにお願いがあります。 オムツのお子さんの場合、おしっこを溜めるパックを貼る方法もありますが、私たちは可能な限り『カテーテル(細い管)を用いた採尿』を推奨しています。
・「痛そうでかわいそう」と思われるお気持ち、痛いほどよく分かります。 しかし、パックでの採尿は皮膚の常在菌が混ざりやすく、「本当は病気じゃないのに陽性に出てしまう(偽陽性)」ことがよくあります。 その結果、「必要のない入院や、抗生物質の点滴治療」をお子さんに強いることになりかねません。
・確実な診断で、最短・最適な治療を行うための一瞬の処置ですので、どうかご理解とご協力をお願いいたします。
治療:UTIの治療と、その後の原因検索
・UTIの治療の基本は抗菌薬(抗生物質)です。 月齢が低い場合や、水分が摂れないほどぐったりしている場合は、入院して点滴治療を行います。適切に治療すれば、数日で熱は下がり元気になります。
・しかし、「熱が下がったから治療終了」ではありません。
・尿路感染症になったお子さんの一部(30〜50%程度)に、「膀胱尿管逆流(VUR)」という、尿が膀胱から腎臓へ逆流してしまう「生まれつきの形の問題」が隠れていることがあります。 そのため、治療後には超音波検査(エコー)などを行い、「なぜ尿路感染症になったのか?」という原因検索を行うことが推奨されています。
逆流の検査の基本は、排尿時膀胱尿道造影 (VCUG) という検査です。詳細は過去ブログ記事をご覧下さい👇️
うまれつきの異常の一つ、『水腎症』についてはこちらを👇️
予防:家庭でできる3つのこと
- 水分摂取: おしっこを我慢せず、たくさん出して菌を洗い流すことが一番の予防です。
- 便秘の解消: 実はこれが一番重要です。直腸に便が溜まると膀胱を圧迫し、おしっこの流れを悪くします。「便秘の治療=尿路感染症の予防」と言っても過言ではありません。
- 正しい拭き方: 女の子の場合、前から後ろへ拭く習慣をつけましょう。
まとめ
尿路感染症は、決して珍しい病気ではありません。 「ただの熱」だと思って様子を見ていたら、実は腎臓がダメージを受けていた……ということにならないよう、咳も鼻水もない高熱の時は、ぜひ早めに小児科を受診し、尿検査について相談してください。
大切なお子さんの腎臓を、一緒に守っていきましょう。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。






コメント