Intro
・小児で最も頻度の高い血小板減少症は、免疫学的機序による免疫性血小板減少症(ITP: immune thrombocytopenia)である。
・免疫性血小板減少症はもともと特発性血小板減少性紫斑病と呼ばれていたが、抗血小板抗体や血小板自己抗原応答性T細胞など、免疫応答が関与していることがわかり、免疫性血小板減少性紫斑病に名称が変更となった(idiopathic→immuneで、略語はITPのまま変更なし)
ITPとは?
・血小板膜蛋白に対する自己抗体が血小板に結合し、その結果脾臓における血小板破壊が亢進し、血小板減少をきたす自己免疫性疾患。
・「血小板数10 万/μL未満」を血小板減少と定義する。
疫学
・本邦の小児ITP発症患者は年間1000人程度と推定されるが、日本小児血液・がん学会疾患登録事業に登録される「血小板減少症」新規登録患者数は年間400-450人ほど。
・小児ITPは乳児期から思春期までのいずれの時期でも発症するが、小児は就学前・特に4歳以下に多く(就学前に80%)、4歳以下に男児優位(男女比1.2)のピークがあり、一方15-60歳では女性優位。
・ITP患者数(10万人あたり)は15歳未満で1.91人/年、15歳以上で2.2人/年
病因・病態
・血小板抗原(GPⅡb/Ⅲaなどの糖蛋白)に対する抗体産生など自己応答性の免疫異常が背景にある
・乳幼児に発症頻度が高く予後良好であることは、若年小児における未熟な免疫制御能など小児の生理的因子が深く関連している。
・骨髄巨核球数の増加を伴う骨髄巨核球の形態所見は、血小板成熟障害や血小板産生障害の存在を示唆している。
分類
・2009年以降の国際基準:病型、病相により以下のように分類される。
ITPの「病型」
・1次性ITP(免疫異常の原因が特定されていない)
・2次性ITP(感染や薬剤など、免疫学的病態を有する基礎疾患が特定されている)
・小児の一次性ITPは、さまざまな原因疾患を除外することで診断され、特に先天性血小板減少症(congenital thrombocytopenia)との鑑別が重要。
ITPの「病相」
・新規診断ITP 〜3ヶ月
・持続性ITP 3ヶ月〜12ヶ月
・慢性ITP 12ヶ月〜
・慢性ITPではHelicobacter pylori菌の検索を検討しても良い。
・また思春期以降のITPでは抗核抗体の測定も行う。
・青年期ではSLEを念頭に抗核抗体を、説明がつかない貧血を伴う場合はEvans症候群を念頭に直接クームス試験を、明らかに全身状態が悪い時はDICやHUSを、血小板サイズが小型で湿疹や感染反復のエピソードがある場合はWiskott-Aldrich症候群を検討する。
従来の日本国内のITPの分類
急性ITP :〜6ヶ月
慢性ITP :6ヶ月〜
急性ITPが約75%〜80%を占める。
重症度判定:修正Buchanan and Adix出血スコア
・ITPの重症度の判定には、修正Buchanan and Adix出血スコアを用いる。
・粘膜出血のないgrade2以下と、粘膜出血があるgrade3以上とを区別するのが重要
| grade | 備考 |
| 0 | 新しい出血が全くない |
| 1 | 100ヶ所以下の点状出血、および/または5個以下の小さな出血斑(直径3cm以下)、粘膜出血なし |
| 2 | 100ヶ所以上の点状出血、および/または5個以下の大きな出血斑(直径3cm以上)、粘膜出血なし |
| 3:低risk | 鼻孔の血痂、痛みのない口腔紫斑、口腔/口蓋の点状出血、臼歯に沿った頬側紫斑のみ、5分以下の鼻出血 |
| 3:高risk | 5分以上の鼻出血、血尿、血便、痛みを伴う口腔紫斑、著しい月経過多 |
| 4 | 重い粘膜出血、または脳、肺、関節などの内出血の疑いあり |
| 5 | 確定された頭蓋内出血またはあらゆる部位での生命を脅かすか、または致命的な出血 |
・ITPの治療適応は血小板数だけではなく、重症度と健康に関連した生活の質(health-related quality of life; HRQoL)で決める
・grade2以下(粘膜出血がない点状出血・出血斑などの皮膚出血症状のみ)で、経過観察に支障の無い場合、HRQoLに配慮しつつ無治療経過観察もあり。
・しかし、頭部外傷リスクの高い乳幼児やHRQoLの低下した患者には治療を考慮する
・grade3以上(粘膜出血あり)の新規診断ITP患者にはガンマグロブリン療法、もしくは短期ステロイドを推奨する。
慢性化以降のリスク因子
・初発時の年齢10歳以上(逆に若年小児のITPは予後良好)
・血小板数2万/μL以上
・先行感染やワクチン接種などの先行イベントの欠如
治療
・第1選択としては、ガンマグロブリンとステロイドを用いる
ガンマグロブリン
用量:1.0 (〜2.0)g/kg, 1回 静脈注射(最大2回まで)
・ステロイドに比べて48時間後の血小板数が2万/μLに達する頻度が高い
副作用:IVIG後24-48時間に無菌性髄膜炎リスクあり
ステロイド
用量:1〜2mg/kg/日 経口 5-7日間(最大4mg/kg/日まで増量可)
・血小板数増加効果の発現には2-7日を要する。血小板数が3-5万/μLになれば速やかに減量する。
第二選択薬
・トロンボポイエチン(TPO)受容体作動薬やリツキシマブの治療も考慮される。
※慢性型の難治性では、脾摘も考慮する。



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