【小児科医blog:血液・腫瘍】横紋筋肉腫(RMS)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:血液・腫瘍】横紋筋肉腫(RMS)について

腫瘍・がん

横紋筋肉腫:Rhabdomyosarcoma(RMS)

定義・疫学

・横紋筋肉腫(RMS)は、間葉組織に由来する骨格筋の形質を有する悪性腫瘍である。

・小児で最も頻度の高い悪性軟部腫瘍であり、発生頻度は本邦の学会登録では年間およそ50例

・2014年に設立された、日本小児がん研究フループ(Japan Children’s Cancer Group: JCCG)の横紋筋肉腫委員会により、多施設共同層別化治療研究JRS-Ⅱ臨床試験が実施されている。これは、低・中間リスク群では治療関連毒性を軽減した治療、高リスク群では新規治療開発へとつなげるより強度の高い治療による試験を行っている。

病因・病態

好発部位

・全身のどこにでも発生しうるが、頭頸部・・眼窩を含む(35-40%)、泌尿生殖器・・膀胱、前立腺、傍精巣、子宮、膣など(25%)、四肢(20%)原発が多い。

・しかし、後腹膜、体幹部など身体のあらゆる部位から発症する。

・腫瘍による正常臓器の圧迫や閉塞により、様々な症状を呈する。

組織型

・組織型として4つに分類される。胎児型、胞巣型(alveolar type)、紡錘細胞/硬化型、多形型である。

・小児では、主に胎児型と胞巣型の2つに分類されることが多い。

胞巣型

・四肢原発は胞巣型に多い。

・PAX3-FOXO1、PAX7-FOXO1融合遺伝子を有する例が多く、胞巣型の70-80%に当てはまる。

・予後は不良な場合が多いが、上記の融合遺伝子のない場合、予後は胎児型に類似しており、融合遺伝子を有する胞巣型症例よりも予後は良いとされる。

胎児型

・眼窩や泌尿器原発に多い。

・IGF-2(insulin-like growth factor2)やRAS遺伝子系活性化と関連あり。IGF-2遺伝子の存在する11p15のヘテロ接合性喪失(LOH: loss of heterozygosity)を認めるのが特徴。

・乳幼児発症の胎児型RMSでは、cancer predisposition syndrome(Li-Fraumeni症候群、Costello症候群、Noonan症状群、Beckwith-Widemann症候群など)との関連が示唆されており、家族歴に注意が必要である。

検査

・生検による確定診断、画像検査による病期診断が治療方針を決定するため、適切なタイミングで検査を行う。

・生検での病理検査の前に、まずは術前検査を実施する

術前検査

・RMSが疑われた場合、初回手術前に血液検査、尿検査、画像検査(CT, MRI, PET-CT, 骨シンチグラフィなど)、骨髄検査、髄液検査(傍髄膜症例)を行う。

・上記の検査は、原発部位、領域リンパ節転移、遠隔転移についての検索のためであり、RMSのステージ分類を決定するために重要である。また鑑別疾患の検査のための検体を採取することも忘れてはならない。

画像検査所見

・超音波検査では、頭頸部や四肢などの軟部腫瘤や腹部腫瘤の評価として第一選択になることが多い。不均一な内部エコーの充実性腫瘤として認められ、壊死や出血、嚢胞成分を混在することがある。

・MRI画像では、T1強調像で筋肉と比べて等~低信号、T2強調像で高信号を停止、腫瘍内の出血や壊死、嚢胞成分の混在により様々な内部信号を呈する。充実性成分は不均一な造影増強効果を示し、出血や壊死部は造影増強効果が乏しい。充実性成分は拡散制限を示すことがある。石灰化を伴うことは少ない。

・腫瘍な進展範囲や内部性状、隣接臓器との位置関係評価や、中枢神経系の評価にはMRI画像が優れる

・対して、骨の評価(破壊の有無)、肺転移の評価にはCT画像が優れる。

初回手術・病理診断

・確定診断のためには病理診断が必須。

・病理診断においては、横紋筋芽細胞が検体中に全くみられない横紋筋肉腫も存在するため、横紋筋分化を司る転写因子に対する抗体である、myogeninとmyogenic differentiation(MyoD1)の測定を行う必要がある。

