【小児科医blog:感染症】尿路感染症の治療について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:感染症】尿路感染症の治療について

感染症

尿路感染症(UTI: urinary tract infection)

Intro

・乳幼児では非特異的な症状を呈することがあり、他に熱源のない発熱患者では常に尿路感染症の可能性を考える必要がある。

・治療は大腸菌をはじめとする腸内細菌科をターゲットとするが、グラム染色と施設のアンチバイオグラムを参考に抗菌薬を選択する。

・培養結果をもとに適切にde-escalationと内服薬へのスイッチを行う。

原因菌

・大腸菌(GNR)が80%、それに続き腸球菌(GPC)が原因。この原因菌に対する薬物治療が尿路感染症治療の基本となる。

リスク因子

1. 解剖学的・生理学的要因

  • 膀胱尿管逆流(VUR): 尿が膀胱から尿管に逆流する異常で、感染リスクが高まります。特に乳幼児では発症率が高いです。Ⅱ度以下のVURでは予防内服をしないで経過をみることもあります。
  • 包茎: 男児では包茎による外尿道口の汚染がリスクとなります。
  • 性別: 乳児では男児、幼児〜学童では女児に多い。
  • 未成熟な排尿機能: 特に乳幼児では膀胱の排尿機能が未熟であり、感染を引き起こしやすいです。

2. 排泄関連の問題

  • 便秘: 腸内圧の増加により膀胱機能が影響を受け、感染リスクが高まります。
  • 排尿回数の減少(排尿遅延): 長時間尿を溜めることで細菌が繁殖しやすくなります。

3. 環境・生活習慣

  • 不十分な水分摂取: 水分不足は尿量を減少させ、細菌の洗い流し効果を低下させます。
  • 低い社会経済的地位: 衛生環境や医療アクセスの制限が関連します。

4. 基礎疾患・免疫関連

  • 先天性腎尿路異常(CAKUT): 尿路構造異常はUTIの主要なリスク要因です。逆流性腎症から腎不全に至る最も大きな要因です。
  • 免疫力低下: 糖尿病や免疫抑制治療を受けている場合、感染リスクが増加します。

5. 家族歴

  • 家族にUTIの既往歴がある場合、子どもにもリスクが高まる可能性があります

診断

・尿検査で膿尿、尿培養で細菌尿を検出することで診断される。

・診断基準にはAAP(米国小児科学会)のものが引用されることが多い

膿尿の定義

下記のいずれか

・尿定性で白血球エラスターゼ陽性

・非遠心尿≧10/HPF

・遠心尿≧5/HPF

細菌尿の定義

下記のいずれか

・カテーテル尿≧5×10^4cfu/mL

・カテーテル尿≧1×10^4cfu/mL(膿尿と発熱を伴う場合)

治療

①初期治療

・原因の多数を占める大腸菌をカバーできる抗菌薬を選択する。

 →CTX(第3世代セフェム)が有用。より狭域のセファゾリン(第1セフェム)、セフォチアム(第2セフェム)を用いることも。

 CTX100-200mg/kg/day(一般的には90-120mg/kg/day、分3)

    ※CEZでも同量でOK

腸球菌を疑う場合

・グラム染色でグラム陽性球菌(GPC)を認めた場合、腸球菌を原因として疑う

・セフェム系に耐性を持つため、腸球菌の中でも頻度の高いEnterococcus faecalisをターゲットにアンピシリンを選択または併用する。

・ただし、E. faeciumの場合の場合アンピシリンに自然耐性を持つことがあるためバンコマイシンを使用する。

重症の場合

・尿路感染症の約4-8%は菌血症を伴い、敗血症を伴いバイタルが不安定になることもある。

・通常の抗菌薬ではカバーされないESBL産生腸内細菌・AmPC過剰産生腸内細菌などの耐性菌やE. faeciumまで想定した広域なスペクトラムをもつ抗菌薬も考慮する。

・新生児期:ABPC(150mg/kg/day, 3×)+GM(4mg/kg/day, 1×)

②最適治療選択

・ESBL産生腸内細菌、AmPC過剰産生腸内細菌などの耐性菌やE. faeciumまで想定した広域なスペクトラムをもつ抗菌薬この場合にはメロペネムが有効。

・しかし、尿路感染症の場合、多くの腎排泄の抗菌薬は血中濃度に比べて尿中濃度が高くなっているため、菌血症に至っていなければそのほかの抗菌薬に!

ESBL産生菌:セフメタゾール、アミノグリコシド(ゲンタマイシン)

 CMZ:100mg/kg/day1 分3

AmpC過剰産生菌:第4世代セフェム(セフェピム)やアミノグリコシド

   セフェピム:100mg/kg/day 分2

③経口治療への切り替え

・感受性よければ、アモキシシリン、セファレキシン、セファクロル、ST合剤

・一方、経口第3世代セフェムは腸管吸収率が低いので注意が必要。

④治療期間

・7-14日間。なお、AFBNでは計21日間。

CCL経口1回10mg/kg、1日3回(=30mg/kg/day)

・AMPC15-20mg/kg、1日3回

・ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム:SMX/TMP) 1回40-60mg/kg  1日2回(生後2ヶ月未満は禁忌)

※TMP(バクタ・ダイフェン)として2mg/kg/日(分1) 必要バクタ配合顆粒1gにはTMP80mg含有

画像検査

・初発の尿路感染症の場合は超音波検査(US)が推奨される。

・VURは尿路感染症を発症した児の20-40%に認められる。

VCUGの適応

・USで尿管拡張あり、

・解剖学的異常を疑う場合

・大腸菌以外の病原体による感染

・VURの家族歴

・再発例

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