【小児科医blog:感染症】急性副鼻腔炎・慢性副鼻腔炎について:2025年版 診断と治療 | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:感染症】急性副鼻腔炎・慢性副鼻腔炎について:2025年版 診断と治療

感染症
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急性副鼻腔炎 (ABRS): 診断と鑑別

・抗菌薬の適正使用は、正確な診断から始まります。ここでは、無害なウイルス性上気道炎(URI)から、治療対象となる細菌性ABRSをいかに臨床的に鑑別するかに焦点を当てます。

基礎知識:解剖学的特異性

・小児の副鼻腔炎を考える上で、成人と最も異なる点は「副鼻腔がまだ発達途上である」という事実です。

  • 出生時に存在する副鼻腔:出生時に存在するのは、篩骨洞(Ethmoid sinus)と上顎洞(Maxillary sinus)のみです。そして、副鼻腔炎を引き起こすのに十分な副鼻腔形成は、18~24ヶ月で形成される。
  • 遅れて発達する副鼻腔:前頭洞(Frontal sinus)は5〜6歳頃から、蝶形骨洞(Sphenoid sinus)は5歳頃から含気化(骨の中に空洞ができること)が始まり、成人サイズに達するのは10代後半から20代にかけてです。

ウイルス性URI vs 細菌性ABRSの鑑別

・ABRSの診断は、画像や検査所見ではなく、あくまで「臨床的」。この分野におけるゴールドスタンダードは、2013年に改訂された米国小児科学会(AAP)のガイドラインが示す「3つの臨床基準」です。

Acute bacterial sinusitis in children: an updated review (Drugs Context
. 2020 Nov 23;9:2020-9-3. doi: 10.7573/dic.2020-9-3)

Acute bacterial sinusitis in children: an updated review - PMC
In the pediatric age group, approximately 7.5% of upper respiratory tract infections (URIs) are complicated by acute bac...

ABRSは、急性上気道炎(URI)の経過中に、以下の3つのパターンのいずれかを満たした場合に診断されます。

  1. 「持続する症状 (Persistent illness)」
    • 鼻汁(性状は問わない)、または日中の咳が、10日間以上改善せずに持続する。
  2. 「重症な発症 (Severe onset)」
    • 39℃以上の発熱膿性鼻汁が、少なくとも3日間連続して続く。
  3. 「二峰性・悪化する経過 (Worsening course / Double sickening)」
    • URIの経過で一度改善し始めた(または軽快していた)後に、鼻汁、日中の咳、または発熱が再び悪化・再燃する。

・上気道炎の症状が2~3週持続することはよくあるが、ほとんどは10日目くらいで改善傾向になる。よって、「まったく」改善傾向がなく10日持続するかどうかは重要な鑑別ポイントである。

診断の”ワナ”:膿性鼻汁(色のついた鼻水)の誤解

・副鼻腔炎のよくある誤解として、「膿性鼻汁=細菌感染=抗菌薬が必要」という迷信があります。

・ウイルス性URI(いわゆる風邪)であっても、発症から3〜6日目が症状のピークであり、この時期には白血球(好中球)の浸潤により、鼻汁は粘稠になり、黄色や緑色を呈するのが一般的です 。実際に、「膿性鼻汁や症状の持続期間だけでは、細菌性とウイルス性を明確に区別できない」という指摘もあります。

Acute bacterial sinusitis in children: an updated review (Drugs Context
. 2020 Nov 23;9:2020-9-3. doi: 10.7573/dic.2020-9-3)

Acute bacterial sinusitis in children: an updated review - PMC
In the pediatric age group, approximately 7.5% of upper respiratory tract infections (URIs) are complicated by acute bac...

ABRSの診断で重要なのは「鼻汁の」ではなく、「症状のパターンと時間経過」です。

・上記の「重症な発症」基準 が「膿性鼻汁」に言及しているのは、それが「かつ 39℃以上の高熱が3日続く」という組み合わせにおいて、細菌感染の強力な指標となるためであり、膿性鼻汁単独で判断してはなりません。

Clinical Practice Guideline for the Diagnosis and Management of Acute Bacterial Sinusitis in Children Aged 1 to 18 Years (Pediatrics (2013) 132 (1): e262–e280.)

