【小児科医🍎blog】子どもの血友病:年齢別の疑うサイン, 分類, 診断, 治療法まとめ | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医🍎blog】子どもの血友病:年齢別の疑うサイン, 分類, 診断, 治療法まとめ

血液

こんにちは!小児科医りんご🍎です。

毎日元気いっぱいに遊ぶ子どもたち。転んだりぶつけたりして、足や腕に青あざを作るのは日常茶飯事ですよね。

でも、

「うちの子、ちょっとあざができやすすぎる?」

「予防接種のあとの血がなかなか止まらなかった」

と、ふと不安になったことはありませんか?

今回は、そういったご相談の際に私たち小児科医が念頭に置く病気の一つ、「血友病(けつゆうびょう)」について、お話しします。

「血が止まらない病気」という怖いイメージが先行しがちですが、

現在の血友病治療は劇的な進化を遂げています。

正しい知識があれば、子どもたちはスポーツも遊びも、制限なく思い切り楽しめる時代です。

お子さんのあざが気になっている方も、血友病について深く知りたい方も、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

1. 血友病って、体の中で何が起きているの?

私たちの体は、出血したときに血を止めるための素晴らしいシステムを持っています。これを工事現場に例えてみましょう。

ケガをして血管(壁)が壊れると、

①まず「血小板」という土嚢が積まれて応急処置をします。ちょっとした切り傷や擦り傷なら、これだけで血は止まります。

②しかし、これだけでは壁は脆いままです。そこで、「血液凝固因子」というセメントを流し込んで、がっちりと固めます。

血友病は、このセメント(凝固因子)の一部が生まれつき足りない、あるいはうまく働かない病気です。

不足するセメントの種類によって、大きく2つに分けられます。

  • 血友病A:第VIII(8)因子が不足している(全体の約80%)
  • 血友病B:第IX(9)因子が不足している(全体の約20%)

土嚢(血小板)は正常に働くため、「紙で指を切った」ような浅い傷の血はすぐに止まります。血友病で問題になるのは、体の深い部分(関節や筋肉)での出血なのです。

2. どのくらいの確率で起こる?

血友病は、性染色体である「X染色体」の遺伝子の変化によって起こる「X連鎖潜性遺伝(伴性劣性遺伝)」という遺伝形式をとります。

男の子は「XY」、女の子は「XX」という染色体を持っています。

男の子の場合、お母さんから受け継いだ1つのX染色体に変化があると、そのまま発症します。そのため、患者さんのほとんどは男の子です。

  • 血友病A:男児の約5,000〜10,000人に1人
  • 血友病B:男児の約3万人に1人

💡 小児科医から一番伝えたいこと

血友病と診断されると、「私の家系にそんな人はいない」「私の遺伝のせいで…」とご自身を責めてしまうお母さんが非常に多いです。

しかし、実は患者さんの約3割は、ご家族に全く血友病の方がいない「突然変異(孤発例)」で発症します。つまり、どの男の子にも等しく起こり得る病気なのです。決して誰かのせいではありません。

3. 見逃さないで!年齢別の「初期サイン」

血友病は、凝固因子が「どれくらい残っているか(活性値)」によって、

・重症(1%未満)

・中等症(1〜5%)

・軽症(5〜40%)

に分かれます。重症度が異なれば、症状が出るタイミングも違います。

日常の中で見逃したくないサインを年齢別にまとめました。

新生児期〜乳児期(ハイハイ・つかまり立ちまで)

かかとの採血や予防接種のあと、血が止まりにくかったり、しこり(血腫)ができたりする。

おしりや太ももに、硬く盛り上がった大きな青あざができる(通常のあざは平らです)。

幼児期以降(歩き・走り始め)

活動量が増えると、「関節内出血」や「筋肉内出血」が起こりやすくなります。これが血友病の最も特徴的な症状です。

  • ひざ、足首、ひじが腫れて熱を持っている。
  • 痛がって歩かない、足を引きずる、ハイハイに戻ってしまう。
  • 腕を動かそうとしない(おもちゃを取ろうとしない)。

