【小児科医blog:血液・腫瘍】小児の白血病について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:血液・腫瘍】小児の白血病について

腫瘍・がん

総論

・白血病は血液の悪性腫瘍です。

・進行の速さによって、「急性」白血病と「慢性白血病」に分類されます。

・また、白血病細胞の形質により「リンパ性」と「骨髄性」に分類されます。

・白血病は小児期の悪性腫瘍の約3分の1を占める最多の疾患であり、年間に約700名の新規患者が発生しています。その内、急性リンパ性白血病(ALL: acute lymphoblastic leukemia)が約70%、急性骨髄性白血病(AML: acute myeloid leukemia)が約20%を占め、その他まれなものとして系統不明な急性白血病(ALAL: acute leukemia of ambiguous lineage)や慢性骨髄性白血病(CML: chronic myeloid leukemia)、若年性骨髄単球性白血病(JMML: juvenile myelomonocytic leukemia)などがあります。

ALL

・骨髄中のリンパ芽球比率が有核細胞の25%以上を占める場合にALLと診断する

・ALLの約85-90%はB細胞性(B-ALL)であり、10-15%がT細胞性(T-ALL)です。

・細胞遺伝学的には, t(12;21) TEL-AML1/ETV6-RUNX1融合遺伝子高2倍体(high hyperdiploid:1細胞あたりの染色体本数が51本以上)陽性例が小児では多く、それぞれB-ALLの約20%を占めます。

・小児のBCP-ALLにみられる転座の中ではt(12;21)が最も頻度が高い。TEL-AML1はこの転座の結果生じる融合遺伝子です。TEL-AML1陽性例は予後良好です。

・逆に、成人で多いt(9;22) (q34;q11.2)/ BCR-ABL1(フィラデルフィア染色体:Ph)陽性ALLとの割合は5%未満と少ないです。BCP-ALLにおけるPh1陽性例は予後不良

※慢性骨髄性白血病ではPh染色体は95%と高頻度に認める。

・また、1歳未満の乳児例に限ると、約80%で染色体11q23上にあるKMT2A遺伝子の再構成を認めます。

AML

・骨髄中の骨髄芽球の割合が20%以上の場合に診断可能。

・ペルオキシダーゼ染色は陽性となります。

・代表的には、急性前骨髄性白血病(acute promyelocytic leukemia :APL)があり、骨髄塗抹標本では、比較的大型の幼若細胞が多数認められ、その中にアズール顆粒とAuer小体を多数認める。faggot body(Auer小体が束になったもの)も見られます。初発時にはDICを合併している頻度が高いです。治療としては、レチノインさんの誘導体を用いた分化誘導療法が行われます。

・ただし、t(8;21) (q22;q22) / RUNX1-RUNX1T1, inv (16) (p13.1q22) /CBFB-MYH11, t(15;17) (q22;q12)/ PML-αRAR融合遺伝子陽性例の場合は、芽球比率にかかわらず白血病と診断できる。

・上記のような代表的な反復性遺伝子異常を有するAMLの他、骨髄異型性変化を伴うAML。治療関連骨髄性腫瘍(他の癌腫に対する抗悪性腫瘍治療後に発生したAML)、骨髄肉腫(AML細胞が髄外に腫瘤性病変を形成する)、Down症候群関連骨髄性白血病(ML-DS: myeloid leukemia associated with Down syndrome)、その他のAMLなどがある。

病態・症状

・白血病の症状とは、「骨髄における芽球増殖に伴う造血障害」と、「芽球の髄外浸潤によるもの」に大別される。

造血障害

・造血障害では、貧血、血小板減少、正常白血球数の減少が生じる。

 →貧血が著明になれば、息切れや労作時呼吸苦が生じる。

 →好中球減少が生じれば、しばしば感染による発熱を生じる。発熱には腫瘍熱もある。

芽球の髄外浸潤

・芽球の髄外浸潤によってリンパ節腫脹、肝脾腫、中枢神経系(CNS)や精巣への浸潤、皮膚浸潤などが起こる。中枢神経浸潤では頭痛をきたします。骨髄での白血病細胞の急性増殖により、髄腔内圧の上昇をきたし、骨叩打痛や骨の自発痛を認めることがあります。