Just a moment...

この鑑別点を、以下の表にまとめます。

【ウイルス性URI(風邪) vs 急性細菌性副鼻腔炎(ABRS)の鑑別】

観点一般的なウイルス性URI(風邪)急性細菌性副鼻腔炎(ABRS)の診断基準
発熱無熱、または微熱。あっても通常48時間以内に解熱。重症な発症: 39℃以上の高熱が3日以上持続。
鼻汁初期は水様性。3〜6日目に粘稠性・膿性になることがある。重症な発症: 膿性鼻汁(高熱とセット)。 持続する症状: 10日以上続く(性状は問わない)。
経過3〜6日目をピークに、7〜10日で自然に改善傾向。持続する症状: 10日以上、改善しない。 悪化する経過: 5〜7日目頃に一旦軽快後、再悪化。
全身状態比較的良好。重症な発症の場合は、ぐったりしていることが多い。
臨床判断待機的・対症療法。いずれかの基準を満たせばABRSと診断し、治療(抗菌薬または観察)を検討。

画像検査は必要か?:CT・レントゲンの適応

ABRSの診断における基本原則は「画像検査は不要」です。

  • 原則:不要合併症のない単純性ABRSの診断において、CTや単純レントゲン撮影は推奨されません。
  • その理由:特異度が低すぎるため画像検査は、ABRSとウイルス性URIを鑑別する役には立ちません。なぜなら、症状のない健康な小児や、ウイルス性URIの小児であっても、CTを撮影すれば約90%に副鼻腔の粘膜肥厚や気液面(air-fluid levels)が認められるという報告もあるためです。

Acute bacterial sinusitis in children: an updated review (Drugs Context
. 2020 Nov 23;9:2020-9-3. doi: 10.7573/dic.2020-9-3)

Acute bacterial sinusitis in children: an updated review - PMC
In the pediatric age group, approximately 7.5% of upper respiratory tract infections (URIs) are complicated by acute bac...
  • 例外:画像検査が強く推奨される場合画像検査が必要となるのは、主に以下の2つの状況です。
    1. 合併症の疑い(red-frag):これが最も重要な適応です。眼窩内または頭蓋内合併症(詳細は第4部で後述)が疑われる場合、造影CTが必須となります。
    2. 難治性・反復性・慢性(CRS)の評価:適切な治療に反応しない場合、あるいは慢性副鼻腔炎(CRS)が疑われる場合に、鼻中隔弯曲症、鼻茸(ポリープ)、解剖学的異常の評価 、または手術計画のためにCTが考慮されます。

Chronic Sinusitis

Chronic Sinusitis - StatPearls - NCBI Bookshelf
Sinusitis is inflammation of the sinus or nasal passage. Chronic sinusitis is chronic inflammation of the sinus or nasal...

急性細菌性副鼻腔炎(ABRS):治療戦略

・AAPの3つの基準に基づきABRSと診断した後、次のステップは治療です。ここでは抗菌薬の「適応」「選択」「用量」について、〜2025年の最新のエビデンスに基づき整理します。

抗菌薬の適応:待機的観察(Watchful Waiting)という選択肢

・AAP 2013ガイドラインが示した重要な点は、「ABRS=即時抗菌薬治療」ではない、ということです。ガイドラインは、ABRSと診断した後の選択肢として「即時抗菌薬治療」と「追加の3日間の待機的観察」の2つを提示しました。

この使い分けは、診断基準(重症度)と連動します。

  • 即時抗菌薬治療が推奨される群:
    1. 「重症な発症」(39℃以上の発熱+膿性鼻汁が3日以上)「悪化する経過」(二峰性)
    • これらは細菌感染が強く示唆され、かつ重症化のリスクがあるため、速やかな介入が求められます。
  • 待機的観察(3日間)も選択肢となる:
    1. 「持続する症状」(10日以上続く) だが、症状が軽度(mild)で、全身状態が良好な場合。
    • この群は診断基準は満たすものの、自然軽快する可能性も残されています。

