【小児科医blog:血液・腫瘍】発熱性好中球減少症(FN)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:血液・腫瘍】発熱性好中球減少症(FN)について

腫瘍・がん

FN:Fever and neutropenia

定義

・成人では、「好中球絶対数(ANC)が500/μL未満、あるいは1000/μL未満で次の48時間以内に500/μL未満に下がることが予想される状況で、口腔温で38.3℃を超えるもの、あるいは38.0以上が1時間以上持続するもの」とされている

・一方小児のFNは、海外では「ANCが500/μL未満で、口腔温で38.3℃以上を1回でも超えるもの、あるいは38.0℃を24時間以内に3回以上記録される」場合とされることが多い。

・口腔温測定が主流な海外と異なり、腋窩温の測定が主流な本邦では、小児のFNは「末梢血ANCが500/μL未満、または今後48時間以内に500/μL未満に減少することが予想される状態で、かつ腋窩温測定値で38.0℃以上に発熱した状態」と定義される。

高リスク

・100/μL未満の好中球減少

・高度な粘膜障害

・原疾患コントロール不良

・肺炎

・低血圧

・多臓器不全

初期評価

・初期評価として以下の項目が推奨されている

病歴・身体所見

・FN患者でも、呼吸症状(咳嗽、鼻汁)や腹部症状(腹痛、下痢)などの病歴や症状、周囲の感染状況などの一般的な問診を行う

・FNでは、化学療法に伴い口腔粘膜や腸管粘膜などの粘膜障害によって常在菌が血流内に入り、菌血症や真菌血症に至るとされている。

・皮膚の破綻により、蜂巣炎や膿瘍形成することもある。

血液検査

・血小板を含むCBC、白血球分画、凝固線溶系検査、血液生化学(腎・肝機能、電解質など)を評価することが推奨される。

・CRPPやプロカルシトニンなど炎症マーカーは細菌感染や真菌感染症の指標として良く用いられるが、感染早期には上昇しない場合がある。またプロカルシトニンはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌による菌血症では上昇しないことが知られている。

血液培養検査

・小児FNにおける菌血症の頻度は10-30%程度、低リスク患者では10%未満と低値。

・抗菌薬投与開始前にできる限り異なる部位から2セット採取する。CVが留置されている場合、すべての内腔から血液培養を採取する。

・口腔粘膜炎では、グラム陽性球菌(α溶血性連鎖球菌や嫌気性菌)が、腸管粘膜炎ではグラム陰性桿菌(腸内細菌や嫌気性菌)や腸球菌、カンジダなどが原因となりうる。

対応

  • 38℃以上の発熱又は37.5℃で1時間後の再検でも37.5℃の場合、Dr.コール。
  • まずはバイタルサイン、意識状態を確認する(特に拡張期血圧の低下に注意)。
    • もし崩れていれば即座にseptic shockの対応をする。
    • 安定していれば、バイタルのこまめな測定(血圧測定も)を指示する。
  • 血液培養(夜間でもその場で)およびプロカルシトニン・β-D-グルカン・エンドトキシン(夜間なら翌朝提出でも可)を提出する。
  • 状態が悪ければ、とにかく人員を集めることを考える。ICU管理が必要となる場合もあるため、初期対応を誤らないことが重要(最悪のケースを防ぐことが最優先)である。

状況により疑う原因

フラッシュした直後に高熱

・カテーテル感染

皮膚、軟部組織感染

・MRSA等のグラム陽性球菌

陰部周辺の感染

・緑膿菌

嘔吐を伴ったFN

・セレウス菌

過去のカテーテル感染、血液培養陽性

・同一起因菌

寛解導入中の真菌感染

・カンジダ

肝脾膿瘍

・カンジダ

施設敷地内の工事

・アスペルギルス

胸部CTでのHalo sign、Air-crescent sign

・アスペルギルス

10個以上の肺病変、副鼻腔炎、βDグルカン陰性

・ムコール

MCFGからのブレイクスルー

・トリコスポリン

・ムコール

・クリプトコッカス

VRCZからのブレイクスルー

・ムコール

抗菌薬や抗真菌薬が無効な発熱

・腫瘍熱

・薬剤熱

・骨髄回復に伴う高サイトカイン血症による発熱

治療(抗菌薬)

