【小児科医🍎Blog】網膜芽細胞腫(retinoblastoma):スマホの写真を見直してみて。赤ちゃんの「瞳が白く光る」サイン | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医🍎Blog】網膜芽細胞腫(retinoblastoma):スマホの写真を見直してみて。赤ちゃんの「瞳が白く光る」サイン

腫瘍・がん


こんにちは!小児科医りんごです。

「ゆるっと小児科医ブログ」にお越しいただき、ありがとうございます。

突然ですが、皆さんのスマートフォンの写真フォルダには、お子さんの可愛い写真がたくさん保存されていると思います。その中で、「フラッシュをたいて撮った写真の、子どもの瞳(黒目)が白っぽく光っている」ことはありませんか?

実はそれ、ただの光の反射ではなく、「網膜芽細胞腫」という子どもの眼の病気のサインかもしれません。

今回は、パパ・ママに絶対に知っておいてほしい「網膜芽細胞腫」について、小児科専門医の視点で詳細かつ分かりやすく解説します。

この記事が、大切なお子さんの眼と未来を守る知識になれば嬉しいです。

総論, 疫学, 遺伝学

・網膜芽細胞腫(retinoblastoma)は、網膜前駆細胞に由来する小児悪性眼内腫瘍で、「診断時年齢、片眼・両眼性、腫瘍進展度、遺伝学的背景」により治療と予後が異なる。

・早期診断と眼球外進展の予防が重要である。

・発症頻度:出生約15,000~20,000人に1例

・両眼性・遺伝性:通常1歳未満。片眼性・非遺伝性:通常2~3歳

参考)Indian J Ophthalmol. 2024 May 24;72(6):778–788.

Retinoblastoma – A comprehensive review, update and recent advances

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RB1遺伝子の両アレル不活化

・生殖細胞系列RB1病的バリアントでは、両眼性・多発性・若年発症が多い

・遺伝性例では、将来の二次悪性腫瘍、特に骨・軟部肉腫、脳腫瘍、皮膚悪性黒色腫のリスクが上昇する。

まず確認して!見逃してはいけない2つの「初期サイン」

赤ちゃんは「目が見えにくい」と自分から言葉で伝えることができません。そのため、日常の中でご家族が気づく「ちょっとした違和感」が、早期発見の最大のカギとなります。

① 白色瞳孔(はくしょくどうこう):leukocoria

最も多い初期症状です。暗い部屋やフラッシュを使って写真を撮った際、本来なら赤や黒に写るはずの瞳(瞳孔)が、白や黄色に光って見える現象です。

これは、眼の奥にできた白っぽい腫瘍に光が反射しているために起こります。昔から「猫の目」のように見えると表現されることもあります。

② 斜視(しゃし)

腫瘍が視界の中心部(黄斑)を遮ることで、その眼の視力が落ちてしまいます。すると、物を見ようとしてもピントが合わず、片方の眼の視線が内側や外側へズレてしまう「斜視」が現れることがあります。

その他

他にも、下記の症状が認められる場合があります。

眼球発赤・疼痛緑内障、前房出血、腫瘍壊死など進行例でみられる
視力低下年少児では評価困難な場合がある
眼球突出視神経・眼窩進展を示唆する進行所見

💡 +α:何かおかしいと思ったら、「まず」」どうすれば良い?

「写真の目が白く光った気がする」「最近、少し視線が合いにくい」と感じたら、まずは慌てずにスマートフォンでその状態の写真を撮ってみてください。そして、その写真を持って速やかに小児科または眼科を受診しましょう。

2. 網膜芽細胞腫ってどんな病気?(疫学と原因)

網膜芽細胞腫は、眼の奥にあるスクリーン(網膜)の細胞から発生する、小児がんの一種です。

どのくらい起きるの?(発症頻度)

・およそ15,000人〜20,000人に1人の割合で発症します。

・日本国内では1年間に70〜80人ほどの赤ちゃんが診断されており、小児の眼の悪性腫瘍としては最も代表的なものです。

何歳くらいでわかるの?(好発年齢)

・患者さんの約95%が5歳以下で診断されます。特に生後数ヶ月から2歳頃までに見つかるケースが大半です。

なぜ起きるの?(原因と遺伝)

・細胞の増殖を抑える「RB1遺伝子」という遺伝子に変異が起こることが原因です。

非遺伝性(約60〜70%)