この「待機的観察」は、抗菌薬適正使用(AMS)の観点から非常に重要です。ここで3日間待機し、改善傾向が見られれば不要な抗菌薬投与を回避できます。逆に、3日間の観察中に症状が悪化すれば、それは「悪化する経過」に移行したことを意味し、その時点で抗菌薬を開始する明確な理由となります。このアプローチは、保護者との信頼関係と、3日後に確実にフォローアップできる体制が前提となります。

第一選択薬:アモキシシリン vs AMPC/CVAの使い分け

・ABRSと診断し、抗菌薬治療を決定した場合、次に悩むのが「薬剤選択」です。

  • 主要起因菌(ターゲット):標的とすべきは、Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)、Haemophilus influenzae(インフルエンザ桿菌、非定型)、Moraxella catarrhalis の3大起因菌です。

Pediatric Rhinosinusitis (Curr Treat Options Allergy. Author manuscript; available in PMC: 2017 Sep 1.Published in final edited form as: Curr Treat Options Allergy. 2016 Jul 11;3(3):268–281. doi: 10.1007/s40521-016-0096-y)

Pediatric Rhinosinusitis - PMC
Rhinosinusitis, is defined as an inflammation of the paranasal and nasal sinus mucosae. Chronic rhinosinusitis (CRS)is a...
  • 薬剤耐性の現状:H. influenzae と M. catarrhalis の多くはβラクタマーゼを産生し、アモキシシリン(AMPC)に耐性です。また、S. pneumoniae の一部はペニシリン結合タンパク(PBP)の変異により、AMPC耐性(PISP, PRSP)を示します。
  • ガイドラインの推奨:この耐性菌の状況(特にβラクタマーゼ産生菌の増加)を背景に、米国のIDSAガイドラインや2020年のレビューでは、アモキシシリン/クラブラン酸(AMPC/CVA)を第一選択として広く推奨しています。

Treatment of sinusitis in children: an Italian intersociety consensus (SIPPS-SIP-SITIP-FIMP-SIAIP-SIMRI-SIM-FIMMG) (Ital J Pediatr. 2025 Mar 26;51:102. doi: 10.1186/s13052-025-01868-1)

Treatment of sinusitis in children: an Italian intersociety consensus (SIPPS-SIP-SITIP-FIMP-SIAIP-SIMRI-SIM-FIMMG) - PMC
Sinusitis is an inflammation of the mucous membrane of the paranasal sinuses. Bacterial sinusitis usually occurs as a co...

AMPC

アモキシシリン(サワシリン、パセトシン) 

 用量:90mg/kg/日、分2、5~7日間

CVA/AMPC

クラブラン酸カリウム・アモキシシリン(クラバモックス、オーグメンチン)

 用量:90mg/kg/日、分2、10~14日間

・治療失敗の原因として、耐性菌以外にも、副鼻腔口の閉塞や非感染性疾患によるものを評価することも重要。

2025年最新コンセンサスの提案

ここで、新しい知見をご紹介します。2025年に発表されたイタリアのコンセンサス は、AMPC/CVAを画一的に使用するのではなく、AAPの診断基準(重症度)と連動させた薬剤選択を提案しています。

Treatment of sinusitis in children: an Italian intersociety consensus (SIPPS-SIP-SITIP-FIMP-SIAIP-SIMRI-SIM-FIMMG) (Ital J Pediatr. 2025 Mar 26;51:102. doi: 10.1186/s13052-025-01868-1)

Treatment of sinusitis in children: an Italian intersociety consensus (SIPPS-SIP-SITIP-FIMP-SIAIP-SIMRI-SIM-FIMMG) - PMC
Sinusitis is an inflammation of the mucous membrane of the paranasal sinuses. Bacterial sinusitis usually occurs as a co...
  • 推奨 :
    • 「持続する症状」(軽症)群:アモキシシリン(AMPC)単剤(高用量 90mg/kg/day)を推奨。
    • 「悪化する経過」または「重症な発症」群:アモキシシリン/クラブラン酸(AMPC/CVA)(高用量 90mg/kg/day)を推奨。

