総論
・再生不良性貧血(AA)は、末梢血液での汎血球減少と骨髄の低形成を特徴とする症候群
・造血幹細胞が減少する機序として、造血幹細胞自身の質的異常と、免疫学的機序による造血障害が重要
疫学
・本邦における年間発症数は人口100万人あたり5人前後であり、欧米諸国と比較して2-3倍高い。
・発症のピークは10-20歳代と70-80歳代
症状
主症状
・労作時の息切れ、動悸、めまいなどの貧血症状
・皮下出血斑、歯肉出血、鼻出血などの出血傾向
・好中球減少に伴う感染による発熱
他覚的所見
・顔面蒼白、貧血様の眼瞼結膜
病型分類
・AAは先天性と後天性に大別される。
先天性
・小児では先天性が10%を占めている
・先天性で最も頻度が高い疾患はFanconi貧血
・他、先天性角化不全症、Shwachman-Diamond症候群などがある。
・上記、これらをまとめて遺伝性骨髄不全症候群(IBMFS)という。
・IBMFSは生殖細胞系列の遺伝子変異によって造血不全を発症する。
後天性
・後天性のAAには、特発性(1次性)と様々な薬物や放射線、化学物質が原因となって発症する2次性、肝炎に伴って発症する肝炎関連AA、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)に伴うものなど特殊型がある
検査
・末梢血の検査では、赤血球、白血球、血小板の全てが減少する
・骨髄穿刺および骨髄生検では、有核細胞数の減少、特に幼若顆粒球、赤芽球、巨核球の著明な減少がみられる
・赤芽球や顆粒球が残存している場合には、2核の赤芽球や巨赤芽球性変化など軽度の異型性を認めることもある。
・リンパ球は相対的に上昇する
・染色体分析では、7番染色体モノソミーや8番染色体トリソミーの有無を調べる。しかし、小児MDSではこれらの染色体異常が認められることがあり、骨髄細胞の形態異常と合わせてMDSとの鑑別に利用される。
・AAにでは造血能低下により鉄の利用障害をきたす。血清鉄の上昇、血症鉄消失時間(PIDT1/2)の延長、赤血球鉄利用率の低下などがみられる。慢性のAAではフェリチンが上昇することもある。
・抗核抗体や抗DNAに抗体などの膠原病で見られる自己抗体は通常陰性
診断
・特発性造血障害に関する研究調査班によって提案された診断基準では、以下条件を満たして、かつ白血病など汎血球減少の原因となる他の疾患を認めない場合にAAと診断される。
臨床所見
・貧血、出血傾向、ときに発熱を認める
血液検査
・以下の3項目のうち、少なくとも2つを満たす
①Hb<10.0 g/dL
②好中球<1500/μL
③血小板 Plt < 10万/μL
他検査所見
・以下の検査所見が加われば、診断の確実性が増す。
①網赤血球や未成熟血小板割合の増加がない
②骨髄穿刺所見(クロット標本を含む)は、重症例では有核細胞の減少がある。非重症例では、穿刺部位によっては有核細胞の減少がないこともあるが、巨核球は減少している。細胞が残存している場合、赤芽球にはしばしば異形成があるが、顆粒球の異形成は顕著ではない。
③骨髄生検所見で造血細胞割合の減少がある。
④血清鉄値の上昇と不飽和鉄結合能の低下がある
⑤胸腰椎間のMRIで造血組織の減少と脂肪組織の増加を示す所見がある。
⑥発作性夜間ヘモグロビン尿症形質の血球が検出される。
重症度
・小児AAでは、重症度により治療方針が異なる。
・特発性造血障害に関する研究調査班による重症度基準では、輸血の必要性、網赤血球数、好中球数、血小板数をもとに重症度を5段階で分類している。
Stage1:軽症
他の重症度分類以外のAA
Stage2:中等症
以下の網赤血球数・好中球・血小板の基準を2項目以上満たし、かつa, bに当てはまる
a: 赤血球輸血を必要としない
b: 赤血球輸血を必要とするが、その頻度は毎月2単位未満。
網赤血球:60000 /μL未満
好中球: 1000/μL未満
血小板: 50000/μL未満
Stage3:やや重症
以下の網赤血球数・好中球・血小板の基準を2項目以上満たし、毎月2単位以上の赤血球輸血を必要とする
網赤血球: 60000/μL未満
好中球: 1000/μL未満
血小板: 50000/μL未満
Stage4:重症
以下の網赤血球数・好中球・血小板の基準を2項目以上満たす
網赤血球: 40000/μL未満
好中球: 500/μL未満
血小板: 20000/μL未満
Stage5:最重症
好中球200/μL未満に加えて、以下の網赤血球数・好中球・血小板の基準を1項目以上満たす
網赤血球: 20000/μL未満
血小板: 20000/μL未満
鑑別
・以下の鑑別疾患があり、検査を行う
MDS(myelodyplastic syndrome):低形成骨髄異形成症候群
・血球の形態評価や骨髄染色体分析所見が重要
・MDSの半数例に染色体異常が検出される
・小児MDSでみられる7番染色体モノソミーや8番染色体トリソミーをFISH法により確認することも有用
Fanconi貧血
・皮膚の色素沈着や低身長など特徴的な身体所見
・染色体脆弱試験
先天性角化不全症
・皮膚の網状色素沈着、爪の萎縮、口腔粘膜白斑など身体所見
・血球のテロメア長測定でテロメア短縮を認める
治療
・小児AAの治療には、造血幹細胞移植と免疫抑制療法がある。
・重症度により治療方針が異なる。
造血幹細胞移植
・小児においては、HLA一致同胞からの同種骨髄移植後の長期生存率が90%に達していることから、同胞ドナーが得られた場合、移植が絶対適応となる。
・HLA一致同胞ドナーが得られない場合、ATGおよびシクロスポリンによる免疫抑制療法を選択する。
・免疫抑制療法が無効な場合には、非血縁間同種骨髄移植を選択する。HLA一致非血縁ドナーを選択する場合、HLAの4座(A, B, C, DR)がDNAレベルですべて一致していることが望ましいが、1アレル不一致の場合も許容される。
免疫抑制療法(IST)
・HLA一致血縁ドナーが得られない重症型AAに対しては、抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン(ATG)とシクロスポリン(CyA)の併用による免疫抑制療法が選択される。
・ATG単剤よりも、シクロスポリン併用療法の方が治療奏効率・生存率ともに高い。
・ATGによるアレルギーを防ぐため、ステロイドも併用して行う。
輸血(支持療法)
・貧血に対しては、Hb6-7 g/dL程度を保つように輸血を行う。
・血小板は、Plt 10×10³(10万)/μL以下で明らかな出血がある場合に行う。
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