【小児科医blog:血液】鉄欠乏性貧血(IDA:iron deficiency anemia)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:血液】鉄欠乏性貧血(IDA:iron deficiency anemia)について

血液

IDA:iron deficiency anemia

総論

・乳児期後期と思春期では、急激な成長のため鉄欠乏性貧血になりやすい。

・貧血を示唆する基準としては、6か月〜6歳の小児でHb 11 g/dL以下である。

・鉄欠乏性貧血の場合、小球性低色素性貧血を呈する。平均赤血球容積(MCV) < 80、平均赤血球血色素濃度 (MCHC) < 30、平均赤血球血球血色素量 (MCH) < 27と定義される。

 MCV=Ht (%) / 赤血球 (10⁶/μL) ×10

 MCH=Hb (g/dL) / 赤血球 (10⁶/μL) ×100

 MCHC=Hb (g/dL) / Ht (%) ×100

鉄の体内分布

・体内の鉄量は3-4g、その約70-80%が赤血球中のヘモグロビンに、10-15%が筋肉中のミオグロビンに、残りの10-15%が貯蔵鉄として肝臓などに存在する。

・1日で使用される鉄の多くは体内で寿命がつきた赤血球が処理されて生じる鉄が再利用され、約25mgの鉄が造血に利用される。消化管から吸収される鉄はわずか1mgくらい。

鉄不足の原因

鉄摂取量の不足

・偏食や菜食主義、栄養不良

・離乳期になっても母乳中心で、離乳食進んでいない児に多い。またさらに牛乳を好んで飲む場合も鉄欠乏になりやすい。牛乳は鉄含有量が0.1 mg/dLと少なく、鉄吸収率も母乳の10%と低いことから、乳児期に偏って多く摂取すると貧血になりやすい。

鉄需要の増加

・乳児期や思春期など急速な成長を遂げる時期は、必要量も増えるので相対的に不足する

・また、低出生体重児の場合も鉄需要が多い

出生時貯蔵鉄の不足

・早産・低出生体重児

・双胎間輸血児

・母体妊娠時貧血・糖尿病

鉄の吸収不良

・H. pylori感染症:消化器症状に乏しく消化管出血が確認されないこともある。

・萎縮性胃炎:慢性胃炎の持続や自己免疫性による

・蛋白漏出性胃腸症

・食物アレルギー

鉄の喪失

・過多月経

・消化管出血(胃十二指腸潰瘍、腸管ポリープ、Meckel憩室、横隔膜ヘルニア、寄生虫など)

・慢性鼻出血

・肺ヘモジデローシス

スポーツ貧血

・運動量が多い競技(長距離走、バスケットボールなど)

・減量が必要な競技(体操など)

・長時間の練習を行う場合

・上記のような運動でIDAを発症する。機序としては、筋肉の肥大によるミオグロビン合成亢進による鉄需要の増加、発汗の増加による鉄喪失の増加、ウエイトコントロールによる鉄供給の減少、腹腔内臓器の虚血による鉄吸収の減少、足底を地面に叩きつけることや筋肉の収縮による血管内溶血….など。

臨床症状

貧血症状

・皮膚や爪の粘膜蒼白、息切れ、頭痛、めまい、易疲労、筋肉痛、耐寒性低下、腹痛、便秘、下痢、心雑音、動悸

鉄欠乏症状

消化器

・食欲不振、異食症(氷食症)

・異食症は中枢神経や口腔粘膜、舌の味蕾の変化に起因すると考えられている。

中枢神経

・精神運動発達の遅れ、自律神経発達の遅れ

 →鉄依存性酵素の低下が原因と考えられている。

・記憶力低下、集中力低下

・自律神経失調症、無気力、学習意欲低下

循環器

・運動後心拍数回復時間遅延

筋肉

・筋持久力低下

免疫

・細胞性免疫低下

・好中球貪食能低下

検査および診断

小児の鉄欠乏の診断基準

①フェリチン<12ng/mL

②総鉄結合能(TIBC)>360μg/dL

③Tf飽和率 {(血清鉄値÷TIBC)×100} < 16 %

 ①-③のいずれか2つを満たす場合

※フェリチンの低下が最も重要ではあるが、感染症や炎症、慢性疾患の存在下ではフェリチンが上昇し、血清鉄は炎症や感染症の存在下では逆に低下することに注意!

治療

食事療法

・肉や魚などの動物性食品に多く含まれるヘム鉄の吸収率は10-30%

・海藻類などの植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄の吸収率は3-5%

・鉄の吸収促進因子として、ビタミンC・クエン酸・アミノ酸などが知られている。

鉄剤投与

・乳幼児にはインクレミンシロップ®︎(ピロリン酸第二鉄) 6mg/mL

  用量: 2-3mg(≒0.3-0.5mL)/kg/日 分3-4  (成人量:鉄として60-90mg/日)

・学童期以降では、フェロミア®︎(クエン酸第一鉄)、フェロ・グラデュメット®︎(硫酸第二鉄)

・副作用として約20%に消化器症状が出現する。

・服薬中は便が黒くなる、尿が着色されることがあることに注意

・鉄剤投与数日で、まず網状赤血球が増加→その後ヘモグロビン上昇(約4-8週後で正常化)→最後にフェリチン上昇する(約3か月後で正常化)。フェリチンが正常化するまで内服を継続。

治療終了の目安

・フェリチン20 ng/mL 以上で鉄剤終了

・しかし、乳児、幼児期ではこれより低くても終了して良い。

・鉄剤中止3-6か月後に、再検査を行う。検査(血球、血清鉄、総鉄結合能、血清フェリチン)は感染など炎症のないときに行う。

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