  1. 軽症の「持続」群では、起因菌として最も警戒すべきは侵襲性の高い S. pneumoniae です。S. pneumoniae にはβラクタマーゼ産生はないため、クラブラン酸(CVA)は不要です。むしろAMPCを「高用量」にすることでPBP変異(耐性)を克服する方が合理的です。
  2. 一方、「重症」または「悪化」群では、H. influenzae などのβラクタマーゼ産生菌の関与が強く疑われるため、AMPC/CVAで確実にカバーする必要があります。

これは、耐性菌の選択圧を減らしつつ(AMPC単剤の使用)、重症例は確実に治療する(AMPC/CVAの使用)という戦略であり、臨床的に有効でしょう。

【耐性菌リスクを考慮した用量設定:標準用量 vs 高用量】

薬剤選択と同時に「用量」の決定も重要です。なぜ「高用量(90mg/kg/day)」が必要なのでしょうか。

これは主に、ペニシリン非感受性肺炎球菌(PISP/PRSP)を克服するためです。Time above MIC(菌の増殖を抑える濃度以上に血中濃度を保つ時間)を達成するために、高用量が必要となります。

2020年のレビューでは、以下の「耐性菌リスク因子」がある場合、高用量 AMPC/CVA (90mg/kg/day) を選択すべきとしています。

  • 高用量を選択すべきリスク因子 :
    • 2歳未満の小児
    • 保育施設(Daycare)への通園
    • 過去1ヶ月以内の抗菌薬使用歴
    • 最近の入院歴
    • 肺炎球菌耐性率が高い地域(例:10%以上)
    • 重症のABRS(「重症な発症」基準を満たす場合)

上記の内容から、第一選択薬の推奨案を表にまとめます。

小児ABRSに対する第一選択抗菌薬の推奨(統合案)

ABRS診断基準耐性菌リスク因子推奨される第一選択薬
1. 持続する症状 (軽症)なしアモキシシリン (AMPC) 単剤(高用量 90mg/kg/day)
or AMPC/CVA(標準用量 45mg/kg/day)
1. 持続する症状 (軽症)ありアモキシシリン/クラブラン酸 (AMPC/CVA)(高用量 90mg/kg/day)
2. 重症な発症(リスク因子の有無を問わず)アモキシシリン/クラブラン酸 (AMPC/CVA)(高用量 90mg/kg/day)
3. 悪化する経過(リスク因子の有無を問わず)アモキシシリン/クラブラン酸 (AMPC/CVA)(高用量 90mg/kg/day)
  • 治療期間:治療期間は、一般的に10日間が推奨されます。後述するバイオフィルム形成のリスクなども考慮し、症状が改善した後も十分な期間投与することが重要です。

補助療法:鼻洗浄は有効か?

・生理食塩水による鼻洗浄(Nasal saline irrigation)は、副鼻腔炎の補助療法として広く推奨されています。しかし、そのエビデンスレベルは限定的です。King DらによるCochraneレビュー や、2025年の研究 においても、急性上気道感染症や急性副鼻腔炎に対する鼻洗浄の「有意な有効性」を支持する強力なエビデンスは示されていません 。

Risk factors of acute bacterial paranasal sinusitis in children: a case control study (BMC Infect Dis
. 2025 Aug 22;25:1059. doi: 10.1186/s12879-025-11299-2)

Risk factors of acute bacterial paranasal sinusitis in children: a case control study - PMC
Acute bacterial paranasal sinusitis is a common infection in children. The aim of this study was to analyze risk factors...