単なる「すねの青あざ」は元気な証拠であることが多いですが、

「関節が腫れる」

「痛くて動かせない」場合は、すぐに小児科を受診してください。

4. 診断までのステップ

「血友病かもしれない」と疑った場合、血液検査で順を追って確認していきます。

1.スクリーニング検査(APTTの測定):血液が固まる時間を調べます。

まず一般的な採血を行い、「APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)」という項目を見ます。血友病の場合、血液が固まるまでの時間が通常よりも長く延長します。

2.凝固因子活性の測定:AかBか、重症度を確定します。

APTTの延長が見られたら、第VIII因子(血友病A)と第IX因子(血友病B)の働き(活性パーセンテージ)を具体的に測ります。これで診断と重症度が確定します。

3.遺伝子検査(必要に応じて):より詳細な治療方針のために。

確定診断後、より正確な病型の把握や、将来の家族計画(遺伝カウンセリング)のサポートのために、ご家族と相談の上で遺伝子検査を行うことがあります。

5. 定期補充療法

昔は「出血したら病院に行って点滴をする(オンデマンド療法)」しかありませんでした。

しかし、関節内で出血を繰り返すと、関節が変形して車椅子生活になる

「血友病性関節症」という後遺症を残してしまいます。

そこで今の世界的な常識は、「出血する前にお薬を入れて、常にバリアを張っておく(定期補充療法)」です。

さらに近年、このお薬がとんでもない速度で進化を遂げています。

① 凝固因子製剤(足りないセメントを直接補う)

静脈への注射(点滴)で直接因子を補います。おうちで保護者の方が注射を行う「家庭療法(自己注射)」が基本です。

近年は、お薬が体内で長持ちする「半減期延長型製剤」が主流です。

血友病A

アドベイト、ノボエイト等に加え、イロクテイト、ジビイなどの延長型があります。さらに最近では、「オルツビーオ」という週1回の注射で健常な人に近い因子レベルを維持できる画期的なお薬も登場しました。

血友病B

アルプロリクス、イデルビオンなど。これらは効果が非常に長く、1〜2週間に1回の注射で済むようになっています。

② バイスペシフィック抗体製剤(血友病Aの革命的お薬)

近年、小児の血友病A治療を根底から変えたのが「エミシズマブ(商品名:ヘムライブラ)」という抗体医薬品です。

これは第VIII因子の「モノマネ」をして血を止めるお薬です。

静脈ではなく「皮下注射」でOK

予防接種のように腕やお腹にチクッとするだけで済むため、血管が細い赤ちゃんの負担が激減しました。

効果が圧倒的に長い

週1回〜最大4週間に1回の注射で、極めて高い出血予防効果を発揮します。

③ インヒビター(抗体)について:克服のために

治療を続ける中で、体が補充されたお薬を「異物」とみなし、効果を打ち消す抗体(=インヒビター)を作ってしまうことがあります。

昔はこれが最大の難関でしたが、今は「バイパス製剤(ファイバ、ノボセブン)」を用いたり、先述の「ヘムライブラ」(インヒビターがあっても効果を発揮します)を使ったりすることで、出血をしっかりコントロールできるようになりました。

おわりに:病気は「個性」の一つになる時代へ

「一生治らない病気です」と最初に告げられたとき、目の前が真っ暗にならない親御さんはいません。

しかし、強調させてください。

現在の血友病治療は、

「病気がない子たちと全く同じように、スポーツをして、学校に通い、夢を叶える」

ことを目標にし、そしてそれが十分に可能なレベルに達しています。

柔道やラグビーなど激しいコンタクトスポーツは避ける必要がありますが、水泳、野球、サッカー、テニスなど、多くのスポーツを楽しんでいる患者さんがたくさんいます。

大人向けには、一度の点滴で数年〜数十年効果が持続する可能性のある「遺伝子治療」もすでに実用化が始まっており、子どもたちが大人になる頃には、さらに夢のような治療が待っているはずです。

お子さんの「あざ」や「出血」で少しでも気になることがあれば、一人で抱え込まず、私たち小児科医に見せに来てください。お子さんの輝く未来を、医療の力で一緒に守っていきましょう!

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