総論
・脈管奇形(vascular malformations)は、血管やリンパ管などの異常な発達による先天性疾患です。乳児血管腫(IH: infantile hemangioma)などの脈管「腫瘍」は病理学的に細胞の増殖が主体ですが、脈管「奇形」は増殖の乏しい異常血管の増加です。
・これらは出生時に存在し、成長とともに症状が変化することがあります。分類には、高流速型病変(動静脈奇形など)と低流速型病変(静脈奇形、リンパ管奇形など, Slow-flow vascular malformations: SFVMs)が含まれます。
・SFVMsは腫瘤形成のみならず、Localized intravascular coagulopathy(LIC)という、局所の凝固カスケード亢進によるD~dimer上昇、Fibrinogen・血小板数の低下を引き起こすことがある。
・LICは、血栓や静脈石の形成だけでなく、出血や疼痛を起こし、患者のQOLを著しく低下させる。
分類
静脈奇形(Venous Malformations:VM)
・静脈系の異常で、青紫色の皮膚変化が特徴です。
局所性・単発
・(通常型)VM:大小の静脈の大嚢胞、小嚢胞(海綿状)が局所に起こる。
全身性
・青色ゴムまり様母斑症候群(Blue Rubber Bleb-Nerve syndromes: BRBNS):消化管、皮膚など全身にVMが起こる。
リンパ管奇形(Lymphatic Malformations:LM)
・リンパ液が溜まり、嚢胞状の腫瘤として現れます。
局所性・単発
・嚢胞性リンパ管種(cystic LM):大小のリンパ管の大嚢胞、小嚢胞(海綿状)が局所に起こる。
全身性
・複雑型リンパ管異常(リンパ管腫症、ゴーハム病、リンパ管拡張症) (complex lymphatic anomaly: CLA):全身性にリンパ管組織が増殖。胸水・腹水、脾臓病変、骨溶解などが起こる。
動静脈奇形(Arteriovenous Malformations)
高流量病変で、拍動性の腫瘤や皮膚温上昇を伴います。
原因・遺伝的背景
・脈管奇形は、多くの場合、胎児期における血管形成異常が原因です。
・一部は遺伝的要因に関連しており、以下のような遺伝子変異が関与することが知られています。
関連遺伝子
• RASA1遺伝子: 毛細血管-動静脈奇形症候群に関与。
• TEK遺伝子: 静脈奇形で頻出。
• PIK3CA遺伝子: CLOVES症候群やリンパ管奇形との関連。
参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26055853/
診断
・正確な診断は治療計画を立てる上で不可欠です。以下の診断方法が使用されます。
画像診断
• 超音波検査(Sonography): 病変の構造や血流を評価。
• MRI: 病変の範囲や周囲組織への影響を詳細に把握。
• CTスキャン: 骨や深部組織への浸潤を確認。
参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34836564/
臨床評価
・患者の年齢、病変部位、症状の進行度を考慮し、総合的な評価が必要です。
治療
・治療は病変の種類や重症度に応じて選択されます。また、近年では分子標的療法や低侵襲手術など、新しい治療法が注目されています。
参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21409475/
薬物療法
• シロリムス(mTOR阻害剤):リンパ管奇形や複雑な病変に有効。2024年1月に、SFVMsに対してラパリムス(錠・顆粒)が薬事承認された。
• プロプラノロール:一部の血管腫で使用される薬剤。
硬化療法
• 病変内に硬化剤を注入し、縮小を図ります。
外科的加療
• 病変が機能障害を引き起こす場合には切除手術が行われます。
放射線加療
• 高流量病変など、一部の難治性ケースで適用されます。
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