・ただし、鼻汁の物理的な除去、粘膜の加湿、線毛運動の改善といった機序が期待され、安全性も高い(鼻を適切にかめる年齢であれば)ため、対症療法としては引き続き推奨されます。

慢性副鼻腔炎(CRS)の病態と管理

ここからは、急性とは全く異なる疾患単位、「慢性副鼻腔炎(CRS)」について解説します。ABRSが「感染症」であるのに対し、CRSは単純な「感染」ではなく、「多因子性の慢性炎症」として捉える必要があります 。   

Chronic Rhinosinusitis in Children (Curr Treat Options Pediatr. Author manuscript; available in PMC: 2020 Dec 10.Published in final edited form as: Curr Treat Options Pediatr. 2018 Sep 25;4(4):413–424. doi: 10.1007/s40746-018-0142-z)

Chronic Rhinosinusitis in Children - PMC
Pediatric chronic rhinosinusitis (CRS) is a common condition that is often misdiagnosed and can be challenging to treat....

小児CRSの定義:急性とは異なるアプローチ

  • 定義: 鼻閉、鼻漏(前鼻漏または後鼻漏)、顔面痛/圧迫感、咳のうち2つ以上の症状が、12週間以上持続する場合に診断されます 。   
  • 急性(ABRS)との違い: ABRSのゴールが抗菌薬による「治癒」であるのに対し、CRSのゴールは生活の質(QOL)を損なう症状管理となります 。   
  • 疫学: 小児CRSの正確な有病率は不明ですが、小児のURIの5〜10%が副鼻腔炎に移行すると推定されており 、決して稀な疾患ではありません。   

病態生理:バイオフィルムと宿主免疫

小児CRSの病態は、(1)細菌の貯蔵、(2)宿主の過剰防衛、の2つが中心です。

  1. 細菌の隠れ家(Bacterial Reservoir)
    • アデノイド: 小児CRSにおいて、アデノイドは「細菌の貯蔵庫」として極めて重要な役割を果たします 。アデノイド組織内で細菌がコロニーを形成し、副鼻腔へ持続的に細菌を供給します。   
    • バイオフィルム (Biofilm): 細菌が多糖類のマトリックスに守られた集合体を形成し、粘膜に強固に付着します 。このバイオフィルムが、(1)抗菌薬の浸透を物理的に妨げ(耐性の獲得)、(2)宿主の免疫(好中球など)から細菌を保護します。これが、抗菌薬治療が効きにくい(=慢性化する)最大の理由の一つです 。   
  2. 宿主の免疫応答(慢性炎症)
    • CRSは、外部刺激(細菌、真菌、アレルゲンなど)に対する「不適切または過剰な免疫応答」であると考えられています 。特に、喘息や鼻茸を合併するCRSでは、Th2型の炎症(好酸球性炎症)が関与している可能性が示唆されています 。   

Pediatric Rhinosinusitis (Curr Treat Options Allergy. Author manuscript; available in PMC: 2017 Sep 1.Published in final edited form as: Curr Treat Options Allergy. 2016 Jul 11;3(3):268–281. doi: 10.1007/s40521-016-0096-y)

Pediatric Rhinosinusitis - PMC
Rhinosinusitis, is defined as an inflammation of the paranasal and nasal sinus mucosae. Chronic rhinosinusitis (CRS)is a...

リスク因子と併存疾患:アレルギーと喘息

CRS診療の鍵は、CRSを「鼻の局所的な病気」としてだけ捉えないことです。これは「気道の全身的な炎症性疾患」(United Airway Disease)の局所的な表現型である可能性が高いのです。

2024年に発表された研究  は、小児CRS患者の併存疾患について、非常に重要なデータを示しました。   

Comorbidities of chronic rhinosinusitis in children and adults (Clin Transl Allergy
. 2024 Apr 24;14(4):e12354. doi: 10.1002/clt2.12354)

Comorbidities of chronic rhinosinusitis in children and adults - PMC
Chronic rhinosinusitis (CRS) is a chronic inflammatory disease of the nose and paranasal sinuses lasting ≥12 weeks. CRS ...