・ 突然変異によるもので、片眼のみに発症します。

・2~3歳に多い。

●遺伝性(約30〜40%)

・ 両眼に発症することが多く、親から受け継ぐ場合と、卵子や精子が作られる段階で新たに変化が起きる場合があります。

・遺伝性が疑われる場合は、ご家族への「遺伝カウンセリング」も重要なサポートとなります。

・1歳未満に多い。

診断のための検査

病院で網膜芽細胞腫が疑われた場合、小児科と眼科が連携して検査を進めます。

ここで非常に重要な医学的ポイントがあります。それは、「針を刺して組織を採る検査(生検)は絶対に行わない」ということです。眼球に針を刺すと、そこから腫瘍細胞が眼球の外へばらまかれてしまう危険があるためです。

そのため、以下の画像検査などを組み合わせて慎重に診断を下します。

検査の種類検査の目的と特徴
眼底検査眼の奥を直接覗いて腫瘍を確認します。乳幼児は動いてしまうため、安全かつ正確に隅々まで観察できるよう、「全身麻酔下」で検査を行う場合もあります。
超音波検査(エコー)
眼球内の腫瘍の大きさ、この腫瘍に特有の
「石灰化(カルシウムの沈着)」があるかを確認します。痛みがなく安全な検査です。
MRI検査
腫瘍が視神経を伝って脳の方向へ向かっていないか、眼球の外へ広がっていないかを精密に調べます。視神経、脈絡膜、眼窩、松果体領域を評価する。
遺伝子検査
血液を用いてRB1遺伝子を調べます。治療方針の決定や、兄弟の発症リスクの評価に。RB1遺伝学的検査は、両眼性、多発性、若年発症例、家族歴例で特に重要。

病期・予後評価

  • 国際分類(International Classification of Retinoblastoma)では、眼球温存可能性を主にGroup A~Eで評価する
  • 国際網膜芽細胞腫病期分類では、眼球外進展、視神経断端、髄膜浸潤、遠隔転移を評価する

予後不良因子

  • 視神経後方断端陽性
  • 脈絡膜浸潤
  • 前房・虹彩浸潤
  • 大量の硝子体播種
  • 眼球外進展、遠隔転移

医療の進歩による「3つの目標」と最新の治療法

網膜芽細胞腫の治療には、明確な優先順位があります。

【第1目標】命を守る

【第2目標】眼球を残す(眼球温存)

【第3目標】視力を残す

昔は命を守るために眼球を取り除く手術が主流でしたが、現在は医療が大きく進歩し、命を守った上で「いかに眼球と視力を残すか」を目指す治療が主流になっています。

① 選択的眼動脈注化学療法(IAC)

太ももの付け根の血管から極細の管(カテーテル)を入れ、眼球に直接血液を送る「眼動脈」まで進めます。そこから直接、高濃度の抗がん剤を注入する画期的な治療法です。全身への副作用を抑えつつ、腫瘍を劇的に縮小させる効果があり、眼球を残せる確率が飛躍的に向上しました。

② 局所治療(レーザー治療・冷凍凝固療法)

腫瘍が小さい場合や、IACで小さくなった腫瘍の仕上げとして行われます。レーザーの熱や、マイナス数十度の冷気で、腫瘍細胞を直接破壊します。

③ 全身化学療法(点滴の抗がん剤)

腫瘍が非常に大きい場合や、遺伝性で両眼に腫瘍がある場合、全身の点滴から抗がん剤を投与して腫瘍を小さくします。

④ 眼球摘出術

腫瘍が眼球内に充満して視力の回復が全く見込めない場合や、腫瘍が眼球の外や脳へ広がる危険性が高い(命に関わる)と判断された場合には、最終手段として眼球を取り除く手術が行われます。これは、何よりもお子さんの命を確実に守るための最も確実な治療選択です。

おわりに:パパとママへのお願い

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

少し怖いお話も含まれていたかもしれませんが、一番お伝えしたいのは「網膜芽細胞腫は、早く見つけて治療を始めれば、決して治らない病気ではない」ということです。

日々の育児の中で、おむつを替えたり、離乳食を作ったりするのと同じくらい、「お子さんの写真を撮って見返すこと」が、病気の早期発見につながる立派な健康観察になります。

もし、この記事を読んで「あれ?」と思うことがあれば、迷わず専門機関へご相談ください。また、この知識が一人でも多くのご家族に届くよう、SNS等でシェアしていただけると小児科医としてとても嬉しいです。

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