【小児科医blog:血液・腫瘍】腫瘍崩壊症候群(TLS)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:血液・腫瘍】腫瘍崩壊症候群(TLS)について

腫瘍・がん

腫瘍崩壊症候群 TLS:tumor lysis syndrome

総論

・小児がん救急疾患の中で、代謝異常による病態として代表的な病態である、腫瘍崩壊症候群(TLS)についてまとめます。

定義

・腫瘍崩壊症候群(TLS)は、腫瘍の急速な崩壊に伴い、核酸、タンパク質、P(リン)、K(カリウム)などの細胞内物質が身体の処理能力を超えて大量に放出されることで起こる代謝異常である

・高K血症による不整脈、尿酸およびリン酸カルシウムが腎尿細管で結晶化することで引き起こされうr急性腎不全は致死的となりうる。

・通常、治療開始後12-72時間でみられますが、増殖が早い疾患では治療開始前からTLSが見られることもあります。血液疾患、特に急性リンパ性白血病やリンパ腫の治療開始時に見られることが多い。

TLS診断基準

・TLSはLaboratory TLS、clinical TLSの2つに大別される。

・Cairo/Bishopらによる分類が用いられている。

laboratory TLS(LTLS)

以下の臨床検査異常値のうち2個以上が化学療法開始3日前から開始7日後までに認められる。

・高尿酸血症

  基準値:8mg/dLまたは467μmol/L以上

  ベースラインからの変化:25%異常の増加

・高カリウム血症

  基準値:6mEq/Lまたは6.0mmol/L以上

  ベースラインからの変化:25%異常の増加

・高リン血症

  基準値(小児):6.5mg/dLまたは2.1mmol/L以上

 基準値(成人):4.5mg/dLまたは1.45mmol/L以上

  ベースラインからの変化:25%異常の増加

・低カルシウム血症

  基準値:7.0mg/dL以下または1.7mmol/L

  ベースラインからの変化:25%異常の減少

clinical TLS(CTLS)

laboratory TLSに加えて、以下のいずれかの臨床症状を伴う

・腎機能:血清クレアチニン>正常上限の1.5倍

・不整脈、突然死

・けいれん

病態

・急速に放出される核酸、リン、カリウムなどにより高尿酸血症、低カルシウム血症を併発した高リン血症、高カリウム血症をきたし、その結果として腎不全、不整脈、けいれんを起こし致命的な状態となる場合がある。