  • 小児CRS患者の併存疾患(2024年の研究 )
    • アレルギー(アレルギー性鼻炎):56.73% が合併
    • 喘息:47.12% が合併
    • 慢性中耳炎(COM):19.23% が合併

注目すべきは、このアレルギーと喘息の重複が、成人よりも小児において有意に顕著であった点です 。   

したがって、CRSの管理においては、以下のリスク因子や併存疾患の評価と管理が不可欠です。

  • アレルギー性鼻炎    
  • 喘息    
  • 受動喫煙・環境因子    
  • 免疫不全(IgGサブクラス欠損症など)   
  • 嚢胞性線維症(CF)(特に鼻茸を伴う場合)   

Clinical Characteristics of Pediatric Chronic Rhinosinusitis: A Nationwide Retrospective Multicenter Study (J Rhinol. 2025 Mar 21;32(1):28–35. doi: 10.18787/jr.2024.00040)

Clinical Characteristics of Pediatric Chronic Rhinosinusitis: A Nationwide Retrospective Multicenter Study - PMC
Pediatric chronic rhinosinusitis (CRS) significantly affects children’s quality of life and learning abilities. This stu...

CRS:内科的治療

小児CRSの標準的な内科的治療(抗菌薬、鼻噴霧ステロイド、鼻洗浄)についてです。

2020年のレビュー  は、「通常推奨される内科的治療(抗菌薬、鼻洗浄、鼻噴霧ステロイド)を裏付ける研究はほとんどない」と明確に指摘しています。   

しかし、臨床現場では以下のように考えられています。

  • 鼻噴霧ステロイド薬&鼻洗浄: エビデンスは乏しいものの 、CRSの病態が「炎症」であることを考えると、局所の炎症を抑え、物理的に刺激物を洗い流すこれらの治療は、安全であり第一選択となります。   

  • 抗菌薬(長期投与): バイオフィルムの存在  を考えると理論的には正当化されそうですが、その有効性を支持する質の高いエビデンスは乏しいのが実情です 。   

Chronic Rhinosinusitis in Children (Curr Treat Options Pediatr. Author manuscript; available in PMC: 2020 Dec 10.Published in final edited form as: Curr Treat Options Pediatr. 2018 Sep 25;4(4):413–424. doi: 10.1007/s40746-018-0142-z)

Chronic Rhinosinusitis in Children - PMC
Pediatric chronic rhinosinusitis (CRS) is a common condition that is often misdiagnosed and can be challenging to treat....

外科的治療:アデノイド切除術とESS

内科的治療(およびアレルギー、喘息などの併存疾患の管理)が奏効しない場合、外科的治療が検討されます。

小児のCRS手術には、成人とは異なる明確な「順序」があります。

  • 第一選択の外科治療:「アデノイド切除術」 小児CRSの外科的治療の「主要な手段(mainstay)」は、内視鏡下副鼻腔手術(FESS)ではなくアデノイド切除術です 。
    • 理由: 前述の通り、アデノイドが「細菌の貯蔵庫」として機能しているため 、まずこの供給源を断つことが最も合理的かつ低侵襲です。   
    • 有効性: アデノイド切除術単独での改善率は約50〜69%と報告されています 。   

Clinical Characteristics of Pediatric Chronic Rhinosinusitis: A Nationwide Retrospective Multicenter Study (J Rhinol. 2025 Mar 21;32(1):28–35. doi: 10.18787/jr.2024.00040)

Clinical Characteristics of Pediatric Chronic Rhinosinusitis: A Nationwide Retrospective Multicenter Study - PMC
Pediatric chronic rhinosinusitis (CRS) significantly affects children’s quality of life and learning abilities. This stu...
  • アデノイド切除術が失敗した場合の「次の一手」 アデノイド切除術に反応しない難治例(リスク因子:7歳未満、喘息の既往 )に対して、初めて内視鏡下副鼻腔手術(FESS)やバルーン副鼻腔形成術の適応がでてきます 。
    • FESS: 解剖学的な問題を解消し、副鼻腔の換気とドレナージを改善します。2025年に発表された日本の多施設共同研究  では、FESSを受けた小児CRS患者(平均13.4歳)において、術後3年間にわたり症状(鼻閉、鼻漏、嗅覚低下など)が有意に改善し、長期的なQOL向上が示されました。   
    • バルーン副鼻腔形成術: 従来のFESSの代替として、副鼻腔の自然口をバルーンで拡張する、より低侵襲な方法です 。   

