・以前、ITP(免疫性血小板減少症)についてはブログにまとめたので、まずはそちらで症状や分類等の基本的事項を確認ください。
・また、難病情報センターの指定難病情報が最も詳細かつ明確に記載されているので、そちらも参照ください。
難病情報センター 指定難病63:https://www.nanbyou.or.jp/entry/303
・今回は、ITP診療で注意すべきポイント、鑑別疾患、保護者への説明についてなどの知識をUp-to-Dateしていきたいと思います。
最初に:「ITPを疑った場合に行うことは?」
・臨床上出血傾向があり、血液検査で血小板減少があれば、ITPを疑いますよね。その時、何をすれば良いのでしょうか?
出血状態の評価
・まずは、出血症状の程度を確認します。また患者の一般状態(バイタル含め)、活動性を確認します。
・ITPでは紫斑(点状出血、皮下出血)、鼻出血の頻度が高く、一般状態は比較的良好で活動レベルが保たれている場合が多いです。
問診事項
・発症前2-4週間の先行感染の有無
・直近1ヶ月ほどのワクチン接種について
→小児ITPの半数が感染、あるいはワクチン接種に引き続いて発症している。
診断:血液検査での確認事項
・紫斑や鼻出血がある、先行感染やワクチン接種があるなどの場合、ITPを疑い血液検査を行います。
血液検査
・血小板数が10万/µL未満であることがITPの診断に必須
末梢血塗抹標本
・他の血液成分(赤血球や白血球)に異常がないことを確認します
・ITPは通常、血小板成分「のみ」が低下します。
骨髄検査
・白血病や骨髄異形成症候群(MDS)などの疾患を除外するために行われますが、必須ではありません。
・ITPでは巨核球(血小板を産生する細胞)は正常または増加しています。
抗GPIIb/IIIa抗体検査
・この抗体が陽性であれば、ITPの可能性が高いとされます
網状血小板比率(RP%), 幼若血小板分画比率(IPF%)
・これらは幼若な血小板の割合を示し、ITPでは上昇していることが多いです。
トロンボポエチン(TPO)濃度
・ITPではTPO濃度は正常または軽度上昇にとどまります。再生不良性貧血などとの鑑別に有用です
診断での注意点
・以下のポイントに注意して、血液検査の評価を行います。
血小板減少:アーチファクト
・静脈採血に時間がかかったり、抗凝固薬の撹拌が不十分な場合、血液凝固により、
みかけ上の血小板数減少が生じてしまいます。
・採血実施者に採血の時の状況をきくこと、検査部に血小板凝固塊の有無をきくことが、
アーチファクト除外に役立ちます。
血小板のサイズ・形態の確認
・末梢血塗抹標本で、血小板形態観察と血小板サイズの目視の評価を行えます。
・平均血小板容積(MPV: mean platelet volume):正常範囲 7-12 fL
大型血小板:正常血小板の大きさの2倍程度(直径4μm)
巨大血小板:赤血球大(直径8μm)以上
・ITPでも10%以下の比率で大型血小板を認める場合もあるが、先天性の大型血小板異常症では大型血小板比率50%であり鑑別点となる
鑑別診断
・ITPは免疫学的病態を共通とする血小板減少症の多様な疾患群です。
・ITPの診断は除外診断であり、他の鑑別疾患についても知っておく必要があります。
・ITPの経過中に自己免疫疾患(二次性ITP)の症状や所見が徐々に顕在化する場合もあります
二次性ITP
・血小板減少をきたしうる免疫学的原因疾患が特定される場合
①全身性エリテマトーデス(SLE)およびその類縁疾患
②抗リン脂質抗体症候群
③Evans症候群
④リンパ増殖性疾患
⑤骨髄移植後合併症
⑥感染症(ピロリ菌やHIV)
その他の血小板減少症
血小板減少をきたしうる非免疫学的原因疾患が特定される場合
①新生児同種免疫性血小板減少症
②ITPの母体からの出生児
③ヘパリン起因性血小板減少症
④血栓性血小板減少症
⑤溶血性尿毒症症候群
⑥先天性血小板減少症
⑦Kasabach-Merritt症候群
治療
治療の目標
・血小板数を正常化させることが目的ではなく、出血リスクの軽減(Plt≧30,000/μL)と治療副作用の予防が目標です
・自然軽快する可能性もあり、時間とともに薬剤投与の軽減、休止が可能となることも多いです
内科的治療
免疫グロブリン静注療法(IVIG)およびステロイドが第一選択です
IVIG:Intravenous Immunoglobulin
投与量:0.4 g/kg/day, 2-5日間 or 0.8-1.9 g/kg/day 単回投与
・特に急激な出血リスクのある場合, 手術前などにはよく使用されます。
・短期間で効果を発揮し、急速に血小板数を増加させます。
ステロイド(PSL)
投与量:1-2 mg/kg, 2週間以内
・成人ITPにおいては最も一般的な初期治療法。プレドニゾロンが使用されることが多い
・免疫反応を抑制し、自己抗体による血小板破壊を抑える働きがある。
参考:日本血栓止血学会 ITPの診断と治療https://www.jsth.org/publications/pdf/tokusyu/19_2.199.2008.pdf
二次治療
・初期治療に反応しない場合や再発した場合には以下の治療法が考慮されます
トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)
・エルトロンボパグやロミプロスチムなどが使用され、骨髄での血小板産生を促進します。
リツキシマブ
・B細胞を標的とする免疫抑制薬であり、自己抗体産生を抑制します
外科的治療
脾摘(脾臓摘出術):脾臓は主な血小板破壊部位であるため、脾摘によって一部の患者で長期寛解が得られます。ただし、この手術は慎重に検討されるべきです
治療効果・血小板回復までの時間
・第一選択により治療効果(CR: Plt>100,000/μL)達成率は3ヶ月で約6割、6ヶ月で約8割
保護者への説明
・以下のポイントを明確に説明
経過観察の方針をとる場合
・一般状態が良好で、出血症状も軽微な場合、かつPlt≧20,000の場合は、自然軽快の可能性があるため短期間無治療経過観察の方針も選択肢です。
・しかし、もちろん出血リスクの説明と、保護者の同意は必要となります。
治療目標
・頭蓋内出血などの重篤な出血は1%未満と稀であることを説明の上、出血リスクを軽減するPlt≧30,000/μLと治療副作用の予防が目標であることを説明します
・また、出血リスクとなるような激しい運動の回避など、生活指導も行います
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