定義と分類
・TAPVCは、4本の肺静脈が左房ではなく体静脈系、あるいは右房に還流する先天性心疾患です。解剖学的位置により以下の4型に分類されます。
●Darling分類:異常結合部による分類
- Ⅰ:上心臓型 (45-50%)
- 静脈の還流部位は、a(無名静脈)、b(上大静脈)。肺静脈からaを通ってbへ還流。
- TAPVRは,ASDを必ず合併する(右左シャント)
- 最多の分類型
- Xp:snowman shadow(8の字型)
- Ⅱ:傍心臓型 (25-30%)
- 静脈の還流部位は、a(冠状静脈洞)、b(右房)。肺静脈から直接右心房に還流。
- Xp:box-shape(右第二弓,左第4弓突出)
- Ⅲ:下心臓型 (15-20%)
- 静脈の還流部位は、肝静脈、門脈、下大静脈。肺静脈から門脈系に還流。
- 高度PH
- Ⅳ:混合型 (5-10%)
- Ⅰ〜Ⅲの混在
発生頻度
・約10,000出生に1人の割合で発症する稀な疾患です。
・全先天性心疾患のうち、1.2‐1.9%とされています。
・孤立性に生じるものと、内臓錯位症候群に合併するものがあります。
病態生理
- 肺静脈血が体静脈系に還流するため、右心系の容量負荷が増大
- 心房中隔欠損を介してシャントが生じ、チアノーゼを呈する
- 肺静脈還流路の狭窄により肺うっ血、肺高血圧を来たす可能性あり
臨床症状
- 新生児期: 重度のチアノーゼ、心不全(呼吸困難)、ショック
- 乳児期以降: 易疲労感、成長障害、反復性肺炎など
疾患特異的な症状がないため、出生後のチアノーゼと呼吸障害をみた場合には必ず鑑別にあげてスクリーニングを行う必要がある。新生児呼吸窮迫症候群や新生児一過性多呼吸として見逃される例が存在しているので注意。
診断
- 心エコー検査: 第一選択の検査法。
- 右房、右室の拡大が診断のきっかけとなることがあるが、新生児遷延性肺高血圧でも高度の右心系拡大と心房間での右左短絡を認めることがある。
- 診断には、共通肺静脈の確認とその還流経路の同定が必要である。
- 心臓CT/MRI: 詳細な解剖学的評価に有用。3D‐CTでは主要な血管と心房の空間的な位置関係だけでなく、気管・気管支などの情報も得ることができる。
- 心臓カテーテル検査: 血行動態評価に重要
治療
- 外科的修復術が唯一の根治的治療法。共通肺静脈腔と左房の間に交通を形成する。
- 新生児期発症例は緊急手術の適応となる、高度のチアノーゼや循環不全を認める症例では緊急手術の適応。
- 術前管理: 循環不全をきたした症例には、肺血管拡張作用の少ないドパミンが用いられる。高度のチアノーゼを呈する症例に対しては、挿管・人工呼吸器管理、高濃度酸素投与などが行われる。
予後
- 早期診断・早期治療により予後は改善傾向
- 手術死亡率は約5%程度まで低下
- 手術を行った症例の長期予後は良好だが、肺静脈狭窄の再発に注意が必要。肺静脈狭窄を合併した場合には、繰り返しの侵襲的治療が必要な場合がある。
最新の研究動向
- 胎児診断技術の向上
- 低侵襲手術法の開発
- 肺静脈狭窄予防・治療法の研究
最後に
・TAPVCは稀ではありますが、新生児期に重篤な症状を呈する可能性がある重要な先天性心疾患です。早期診断、早期治療が予後改善の鍵となります。小児循環器専門医を中心とした多職種チームによる包括的な管理が求められます。
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