【小児科医blog:感染症】エルシニア感染症について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:感染症】エルシニア感染症について

感染症

総論

・低温でもよく増殖するため、冬季の食中毒の原因菌としてよく知られる。

・急性胃腸炎症状が多く認められる感染症。他の胃腸炎よりも下痢症状はゆっくりであり、12-22日持続する場合もある。20-60%で血便を認める。

・回盲部病変(右下腹部痛をきたし、虫垂炎と鑑別が難しい)、川崎病様症状、急性腎不全合併など、多彩な臨床症状をきたす。

・年齢により症状が異なり、5歳までの幼児では下痢、嘔吐、発熱といった通常の胃腸炎症状で自然軽快する。年長児では腸管膜リンパ節炎を起こして強い腹痛をきたしやすく、虫垂炎の誤診例もある。

・成人では下痢や腹痛は少なく、むしろ関節痛や結節性紅斑をきたしやすい。

・集団発生するケースもある。

・経口感染し、小腸粘膜から組織に侵襲して小腸粘膜上皮細胞および固有層を経由して、腸間膜リンパ節に入る。これにより、胃腸炎、腸間膜リンパ節炎を起こし、さらには敗血症をきたすこともある。

病原体

・エルシニア感染症とは、一般に腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica: Y. ent)と仮性結核菌(Yersinia pseudotubeculosis: Y. pstb)感染症を指している。

・海外では豚肉、牛乳などを原因とした食中毒が多く、日本国内では汚染された井戸水による集団感染の報告がある。またウサギやネコなどの動物からの感染もある。

・潜伏期間:1-14日、通常は4-6日

Y. ent

・Y. ent感染症の方が一般的には多く、胃腸炎症状が主体。大半は血清型O3が多い。

・結節性紅斑、関節炎や急性腎炎などの併発も認められているが、本邦では稀である。

Y. pstb

・腹部症状を伴う発熱性、発疹性疾患であるが、一部に川崎病の症状や急性腎不全の合併、まれに回盲部病変や急性腎炎などを認めることがある。

病態

・Y. pstb感染症の多彩な臨床症状や合併症に、スーパー抗原活性を有する外毒素YPMによるT細胞やマクロファージの過剰な活性化、それによる炎症性サイトカインん過剰な産生が関係している可能性が考えられている。

治療

一般的治療

・発熱、腹痛や下痢などが強い場合は対症療法とともに、輸液療法を行う。

・腹痛が強い場合、急性虫垂炎、腸間膜リンパ節炎、腸重積症などの合併に注意する。

抗菌薬治療

・抗菌薬の有効性は必ずしも証明されていない。

・乳幼児などで高熱が続いたり敗血症が疑われる場合には投与が必要。

・βラクタマーゼ産生株が多く、PC系や第一世代セフェム系は感受性が低い。

<empiric therapy>

CDTR-PI(セフジトレンピボキシル:メイアクト) 9mg/kg/day 3-5日間

NFLX(6-12mg/kg/day, 5日間 ※乳児には使用しない)、CTRX(20-60mg/kg/day)

Y.ent感染症の抗菌薬

・βラクタマーゼを産生し、ペニシリン系抗菌薬や第一世代セフェム系には感受性が低い。

・第三世代セフェム系、ニューキノロン系、アミノグリコシド系、ST合剤などに感受性あり。

・胃腸炎症状が主体の場合、自然治癒傾向が強いので抗菌薬は必ずしも必要ではない。

処方例:セフジニル(セフゾン®️). 9-18 mg/kg/day 分3 経口 5日間

Y. pstb感染症の抗菌薬

・多くは重篤感のある症状であり、入院加療が望ましい場合が多い。

・重症例では抗菌薬投与が必要となる。

処方例:アンピシリン 50-100 mg/kg/day 分3-4 静注 5日間

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