・RMSの診断に役立つ免疫染色抗原としては、desmin、HHF-35など骨格筋由来抗原も挙げられる。

・また、先程記述したPAX3/7-FOXO1融合遺伝子に関しては、FISH法またはRT-PCR(reverse transcription PCR)による同定が重要である。

治療・予後

予後(生存率)

・リスク群毎に予後は異なる。低リスク群では85-90%、中間リスク群では55-80%、高リスク群では50%未満の全生存率である。

・高リスク群では治療の強化による生存率の改善が望まれる一方、低~中間リスク群では生存率の維持と晩期合併症の軽減と防止が次の目標となっている。

外科的治療

・化学療法開始前にgroupⅠ/Ⅱであることが分ければ、再手術で腫瘍の完全摘除が可能な場合、また再切除のために化学療法を猶予することげ転移性病変の出現リスクが高くないと判断された場合には、術後化学療法を行う前に、治療前再切除(PRE: pretreatment reexcision)を目指す。

・四肢原発腫瘍では、領域リンパ節への転移が多く、身体所見や画像所見で転移の所見がなくとも、領域リンパ節生検が推奨されている。

化学療法

・初診時に遠隔転移が認められず、原発腫瘍が全摘できた場合も含め、すべてのRMS症例には術後の化学療法が必須である。

低リスク群

・サブセットAとサブセットBに分けられる。

・特に予後良好なサブセットAに対しては、COG D9602試験を根拠としたVA療法(ビンクリスチン VCR:vincristine、アクチノマイシンD Act-D: actinomycin D)、またはCOG ARST0331試験を根拠としたVAC療法(VCR, Act-D, シクロフォスファミド CPA: cyclophosphamide)4サイクル→VA療法4サイクル、の2つが主な治療選択肢。

・サブセットBでは、D9602試験におけるVAC療法が標準的。

中間リスク群

・D9803試験を根拠とする、42週のVAC療法療法が確立したあと、CPAの総投与量低減を目指したVI療法(VCR, イリノテカン CPT-11)を組み込んだARST 0531試験が行われた。しかし局所再発率も高く、この中間リスク群での標準治療は確立していない。

高リスク群

・予後不良な群であるが、中でもOberlinリスク因子の4項目が予後不良因子として知られている

Oberlinリスク因子

①年齢:1歳未満、10歳以上

②予後不良部位原発:膀胱、前立腺、四肢、傍髄膜など

※逆に予後良好部位は、眼窩、膀胱・前立腺を除く泌尿生殖器、胆道、傍髄膜を除く頭頸部

③骨/骨髄転移

④3ヶ所以上の転移

ARST0431試験

・VAC療法に加えて、VI療法、VDC-IE療法(ビンクリスチンVCR, ドキソルビシンDXR, シクロフォスファミドCPA, イホスファミドIFO, エトポシドETP)を加えた長期多剤併用療法が試みられている。VDC療法とIE療法の2週間隔の交替療法にVIr療法やVAC療法を組み合わせた多剤併用化学療法である。

・治療開始後18ヶ月の無イベント生存率(EFS)は66%とこれまでにない良好な早期成績であったが、3年のEFSは38%とわずかな改善にとどまった。つまり、深い寛解を導入できるものの、治癒に至るには新規治療法の追加が必要であると考えられた。

・上記のOberlinのリスク因子で1点以下の症例では予後を改善した一方、2点以上該当する場合は症例の予後は改善率が低く、3年無イベント生存率(EFS)は20%であった。

・JRS-Ⅱ研究では、ARST0431治療骨格でドキソルビシンをピラルビシンに置き換えた寛解導入療法の検討も行われている。

・すでに化学療法の強度は最大限まで高められており、これ以上の古典的な抗がん薬の追加は現実的ではなく、異なる作用機序の薬物療法が地固め療法として望ましい。

・本邦では、高リスク群治療にて寛解後に、WT1ペプチドワクチンを投与することによる再発率の低減を目指した医師主導治験を実施されており、現在結果を解析中である。

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