 ※肝脾腫は認める場合もありますが、初発症状として黄疸をきたすことは稀です。

予後因子

小児急性白血病(急性リンパ性白血病[ALL]および急性骨髄性白血病[AML])の予後因子は、治療方針や生存率に大きく影響を与える要素です。以下に主要な予後因子をまとめます。

急性リンパ性白血病(ALL)の予後因子

予後「良好」因子

  • 年齢: 3~9歳が最も良好な予後を示します。
  • 初診時の白血球数: 50,000/μL未満が良好。
  • 染色体異常:
    • t(12;21)(TEL-AML1/ETV6-RUNX1融合遺伝子)
    • 高二倍体(染色体数が51~65)
  • 中枢神経系浸潤の有無: 浸潤がない場合は良好。
  • 初期治療への反応性が高い場合:T細胞性ALLでは、年齢・白血球数の意義は低く、治療反応性の重要性が高い。

予後「不良」因子

  1. 年齢: 1歳未満または10歳以上。
  2. 初診時の白血球数: 50,000/μL以上。
  3. 染色体異常:
    • t(9;22)(フィラデルフィア染色体:Ph染色体)
    • t(4;11)(KMT2A-AF4融合遺伝子)
    • 低二倍体(染色体数が46未満)
  4. 中枢神経系への浸潤がある場合

急性骨髄性白血病(AML)の予後因子

予後良好因子:

  • 染色体異常:
    • t(8;21)(RUNX1-RUNX1T1融合遺伝子)
    • inv(16)またはt(16;16)(CBFB-MYH11融合遺伝子)
    • t(15;17)(APLに関連)
  • NPM1遺伝子変異(FLT3-ITD変異を伴わない場合)。
  • 初期治療への迅速な反応。

予後不良因子:

  • 染色体異常:
    • モノソミー7またはモノソミー5
    • FLT3-ITD遺伝子変異
    • DEK-NUP214融合遺伝子やMECOM関連異常
  • 初診時の白血球数: 100,000/μL以上
  • 治療抵抗性や再発例
  • 栄養状態不良や治療関連死のリスク

診断

確定診断

・急性白血病の診断は、穿刺吸引した骨髄液の塗抹標本において、有核細胞中に芽球が一定割合以上(原則, ALLは25%以上、AMLは20%以上)占めることを形態学的に証明して行う。

・芽球比率が低かった場合には、1-2週間の間隔をおいて繰り返し検査を行う必要がある。

病型診断

・白血病の病型診断には、塗抹標本の特殊染色が必要。

・一般的に、ALLはペルオキシダーゼ染色(POX)陰性、AMLでは陽性となる。しかし、AMLのでもPOX陰性となるものはある(FAB分類のM0, M5, M6, M7)。他、エステラーゼ染色が単球系AML(M4, M5)の診断に有用である

・細胞系列に特異的な細胞表面抗原あるいは細胞質内抗原を、フローサイトメトリーで検出する免疫診断が、白血病病型診断の重要なツールとなっている。B-ALLとT-ALLの鑑別、治療上ではリンパ腫に分類される成熟B細胞型ALLの診断、POX陰性AMLの各病型診断など、正確な病型診断には欠かせない。

・白血病細胞の遺伝子検査、染色体検査も重要。ALLやAMLの特有な遺伝子、染色体異常は予後と密接に関連し、再発リスクに応じた層別化治療に欠かせない情報である。またPh陽性であった場合には、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を用いた分子標的治療の適応になるなど、治療選択においても重要である。

診断のフローチャート

ALL

<1歳未満

MLL再構成(-):標準化学療法

MLL再構成(+):強化化学療法±同種造血幹細胞移植

≧1歳

標準リスク:標準化学療法

中間リスク:強化化学療法

高リスク:強化化学療法±同種造血幹細胞移植

AML

Down症AML

・強度を減弱した化学療法

APL

・ATRA+化学療法 または ATRA+ATO

AML(Down症、APLを除く)
低リスク:t(8;21)またはinv(16)

・標準化学療法

中間リスク:その他

・強化化学療法

高リスク:治療反応性不良または予後不良、染色体遺伝子異常

・強化化学療法+同種造血幹細胞移植

治療

・白血病治療の主体は多剤併用化学療法であり、複数の治療相に分けて実施する。

・最終的に患者の体内のすべての白血病細胞を排除することを目標にする(total cell kīll)