  • FNと判断した場合、速やかに抗菌薬投与を開始する。
  • 頻用されるのは、TAZ/PIPC(ゾシン®)。緑膿菌などのブドウ糖非発酵菌や腸内細菌といったグラム陰性桿菌による菌血症が多く、死亡率が高いため、抗緑膿菌作用のある薬剤を使用する。
  • MEPM(メロペン®)に変更や、MCFG(ファンガード®)やVCM(バンコマイシン)を追加することもある。近年、ペニシリン系に耐性を示すことも多く、バンコマイシンの使用例も多い。
  • 臨床的に不安定な場合や重症な場合、もしくは耐性菌の関与が疑われる場合はカルバペネム系抗菌薬(メロペネム、MEPM:メロペン)の投与も考慮する。
  • 完全には解熱していなくても、悪化傾向がなく、安定した全身状態の場合は、必ずしも抗菌薬の変更や追加をする必要性はない。

主な頻用薬

ペニシリン系

TAZ/PIPC(ゾシン®) 90mg/kg ×4回 +生食20mL 30分でdiv

   ※225〜360mg/kg(1日成人用量:9-18g)

・ESBL、AmpC誘導耐性菌には注意を要する。

セファロスポリン系

CFPM(マキシピーム®)

・ESBL産生菌には無効、セフェピムはAmpC誘導耐性菌に使用可能、しかし本邦では小児のFNに対する保険適応なし

抗MRSA薬

VCM(バンコマイシン) 30‐40mg/kg/day(分3) +生食20~40mL 1時間でdiv

 ※1日成人用量:2g

・グラム陽性菌にのみ有効(MRSA、MRCNS、PRSPに適応あり)

・血中濃度のモニタリング必要

・腎機能障害をきたす懸念あり

・アミノグリコシド、L-AMB、フロセミド、シクロスポリン、プラチナ系抗がん薬との併用に注意する。

その他

FMOX(フルマリン®) 100mg/kg/day(分3) +生食5mL ゆっくりiv

MINO(ミノサイクリン) 4mg/kg/day(分2) +生食20~40mL 1時間でdiv

CZOP(ファーストシン®) 40mg/kg ×4回 静注用バッグ 1時間でdiv

MCFG(ファンガード®) 1mg/kg/day(分1) +生食20mL 1時間でdiv

  • 重症感染症として、グロブリン製剤を投与することもある。
  • もし投与する場合、献血ヴェノグロブリンIH 5% 200~300mg/kg ×3日間

抗菌薬投与終了の目安

・感染源が不明な場合は、血液培養が48時間陰性であれば、少なくとも24時間以上解熱が得られ、かつ骨髄が回復(ANCが500/μL以上)していれば安全に抗菌薬を終了できるとされている。

・感染源が明らかな場合は、上記を満たし、かつ感染臓器ごとの推奨治療期間を超えていることが必要となる。

治療(G-CSF製剤)

・一次、二次的予防的投与がある

一次予防的投与

・FNのリスクが高い患者には、好中球減少前からの投与が推奨される。

二次予防的投与

・抗がん薬の減量やスケジュール変更を行うことが望ましくない患者において、前コースでFNを認めた場合、次コース以降で予防的投与を考慮する。

治療的投与

・10日以上の好中球減少症と好中球数100/μL以下へ低下が予想される患者、肺炎や敗血症、侵襲性真菌感染症の患者には、治療的投与が推奨。

フィルグラスチム

急性白血病 

 点滴静注:200μg/㎡、皮下注100μg/㎡

悪性リンパ腫、他のがん

 点滴静注:100μg/㎡、皮下注50μg/㎡ 

造血細胞移植

 点滴静注:300μg/㎡

レノグラスチム

急性白血病

 点滴静注:5μg/kg、皮下注2μg/kg

悪性リンパ腫、他のがん

 点滴静注:5μg/kg、皮下注2μg/kg

造血細胞移植

 点滴静注:5μg/kg

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