合併症について

  • 小児の副鼻腔炎は、そのほとんどが軽快しますが、時に急速に進行し、視力や生命を脅かす重篤な合併症を引き起こすことがあります 。これらの「レッドフラッグサイン」を認識することが重要です。 

Acute bacterial sinusitis in children: an updated review (Drugs Context
. 2020 Nov 23;9:2020-9-3. doi: 10.7573/dic.2020-9-3)

Acute bacterial sinusitis in children: an updated review - PMC
In the pediatric age group, approximately 7.5% of upper respiratory tract infections (URIs) are complicated by acute bac...

最も頻度の高い合併症:眼窩内合併症

  • 発生源: 小児の眼窩内合併症のほとんどは、篩骨洞(Ethmoid sinus)の炎症の波及によります 。   
  • 解剖学的理由: 前述の通り、篩骨洞と眼窩を隔てる骨(Lamina papyracea)が紙のように薄いため、容易に炎症が眼窩内へ侵入します 。   

臨床的鑑別の核心:「Pre」 vs 「Post」

 最も重要な臨床的判断は、炎症が眼窩隔膜(Orbital septum)を越えたかどうか(Preseptal vs Postseptal)です。

  • 1. 眼窩周囲蜂巣炎 (Preseptal cellulitis)
    • 炎症が眼窩隔膜の手前(皮膚組織)に留まっている状態。
    • 徴候: 眼瞼(まぶた)の腫脹・発赤 。   
    • 鑑別点: 眼球突出なし、眼球運動障害なし、視力低下なし。
    • 治療: 通常、経口抗菌薬の外来治療が可能です。
  • 2. 眼窩蜂巣炎 (Orbital cellulitis) / 骨膜下膿瘍 (Subperiosteal abscess)
    • 炎症が隔膜を越え、眼窩内の脂肪組織や骨膜下に波及・膿瘍形成した状態。
    • 徴候: 眼瞼腫脹に加え、以下のレッドフラッグが出現します。
      • 眼球突出(Proptosis)    
      • 眼球運動障害(「目が動かしにくい」「動かすと痛い」)   
      • 複視(物が二重に見える)
      • 視力低下(急激な視力低下は緊急事態です)   
    • 治療: 即時入院の上、強力な静注抗菌薬治療、および緊急の外科的ドレナージ(排膿)が必要です。

致死的となり得る合併症:頭蓋内合併症

  • 発生源: 前頭洞(Frontal sinus)が関与することが多いです 。そのため、前頭洞が発達する年長児や思春期でより問題となります 。   
  • 種類 :
    • 髄膜炎 (Meningitis)
    • 硬膜外膿瘍 (Epidural abscess)
    • 硬膜下膿瘍 (Subdural empyema)
    • 脳膿瘍 (Cerebral abscess)
    • Pott’s puffy tumor(前頭骨骨髄炎に伴う前額部の腫脹)   

合併症が疑われる場合の対応

  • 緊急での対応が必要なレッドフラッグサインは以下の通りです。

  • 眼科的兆候 :
    • 眼球突出
    • 眼球運動障害・疼痛
    • 複視
    • 視力低下

Orbital Consequences of Chronic Rhinosinusitis: A Contemporary Narrative Review of the Ophthalmologic Impact and Therapeutic Role of Functional Endoscopic Sinus Surgery

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  • 頭蓋内圧亢進兆候 :
    • 激しい頭痛(鎮痛薬が無効)
    • 持続する嘔吐
    • 意識変容(不機嫌、傾眠)
  • 髄膜刺激症状 :
    • 頸部硬直
    • 羞明(光を異常に眩しがる)
  • これらのサインが1つでも認められれば、直ちに高次医療機関(耳鼻咽喉科・眼科・脳神経外科の専門医が常駐する施設)への救急指示してください 。診断の確定には造影CTスキャンが必須です 。

Orbital Complications of Chronic Rhinosinusitis: A Contemporary Narrative Review of the Ophthalmologic Impact and Therapeutic Role of Functional Endoscopic Sinus Surgery

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