【小児科医Blog:感染症】麻疹(measles)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医Blog:感染症】麻疹(measles)について

感染症

こんにちは。小児科医のりんご🍎です。

最近、ニュースでも耳にすることが増えた「麻疹(ましん)」。別名「はしか」とも呼ばれますが、実はこの病気、小児科医の間では「最も警戒すべき感染症の一つ」とされています。

「ただの熱が出る病気でしょ?」と思われがちですが、その感染力と合併症の重さは、インフルエンザの比ではありません。今回は、大切なお子様を守るために知っておきたい知識を分かりやすくまとめました。

総論

・麻疹(日本では通称「はしか」と呼ばれることが多い)は、麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症です。

・麻疹の最大の特徴は、その圧倒的な感染力です。

  • 感染経路: 空気感染、飛沫感染、接触感染。
  • 感染力: 1人の患者から、免疫のない12〜18人にうつすとされています(インフルエンザは1〜2人程度)。

マスクや手洗いだけでは防げません。同じ空間(電車や教室など)にいるだけで、免疫がなければほぼ確実に感染すると言っても過言ではないのです。

・麻疹ウイルスは、パラミクソウイルス科モルビリウイルス属に属するマイナス鎖の1本鎖RNAウイルスです。

・この病気は感染力が非常に強く、空気感染、飛沫感染、接触感染で感染します。免疫を持たない人が感染するとほぼ100%発症するとされています。

・一度感染すると終生免疫を獲得しますが、感染時の症状や合併症は重篤になることがあります。

症状:初期から発疹まで

潜伏期

・感染してから発症するまで、約10日間(7〜14日間)の潜伏期間があります。その後、大きく分けて3つのステージで症状が進みます。

カタル期(2〜4日間)

・37-38℃台の発熱、咳嗽、鼻汁、結膜充血、眼脂など風邪のような症状が数日間みられる。この時期が最も感染力が強い。

・カタル期の終わりに、いったん1℃程度体温が下降し、その頃口腔内に麻疹に特徴的な粘膜疹であるコプリック斑が出現します。

コプリック斑

• 形状: 白色または青白色の砂粒のような点状で、中心部が白く、周囲に赤い暈(ぼんやりした赤み)を伴うことが多い。
• サイズ: 約1mm程度の小さな隆起した斑点。
• 場所: 主に口腔粘膜、特に頬の内側(上の第1および第2大臼歯付近)に現れる


発疹期(3〜5日間)

・高熱(39℃以上)とともに特徴的な発疹が出現。

・カタル症状はいっそう激しくなり、下痢、肺炎、中耳炎、クループなどを合併します。

・発疹はときに落屑を伴い色素沈着を残す。

回復期

・熱が下がり、発疹が黒ずんだ跡(色素沈着)を残して治っていきます。

合併症について(麻疹が恐れられる理由)

麻疹そのものよりも、その後に続く合併症が命に関わることがあります。感染者の約30%が何らかの合併症を併発します。


・肺炎や中耳炎などの合併症が頻繁に見られます。

・まれに脳炎や亜急性硬化性全脳炎(SSPE)といった重篤な中枢神経疾患を引き起こすこともあります。

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)

・麻疹治癒後、数年〜10年ほど経ってから発症します。

・学業成績の低下、歩行異常、脱力発作などで発症し、認知機能、運動機能が進行性に悪化し、周期的な不随意運動、自律神経の異常、筋肉の緊張、意識消失、自発運動の消失など、発症後1~3年以内に生命に関わる脳炎で極めて予後不良な疾患です。

・麻疹ウイルスの脳内持続感染が原因とされます。

・従来、数万人に一人の頻度での発症とされていましたが、5歳未満で罹患すると1,367人に1人、12か月未満で罹患すると609人に1人と高頻度で発症することがわかっています。

・免疫抑制状態で麻疹に罹患した場合、発症率が高いです。

診断

・診断において、最近1か月の海外渡航歴と1歳以上で2回の麻疹含有ワクチン接種の記録を確認することは重要です。

・麻疹に特徴的な臨床症状があれば、検査診断に進む必要があります。

臨床診断後の検査

・臨床所見より麻疹を疑う場合、まずは以下の3点セットを検査します。

 →発疹出現7日以内の血液(EDTA血)、咽頭拭い液、尿を採取し、PCR法による麻疹ウイルス検出。保健所を通して地方衛生研究所に提出します。

・発疹出現4~28日の麻疹特異的IgM抗体検査の実施

 →発疹出現3日以内はIgM陽性となっていないことがあり、注意。

 →MRワクチン接種から8〜56日の場合、麻疹特異的IgM抗体陽性となることあり。検出された麻疹ウイルスの遺伝子型がAであった場合、ワクチン株であることから、保健所への麻疹の届け出は取り下げる。

・急性期と回復期の麻疹特異的IgG抗体検査の実施

予防法:ワクチン接種の重要性


・麻疹を予防する最も効果的な方法はワクチン接種です。麻疹に特効薬はありません。かかってしまったら、本人の免疫力で治るのを待つ「対症療法」のみです。だからこそ、ワクチンによる予防がすべてです。

・日本では以下の定期接種が推奨されています。

  第1期:1歳児
  第2期:小学校入学前1年間の幼児


・ワクチン接種によって95%以上の人が免疫を獲得できるとされています。また、2回接種することで効果がさらに高まります。

修飾麻疹

・ワクチンの1回接種のみでは、10台後半になると2~3割程度が麻疹感受性となる。このような状態で麻疹に感染すると、通常の麻疹に比べて軽症の修飾麻疹となる。

・発疹や発熱は軽度で、Koplik斑も見られないことがある。しかし、血液の麻疹IgG抗体価を測定すると、発症時に著しい高値を示す。麻疹IgM抗体は陽性のことも陰性のこともある。

治療法

・麻疹には特効薬がなく、治療は対症療法のみとなります。よって、感染予防が最も重要となります。

・発熱や咳などの症状を緩和するためには適切な医療管理が必要です。

・二次的な細菌感染が認められた場合は抗菌薬の投与を行いますが、それ以外の場合は抗菌薬投与は推奨されていません。

・重篤な合併症が疑われる場合は速やかに専門医へ相談してください。

+α:ビタミンA療法

・海外では、麻疹発症後の治療としてビタミンAが用いられる場合があります。

・特に途上国で麻疹のために入院した小児の致命率と合併症のリスクを低下させるために、高用量ビタミンA投与が実施されます。

・小児の麻疹は血清レチノール値が低く、より重症の小児で値が低くなります。

・米国小児学会では、入院を必要とする重症麻疹のすべての小児に、以下の年齢別用量でのビタミンA投与を推奨しています。

 生後6か月未満:50,000 IU

 生後6~11か月の乳児:100,000 IU

 12か月以上の小児:200,000 IU

世界的な流行状況と国内への影響

・COVID-19対策緩和後、世界的に麻疹患者数が増加しています。海外渡航者や訪日外国人による国内流行リスクも高まっているため、日本国内でも警戒が必要です。


まとめ


・麻疹は予防可能でありながら重篤な合併症を引き起こす危険性があります

・「うちの子は元気だから大丈夫」と思わず、母子手帳を今一度確認してください。もし2回目の接種を忘れていたら、すぐに小児科を予約しましょう。

・また、周囲で流行している時に「熱と目が赤い」といった症状が出た場合は、受診前に必ず電話で病院に伝えてください。 他の患者さんへの二次感染を防ぐため、隔離室での診察が必要になるからです。

正しい知識を持って、子どもたちの健やかな未来を守っていきましょう!

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