・加えて、既知の予後因子により再発リスクを評価し、それに基づく層別化治療を行う。

・現在、ALLでは約80%、AMLでは約70%の長期生存率が得られている。

抗白血病治療開始前の支持療法

・抗白血病治療開始前の患者は、白血病による造血障害、白血球増多症、腫瘍崩壊症候群などによる様々な症状を呈しており、これらに対して適切な支持療法の必要性がある。

輸血

・貧血や血小板減少症がある場合は輸血の適応となる。

・しかし、Hb≦5g/dL以下の高度な貧血がある場合、急激な赤血球輸血による補正を行ってはならない。このようなときは、初回輸血量は(Hb値)mL/kg/日、つまり4g/dLの貧血なら4mL/kg/日の輸血にとどめ、心不全の評価と対応を行いながらゆっくり輸血する。

白血球増多症(hyperleukocytosis)

・末梢血白血球数が10万/μL以上と定義される。

・腫瘍崩壊症候群や血栓、肺の循環障害による呼吸障害などのリスクとなる。

・治療は大量輸液を行いつつ、化学療法による腫瘍の減量をはかることが原則だが、ALLでは50万/μL以上、AMLでは30万/μL以上など高度の白血球増多を認める場合には、交換輸血や白血球除去を考慮する。

腫瘍崩壊症候群

・腫瘍な急激な崩壊に伴う腫瘍細胞内容物の遊出による、高尿酸血症、腎障害、高カリウム血症、高リン血症などをきたす病態。

・臨床的に最も問題になるのは高尿酸血症による腎障害。

・詳細は以前のブログ記事参照↓↓

発熱性好中球減少症

・高白血病治療開始前の発熱は腫瘍熱であることも多いが、末梢血好中球数500/μL以下の高度好中球減少状態にある患者の場合、oncologic emergencyとして、速やかに高緑膿菌スペクトラムをもつ広域抗菌薬(第4世代セフェムなど)を開始する。

ALLの治療

・代表的な処方例として、B-ALL標準リスク群/中間リスク群に対する標準治療の一つであるBFM(ドイツの臨床研究グループ)のALL2000プロトコールの治療スケジュールに準拠する。

寛解導入療法

・白血病を寛解(形態学的に白血病細胞を認めず、かつ正常造血の回復など白血病に起因する臨床症状や所見を認めない状態)になることを目的として行う。

プレドニゾロンまたはデキサメタゾン、ビンクリスチン、L-アスパラギナーゼ、アントラサイクリン系抗がん薬の4薬を中心に、4-6週間の治療を行う。

●BFM ALL200プロトコール 標準・中間リスク群

プレドニゾロン(p.o) 60 mg/㎡/日

 投与日:1-28

ビンクリスチン(i.v) 1.5mg/㎡/回(最大2mg)

 投与日:8, 15, 22, 29

ダウノルビシン(1時間i.v) 30mg/㎡/回

 投与日:8, 15, 22, 29

L-アスパラギナーゼ(1時間i.v) 5,000IU/㎡/回

 投与日:12, 15, 18, 21, 24, 27, 30, 33

メトトレキサート(i.t)  12 mg/回 ※3歳未満の場合、1回10mg(2歳)、8mg(1歳)

 投与日:1, 12, 33

強化療法

・寛解導入療法以降の治療相は、残存白血病をさらに減少させることを目的として行われる。

6-メルカプトプリン(6-MP)、シタラビン(Ara-C)、シクロホスファミド、大量メトトレキサート(MTX)療法などを用いる。

早期強化療法(IB)

シクロフォスファミド(1時間i.v)

 1,000mg/㎡/回

 投与日:36,64

シタラビン(i.v)

 75mg/㎡/回

 投与日:38-41, 45-48, 52-55, 30, 33

6-メルカプトプリン(p.o)

 60mg/㎡/日

 投与日:36-63

メトトレキサート(I.t)

 12mg/回

 投与日:45, 59

免疫療法

ブリナツモマブ(BLIN)

・再発性、もしくは難治性のALLに有効

Treg細胞比率の低い症例で感受性高い

・白血病細胞のPD~L1発現も感受性に影響あり(CD4・8ともに)。

・BLIN治療後の再発は、CD19陰性の割合が高い方が、再発リスク高い。治療中、治療後のCD19遺伝子の獲得変異が影響あり。これは、BLINに対してnon-responderとなり治療耐性を生じるためである。

