【小児科医Blog:循環器】Pacemaker(ペースメーカー)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医Blog:循環器】Pacemaker(ペースメーカー)について

循環器

はじめに

・小児における不整脈、特に先天性完全房室ブロック(Congenital Complete Heart Block, CCHB)や重度の徐脈などでは、心臓の電気信号が正常に伝わらない場合、ペースメーカーによる恒久的な心拍管理が必要となります。

・本記事では、PubMedによる文献検索を元に、小児用ペースメーカーの種類や適応などについてまとめます。

種類・特徴

従来型ペースメーカー

・従来型ペースメーカーは、リード(電極線)を使用して心臓内または外部に接続するタイプです。以下の特徴があります。

  • サイズと設置位置:発電機部分は腹部や胸部に埋め込まれることが多く、小児にはサイズが大きい点での制約があります。
  • 手術方法:開胸手術が必要であり、術後の回復期間が長くなる可能性があります。
  • 合併症リスク:リード関連の感染や断線などが発生する場合があります
  1. Children’s HealthFebruary 9, 2022 Doctor pioneers pacemaker procedure in kids
https://health.ucdavis.edu/news/features/doctor-pioneers-pacemaker-procedure-in-kids/2022/02

リードレスペースメーカー

・リードレスペースメーカー(例:Medtronic Micra)は、リードを使用しないコンパクトなデバイスです。

  • 利点
    • サイズが非常に小さく、心臓内に直接埋め込むことが可能。
    • リード関連合併症を回避できる。
    • 美容的にも優れており、特に皮膚が薄い患者で有効。
  • 課題
    • 小児では血管径や体重制限が適応を制限する要因となっています。

2. Published: April 11, 2023

Wireless pacemakers may be safe, effective for children with irregular heart rhythms

Wireless pacemakers may be safe, effective for children with irregular heart rhythms
Research Highlights: A wireless or leadless (without wires) pacemaker was implanted in a select group of children with i...

適応疾患

先天性完全房室ブロック(CCHB)

・CCHBは、小児で最も一般的なペースメーカー適応疾患です。

・出生直後から重度の徐脈を呈する場合には、早期の恒久的なペーシングが必要となります。

その他の適応疾患

  • 心臓手術後に持続する房室ブロック
  • 神経筋疾患(例:Kearns-Sayre症候群)
  • 心臓チャネル病(例:Long-QT症候群)
  • 再発性心房頻拍や徐脈頻脈症候群

動作モード

・ペースメーカーのモードは、心臓の異常なリズムを補正するために、どの部位を刺激・感知し、どのように反応するかを定義するものです。

・これらは国際的なNBG(North American Society of Pacing and Electrophysiology/British Pacing and Electrophysiology Group)コードで表され、主に3~5文字で構成されます。それぞれの文字が以下を示します。

  1. ペーシング部位(刺激する部位):A(心房)、V(心室)、D(両方)
  2. センシング部位(感知する部位):A(心房)、V(心室)、D(両方)
  3. 反応様式(感知したイベントへの応答):I(抑制)、T(誘発)、D(抑制と誘発)
  4. レート変調(身体活動に応じたペーシングレートの変化):Rが付く場合、レート応答機能を持つ
  5. 多部位ペーシング(オプション):複数の心腔でペーシングを行う場合

以下では、代表的なモードについて詳しく解説します。

VVIモード

特徴

  • ペーシング部位:心室
  • センシング部位:心室
  • 反応様式:抑制(Inhibit)

・VVIモードは、心室にリード線を1本留置して使用される単腔型のモードです。

・自己心拍が設定されたペーシングレートよりも速い場合にはペーシングが抑制され、遅い場合にはペースメーカーが電気刺激を与えます。

・このモードは特に徐脈性心房細動など、規則的な心房収縮が見られない場合に適応されます。

利点と課題

  • 利点
    • 構造が単純で操作も容易。
    • リード線が1本で済むため、手術時間や合併症リスクが低い。
  • 課題
    • 房室同期性を維持できないため、長期使用では心不全リスクが増加する可能性があります。

DDDモード

特徴

  • ペーシング部位:心房と心室
  • センシング部位:心房と心室
  • 反応様式:抑制と同期

・DDDモードはデュアルチャンバー型で、心房と心室の両方を刺激および感知します。

・自己P波やQRS波を感知した場合には、それに応じてペーシングを抑制または同期します。

・このモードは房室同期性を維持できるため、生理的な収縮順序を保つことが可能です。

適応疾患

  • 高度房室ブロック
  • 徐脈性洞不全症候群

利点と課題

  • 利点
    • 房室同期性を維持できるため、生理的な血行動態が保たれる。
    • 心不全や心房細動のリスク低減。
  • 課題
    • リード線が2本必要なため、手術の侵襲性が高くなる。
    • プログラミングや管理が複雑。

AAIモード

特徴

  • ペーシング部位:心房
  • センシング部位:心房
  • 反応様式:抑制

・AAIモードは主に洞不全症候群など、正常な房室伝導が保たれている患者に使用されます。

・自己P波を感知するとペーシングを抑制し、自発的な心房収縮を優先します

利点と課題

  • 利点
    • 心室への不要な刺激を回避できる。
    • 房室同期性が自然に保たれる。
  • 課題
    • 房室ブロックなどでは適応外。

VVIRモード

特徴

・VVIRモードはVVIモードにレート変調機能(R)を追加したものです。

・患者の身体活動量や代謝需要に応じてペーシングレートを自動調整します。労作時や運動時にはレートが上昇し、安静時には低下します

VDDモード

特徴

  • ペーシング部位:心室
  • センシング部位:心房と心室
  • 反応様式:抑制と同期

・VDDモードはデュアルセンシング型で、主に高度房室ブロック患者に用いられます。

・自己P波を感知すると、それに同期して心室を刺激します。ただし、自己P波がない場合には対応できないため、洞不全症候群には適していません。

【まとめ】

・ペースメーカーのモード選択は、不整脈の種類や患者の病態によって異なります。以下に代表的な特徴をまとめます。

モードペーシング部位センシング部位応答様式主な適応疾患
VVI心室心室抑制徐脈性心房細動
DDD心房・心室心房・心室抑制・同期高度房室ブロック、洞不全症候群
AAI心房心房抑制洞不全症候群
VVIR心室心室抑制+レート変調徐脈+労作時頻脈
VDD心室心房・心室抑制・同期高度房室ブロック

・各モードには利点と課題がありますので、患者ごとの病態や生活スタイルに合わせて最適な選択肢を提供することが重要です。

最新技術・研究

改良型 Pediatric IPG

・2022年には、新生児向けに特別改良された「Pediatric IPG」が米国で初めて導入されました。

・このデバイスは、Medtronic Micraのサブアセンブリを基盤としており、心外膜リードと組み合わせることで従来型よりも大幅に小型化されています。

  • 臨床成果
    • 生後数日の新生児5人に移植され、6~9か月間のフォローアップで良好な結果が報告されました。
    • 感染リスクや創部合併症が従来型よりも低減しました。
https://innovationdistrict.childrensnational.org/first-infants-in-the-u-s-with-specially-modified-pacemakers-show-excellent-early-outcomes
  • 適応患者
    • 特に体重2.5kg未満の新生児でも使用可能であり、小型化による恩恵が顕著です

最小侵襲手術技術

・UC Davis Healthでは、新しい経皮的アクセスツールを開発中です。このツールは飲み物用ストローほどの大きさであり、小さなポートからデバイスを挿入することが可能です。

  • 利点
    • 開胸手術を回避できるため、小児患者への負担が軽減されます。
    • 手術後の回復期間短縮も期待されています。

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