・TLSの症状は、がん診断時または治療開始12-72時間以内に発症し、積極的な管理を必要とする。

・治療開始後2日以内にTLSが発症しない場合、TLSは回避できているを考えられている。

高尿酸血症

・腫瘍細胞から放出された核酸はヒポキサンチン、キサンチンを経て最終的に尿酸に代謝され、腎臓から排泄される。

・尿酸はpH低値で溶解度が低下する。腎遠位尿細管・集合管での尿pHはおよそ5であり、尿酸結石が析出することで腎機能障害、腎不全を引き起こす。

高リン血症

・正常細胞に比べて腫瘍細胞内のP濃度は高いため、高リン血症を起こしやすい。

・高尿酸血症から生じる腎障害によっても、高リン血症は助長される。

・悪心、嘔吐、下痢、倦怠感、けいれんなどの症状が見られる。

・腎尿細管でリン酸カルシウム塩が析出し、腎障害を引きおこす

高カリウム血症

・前述の高尿酸血症、高リン血症から腎機能障害を起こしている場合や、不用意にKを含む輸液を行う場合は重篤となる。

・不整脈、心室頻拍、心室細動、心停止、筋攣縮、異常感覚を起こす。

低カルシウム血症

・前述の高リン血症に伴って、二次性の低カルシウム血症となる。

・リン酸カルシウムの組織沈着、1,25-(OH)₂ビタミンDの産生抑制などが原因とされる。

・血漿Ca濃度(mg/dL)と血漿P濃度(mg/dL)の積が70を超えると組織に石灰化を生じるとされる。

・不整脈、低血圧、テタニー、筋緊張低下などの症状を起こす

腎障害

・主に尿酸結石が腎尿細管を閉塞することで起こる。

・リン酸カルシウム塩やキサンチン結石でも同様の機序で尿細管を閉塞する。

・腫瘍の腎浸潤、尿路閉塞、薬剤性腎障害が増悪因子となる。

疫学

・小児がんの場合、腫瘍の細胞増殖能が高く、また化学療法に対する感受性が高いためTLSを発症する危険性の高いがん種が多い。

・リスク性については以下のように分類される。

TLS発生危険率

・従来の抗癌薬治療に対するものであり、異なる作用機序をもつ分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった薬剤、CAR-T細胞療法など新規治療におけるTLS発症リスクとは異なる。

・固形腫瘍では10cm以上の巨大な腫瘤を伴うもの、神経芽腫や胚細胞腫瘍などの化学療法に感受性の高いものはIRDに分類し、それ以外はLRDに分類する。

・慢性骨髄性白血病の慢性期はLRDに分類する。

・TLSリスクの高い急性白血病やリンパ腫では治療を少量から開始し、経過を見ながら漸増していく。

低リスク疾患(LRD: low risk disease):TLS発生危険率1%未満

・Transformed マントル細胞リンパ腫芽球様バリアント

・未分化大細胞型リンパ腫(ALCL: anaplastic large cell lymphoma)Stage Ⅰ/Ⅱ

・神経芽腫、胚細胞腫以外の固形腫瘍

など

・通常の輸液を行い、慎重に経過を観察する

中等度リスク疾患(IRD: intermediate risk disease):1-5%

・急性リンパ性白血病 WBC<100,000/μL, LDH<正常上限の2倍の場合

・Burkittリンパ腫/白血病 リンパ芽球型 限局型 LDH<正常上限の2倍

・未文化大細胞リンパ腫 StageⅢ/Ⅳ

など

・大量輸液およびアロプリノール内服を行う

・ラスブリカーゼの単回投与を検討しても良い

高リスク疾患(HRD: high risk disease):5%以上

・急性リンパ性白血病 WBC≧100,000/μL

・Burkitt白血病

・急性骨髄性白血病 WBC ≧100,000

・Burkittリンパ腫/白血病 リンパ芽球型 進行期

など

・大量輸液(3000mL/㎡/day以上)に加えてラスブリカーゼを予防的に使用する

・集中治療室またはそれに準じた管理を行う

・十分な尿量が確保されてから治療を開始し、その後も尿量をモニタリングする

・治療開始後は4-6時間毎にLDH・尿酸・Cr・電解質を評価する。

診断・検査

・LRD、IRDに分類された場合は、腎機能障害によるリスクの再評価を定期的に行う必要がある。

・またTLS発症リスクの評価時には、同時にLaboratory TLSの基準を満たしていないかについても、繰り返し評価を行う。

・期間は最終の化学療法薬投与24時間後まで行うことが推奨されている。

治療・予後

①定期的なモニタリング

②十分な補液と十分な利尿

③尿酸対策

④電解質管理

⑤速やかな化学療法導入と化学療法の減弱

…など考慮することが管理上必要となる。

補液

・積極的な補液はTLSの予防および治療の基本。

・尿量を増加させることで尿酸、P、Kの排泄を促す。

・3000mL/㎡/day(体重10kg以下の児では200mL/kg/day)を目安に輸液を行う

・診断時に腎不全、乏尿となっている場合や心機能が低下している場合には要注意!