・免疫療法後のLineage Switch(ALL→AML)の報告例あり。

・CD58loss症例も、薬剤耐性に影響あり。これは、BCP~ALL細胞に発現するCD58がT細胞のCD2と結合するためである。

イノツズマブオゾガマシイン(InO)

適応;再発または難治性のCD22陽性小児ALL

・ITCC−059 studyでは、寛解例のMRD陰性化率は84%

感受性規定因子

・P~glycoprotein(P~gp):Pーgp高発現ではInO耐性に影響する

・Calicheamicin:ITCC-059試験では、寛解・MRD陰性例ではCalicheamicinの影響あり

・CD22細胞表面発現レベルが感受性に影響あり。

CNS予防治療

・脳血液関門より聖域となっているCNSからの白血病再発を防ぐ目的で、各治療相においてMTX、Ara−Cなどの髄注を複数回行う。

・一部のCNS再発リスクが非常に高い患者においては放射線の全脳照射を行うが、晩期合併症の問題から、その適応は縮小されている。

維持療法

・通常、経口の抗がん薬(6-MP, MTX)により外来で1-2年かけて行う。

・寛解導入療法から維持療法まで、全治療期間が計2-3年に渡る。

6-メルカプトプリン(p.o)

 50 mg/㎡/日

 投与日:毎日(104週まで)

メトトレキサート(p.o)

 20mg/回

 投与日:週1回(104週まで)

AMLの治療

・治療の中心は、Ara−Cとアントラサイクリン系抗がん薬であるが、小児AMLではさらにエトポシドを併用することが多い。

・上記3つの薬を用いた寛解導入療法と大量Ara-C療法を含む強化療法を計4~5コース程度行うのが標準的。

・代表的な処方例として、日本小児がん研究グループ血液腫瘍分化会(JPLSG)のAML-05プロトコール中間リスク群の治療スケジュールを参考とする。

・APLでは、AML型多剤併用化学療法に加えて、全トランスレチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法を併用する。ATRAに、同じく分化誘導効果のある三酸化ヒ素(ATO: arsenictrioxide)を併用した治療を行うこともある。

●JPLSG AML-05プロトコール 中間リスク群

寛解導入療法(ECM)

・エトポシド(2時間i.v)

 150 mg/㎡/回

 投与日:1~5

・シタラビン(12時間i.v)

 200mg/㎡/回 

 投与日:6-12

・ミトキサントロン(1時間i.v)

 5mg/㎡/回

 投与日:6-10

・メトトレキサート/シタラビン/ヒドロコルチゾン(i.t)

 1回12mg/30mg/25 mg

 投与日:6

寛解導入療法2(HCEI)

・シタラビン(3時間i.v)

 3g/㎡/回(12時間おき)

 投与日:1~3

・エトポシド(2時間i.v)

 100 mg/㎡/回

 投与日:1~5

・イダルビシン(1時間i.v)

 10mg/㎡/日

 投与日:1

・メトトレキサート/シタラビン/ヒドロコルチゾン(i.t)

 1回12mg/30mg/25 mg

 投与日:1

強化療法1(HCM)

・シタラビン(3時間i.v)

 2 g/㎡/回(12時間おき) 

 投与日:1-3

・ミトキサントロン(1時間i.v)

 5mg/㎡/回

 投与日:1-3

・メトトレキサート/シタラビン/ヒドロコルチゾン(i.t)

 1回12mg/30mg/25 mg

 投与日:1

強化療法2(HCEI)

・シタラビン(3時間i.v)

 3 g/㎡/回(12時間おき) 

 投与日:1-3

・エトポシド(2時間i.v)

 100 mg/㎡/回

 投与日:1~5

・イダルビシン(1時間i.v)

 10 mg/㎡/回

 投与日:1

・メトトレキサート/シタラビン/ヒドロコルチゾン(i.t)

 1回12mg/30mg/25 mg

 投与日:1

強化療法3(HCM)

・シタラビン(3時間i.v)

 2 g/㎡/回(12時間おき) 

 投与日:1-5

・ミトキサントロン(1時間i.v)

 5mg/㎡/回

 投与日:1-3

・メトトレキサート/シタラビン/ヒドロコルチゾン(i.t)

 1回12mg/30mg/25 mg

 投与日:1

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