【小児科医blog:神経・救急】小児の急性脳炎・急性脳症について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:神経・救急】小児の急性脳炎・急性脳症について

神経

今回は、小児神経疾患の中でも、その児の予後に大きく関与する疾患、急性脳炎・急性脳症についてまとめます。

溶連菌と診断されたらペニシリン!川崎病と診断されたらγグロブリン!のように、決まった治療法はまだ確率されていませんが、現時点で判明している検査・治療をチェックしてみました。

急性脳炎・脳症の違い

急性脳症

定義:JCS20またがGCS10-11以上が24以上続く場合、急性脳症と定義される。

・JCS10以上の意識障害が12時間以上続いた時点で、脳炎・脳症疑い。疑いの時点でステロイドパルスを行うケースもあり。

・JCS3以下であっても、CTで大脳浮腫性病変があれば脳症と定義できる。

・通常、感染症に伴って大脳の浮腫性病変をきたすものが多いです。

急性脳炎

定義:急性脳症のうち、髄液検査で細胞数増加があれば脳炎。

・つまり、急性脳症の意識状態で、かつ髄液検査で異常があれば急性脳炎と診断されます。

・ウイルス感染による一次性脳炎、急性散在性脳脊髄炎や辺縁系脳炎などの二次性脳炎に分類されます。

・急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis; ADEM):先行感染後、数日〜2週間で発症することが多い。意識障害で発症する例が多く、そのほか麻痺などの運動症状を呈する。小児ではしばしばけいれん発作を認める。ステロイドパルス療法などが行われており、一般的に後遺症は残さずに治癒する例が多い。

検査(MRI所見)

・脳炎や脳症では、診断のためには髄液検査の他にもMRIの検査が有効です。

・脳炎脳症は様々な分類がありますが、今回は、MRIの所見の一例を示します。

急性壊死性脳症(ANE)

・視床に対称性に楕円形の壊死性病変。

・1-2病日ではT1低信号、T2高信号、拡散強調画像で高信号

出血性ショック脳症症候群(HSES)

・発症後早期(48時間以内)にびまん性脳浮腫をきたす

けいれん重積型急性脳症(AESD)

・1-2病日は正常、3-14病日に拡散強調画像で皮質下白質にbright tree appearanceを認める

可逆性脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎・脳症(MERS)

・急性期に脳梁膨大部に拡散強調画像で高信号、T1,T2の変化は軽度

・2ヶ月以内(多くは1週間以内)に画像所見は消失する

急性散在性脳脊髄炎(ADEM)

・大脳白質、基底核、小脳、脳幹、脊髄に左右非対称で境界不明瞭な斑状(通常は5mm〜5cm大)のT2高信号がある。

・ANEと判別しにくい場合もあるが、ADEMでは拡散強調画像が目立たない

検査(代謝性脳症の鑑別)

・代謝性疾患においても、意識障害をきっかけに脳症が判明するケースがあります。

・鑑別方法としては、代謝性アシドーシス、ケトン体、アンモニア、乳酸、肝機能異常、血中有利カルニチン、アミノ酸分析、有機酸分析等を行い診断を勧めていきます。

・今回は詳細については割愛します。

治療

・冒頭で述べた通り、確実に定まった治療法はありません。

・そのため、効果的とされる治療を、それぞれの症例に対して考慮していくことになります。

・例外として、病原体による一次性脳炎の場合は、病原体に対する治療薬があればそれが優先されます。しかし、多くの場合はウイルス感染症が多く特異的な治療薬は存在しません。

・治療薬の存在するウイルスとしてはヘルペスウイルスの頻度は多く、アシクロビルの投与は有効です。

アシクロビル(ゾビラックス) 10 mg/kg/回 1日3回 1回1時間以上かけて

・また、どの症例に関しても、呼吸循環の管理は必ず行います。モニター下での管理を行い、バイタルの変化を詳細に観察します。

①ステロイドパルス

用量:メチルプレドニゾロン 30mg/kg/day(最大1g/day)

投与方法:2時間かけて 1日1回、3日間連続で

→凝固亢進の可能性あり、パルス療法終了まではヘパリン(100-150 IU/kg/day持続静注)を併用する。

②頭蓋内圧亢進への治療

用量:D-マンニトール 0.5-1.0 g/kg/dose(15%マンニトール5mL/kgで投与するのが簡単。)

投与方法:15-30分かけて、1日3-6回投与。血性浸透圧が320mOsm/Lを超えないようにする。

③γグロブリン大量療法(IVIG)

 γグロブリン 1g/kg/日 10-15時間かけて静注

 ・アナフィラキシーを生じることがあるので投与は少量から

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