・尿量を厳密にモニタリングし、80-100mL/㎡/hour(体重10kg以下の児では4-6mL/kg/hour)を保つように適宜フロセミドなどの利尿薬も使用して良い。

・循環血漿量低下時、尿路閉塞時の利尿薬の使用は慎重に行う。

・K、P、Caを含まない輸液を使用すること。

尿酸対策

・尿酸生成阻害薬であるアロプリノール、フェブキソスタットは、厳密には小児適応を有していないが使われている。

アロプリノール(ザイロリック、アロシトール)

投与量:10mg/kg 分3 内服

※腎機能障害がある場合、50%減量して使用する。

・キサンチンアナログであり、キサンチンオキシダーゼを競合阻害することでキサンチン・ヒポキサンチンから尿酸への代謝を阻害する。

・尿酸の新規生成を阻害する作用のため、尿酸値が低下するまでに時間を要する。

・治療開始前に高尿酸血症(7.5mg/dL以上)がある場合は、ラスブリカーゼの使用が望ましい

・単施設の前向き研究で、アロプリノール300mg/㎡/日、フェブキソスタット10mg/日を5-15歳のLaboratory, clinical TLSの基準を満たしていない小児造血器腫瘍患者に投与したところ、フェブキソスタット群の患者で優位に投与2日目の血清尿酸値の低下と、尿中尿酸/クレアチニン比の減少を認めたと報告されている。

ラスブリカーゼ(ラスリテック)

用量:0.15-0.2 mg/kg 1日1回、30分以上かけて点滴静注

副作用:アナフィラキシー、皮疹、溶血性貧血、メトヘモグロビン血症、発熱、白血球減少、呼吸障害

・遺伝子組み換え型尿酸オキシダーゼであり、産生された尿酸を水溶性のアラントインに変化させる。

・ラスブリカーゼの使用により80-90%の患者が4時間以内に尿酸値の低下が得られる(アロプリノールでは10-20%)

・グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)異常症の患者では溶血性貧血を起こすため投与は慎重に

・また、ラスブリカーゼは遺伝子組み替え型尿酸オキシダーゼであり、尿酸を直接分解することにより血中尿酸濃度を急速に低下させる。Laboratory, clinical TLSの基準を満たしていない小児造血器腫瘍患者では、TLSはラスブリカーゼ0.2mg/kg単回投与で十分であると示された例もある。

電解質管理

・腎機能代行療法は、持続する高カリウム血症、重症代謝性アシドーシス、利尿薬に反応しない容量負荷、、心外膜炎や脳漿など尿毒症症状出現時に行う。

・予防的な腎機能代行療法導入基準としては、重篤かつ進行性の高リン酸血症(>6mg/dL)、重篤な症候性低カルシウム血症がある。

高リン血症

・キレート剤を使用する

・重症例では血液浄化が必要

セベラマ−塩酸塩(レナジェル)

用量:15-50 mg/kg 分3-4 内服

水酸化アルミニウム(アルミゲル)

用量:50-150 mg/kg 分3-4 内服

高カリウム血症

・心電図モニタリングは必須である。

・TLSリスクのある状態ではKを含まない輸液を用い、Kの経口摂取も可能な範囲で制限する。

・軽症例ではカリウムキレート剤を使用する。

・血清K濃度が7.0 mEq/Lを超えた場合や、心電図異常がみられた場合は血液浄化含め迅速な対応。

ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート)

用量:1g/kg  内服または挿肛(好中球減少期は避ける)

グルコースインスリン療法

速攻型インスリン 0.1 U/kg + 25%ブドウ糖液 2mL/kg 緩徐に静注

炭酸水素ナトリウム(メイロン)

用量:1-2 mEq/kg 静注

グルコン酸カルシウム(カルチコール)

用量:100-200 mg/kg(1.2-2.4mL/kg) 緩徐に静注

低カルシウム血症

・高リン血症存在化でCaを投与するとリン酸カルシウム塩による腎障害の危険性があるため、無症状時は介入を行わない。

・有症状のみグルコン酸カルシウムを心電図モニタリング下に使用。

グルコン酸カルシウム(カルチコール)

用量:50-100 mg/kg(0.6-1.2mL/kg) 緩徐に静注

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