・播種性血管内凝固症候群(DIC)という複雑な疾患について、最近の研究からわかってきたことをまとめます。
総論
・播種性血管内凝固症候群(DIC)は、血液凝固系が過剰に働く、生命を脅かす可能性のある疾患です。
・DICは原疾患ではなく、他の重篤な疾患の合併症です。知っておくべきことは以下の通りです
DICとは?
・DICの特徴は、体の微小血管全体に血液凝固が広範囲に活性化すること。
・これにより微小血栓が形成され、血流が妨げられ、臓器に損傷を与えることがあります。同時に、その過程で凝固因子や血小板が消費され、さらに線溶系の活性化により重篤な出血を引き起こす可能性もあります。
・凝固活性は共通の病態ですが、線溶活性は基礎疾患により大きくことなり、重症感染症に代表される臓器障害が高度な「線溶抑制型」、急性前骨髄性白血病に代表される出血症状が高度な「線溶亢進型」。固形がんに代表される「線溶均衡型」に分類される。
参考文献
2. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24750668
原因と危険因子
・DICは以下のような様々な状態によって引き起こされる
- 感染症(敗血症、その他の重症感染症)
- 組織損傷(外傷、熱傷、熱中症、横紋筋融解)
- 特定のがん(造血器悪性腫瘍、固形がん)
- 血管関連疾患(胸腹部大動脈瘤、巨大血管腫、血管関連腫瘍、膠原病血管炎合併例)
- 肝障害(劇症肝炎、急性肝炎、肝硬変)
- 急性膵炎
- ショック
- 溶血、血液型不適合妊娠
- 蛇咬傷
- 低体温
- 重度のアレルギー反応
新生児DICの基礎疾患
・新生児DICの場合、アシドーシス、低酸素血症、末梢循環不全、低体温、エンドトキシン血症が重要
・上記の因子は、直接的あるいは血流のうっ滞やサイトカインを介して血管内皮細胞上での組織因子の発現を増加させる。また新生児のDICでは、異常分娩時の組織因子の流入も凝固亢進のトリガーとして重要である。
・以下が新生児DICを引き起こす基礎疾患である。
低酸素血症:胎児・新生児仮死
分娩合併症:胎盤早期剥離、重症妊娠高血圧症、双胎1児死亡
出血:頭蓋内出血、帽状腱膜下出血、手術後出血
消化器疾患:新生児壊死性腸炎、消化管穿孔
肝疾患:肝炎
感染症:細菌性(B群溶血性連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌など)、ウイルス性(風疹、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスなど)、原虫(トキソプラズマ)、真菌(カンジダなど)
代謝疾患:新生児ヘモクロマトーシス、ガラクトース血症
血管病変:巨大血管腫(Ksabach-Merritt現象)、ヘマンギオーマトーシス
血液疾患:プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、胎児赤芽球症
呼吸器疾患:呼吸窮迫症候群、胎便吸引症候群
腫瘍性疾患:先天性中胚葉性ネフローマ、仙鼻骨奇形腫、先天性白血病、神経芽腫、過誤腫
症状
・DICの症状はさまざまで、以下のようなものがある
- 複数の部位からの出血(鼻、歯茎、皮膚)
- あざができやすい。
- 臓器機能障害
- 重症の場合はショックまたは多臓器不全
・DICの身体所見は重症度によって異なり、軽症の場合は静脈穿刺部位のみに出血が認められる。重度の場合は広範囲の出血や血栓症を認め、腎臓・肝臓・肺・四肢・中枢神経系などの末梢臓器に障害が生じる。
・出血が最も一般的な症状で、次に紫斑や四肢壊疽などの皮膚症状が現れる。
診断
・DICの診断は、単一の検査では確認できないため、困難な場合がある。医師は通常、以下のような臨床症状と臨床検査を組み合わせて診断する
血小板数
プロトロンビン時間(PT)
フィブリノゲン値
Dダイマー検査….etc
DICの診断基準
・下記の表は日血栓止血会誌(2017)のDIC診断基準作成委員会の診断基準。
・他にも、国際血栓止血学会(ISTH)DIC診断基準、日本救急医学会急性期DIC基準などがあります。DICの病態は基礎疾患によって大きく異なるため、一つの基準でDICを診断するのは限界があり、下記表のように、「基本型」「造血障害型」「感染症型」と項目が分かれた日血栓止血会誌(2017)のDIC診断基準が定められました。
・2017年基準では、TAT、SF、F1+2などの分子マーカーが取り入れられています。採血手技の影響を受けやすいため、解釈には注意が必要です。
・また、新生児の凝固・線溶系は成人と大きく異なるため、下記基準は新生児には適用されません。新生児DIC診断・治療指針2016が公開されているので、そちらを参照。

治療
・DIC治療の第一の治療焦点は基礎疾患への対処である。低血圧・低酸素血症、アシドーシスなどのDICを増悪させる因子は積極的に補正する。
・支持療法は極めて重要であり、以下のようなものがある
- 血液凝固因子と血小板を補充するための血液製剤(血小板、血漿)の輸血。
- Plt > 50,000/μL, Fib > 100 mg/dL 目標に維持
- FFPは凝固促進蛋白と抗凝固蛋白の両方を補充し、1回10-15mL/kgを12-24時間ごと
- 場合によっては、ヘパリンなどの抗凝固薬を使用する。
- 重篤な出血のない患者で、臓器障害が強い線溶抑制型のDICで適応。
- 未分画ヘパリン:抗凝固作用はAT依存性であり、ATが低値(<70%)の場合はAT補充が必要。ヘパリン惹起性血小板減少症(HIT)に注意
- 低分子ヘパリン:未分画ヘパリンより出血、HITのリスクが低い
- アンチトロンビン製剤:ATが低値となる症例で使用を考慮。40-60 U/kgを1日1回静注あるいは持続静注。
- 合成プロテアーゼ阻害薬;メシル酸ナファモスタット(FUT)、メシル酸ガベキサート(FOY)はAT非依存性に抗凝固作用、抗線溶作用をもつ。静脈炎、薬剤漏出による皮膚壊死リスクがあり、単独ルートでの投与が必要。FUT 0.06-0.2 mg/kg/hr、FOY 1/0-1.5 mg/kg/hrの持続投与。
- 重篤な出血に対しては、抗線溶薬が考慮される。
最近の動向
・DIC管理を改善するための研究が進行中である。有望な分野には以下のようなものがある
- 重症敗血症関連DICにおける遺伝子組換えヒトトロンボモジュリンの使用
- 他の抗凝固療法の検討
- より正確な診断ツールの開発


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