総論
・遺伝性球状赤血球症(HS)は、赤血球膜の構造異常によって引き起こされる遺伝性の溶血性貧血です。
・この疾患では、赤血球が通常の両凹円盤状ではなく、球状に変形するため、脾臓で破壊されやすくなります。その結果、貧血や黄疸、脾腫などの症状が現れます。
原因
・HSは、赤血球膜タンパク質をコードする遺伝子(ANK1、SPTA1、SPTB、SLC4A1、EPB42)の変異が原因です。この変異により、赤血球膜の柔軟性や安定性が低下し、形態が変化します。
- 主な関連タンパク質とその役割

これらの異常により、赤血球は脾臓で捕捉されやすくなり、早期に破壊されます。
主な症状
HSの症状は個人差がありますが、以下が一般的です。
- 貧血:慢性的な溶血によるもの。疲労感や息切れを伴うことが多い。
- 黄疸:溶血によるビリルビン増加が原因。
- 脾腫:脾臓で異常赤血球が破壊されるため。
- 胆石:長期間にわたるビリルビン増加によるビリルビン結石形成。
また、小児期に重度の貧血や黄疸で診断される重症例もあれば、成人期まで診断されない軽症例もあります。
診断方法
HSの診断には以下の検査が用いられます。
- 末梢血塗抹標本:小型で濃縮された赤血球(球状赤血球)の確認。
- 浸透圧脆弱性試験:赤血球膜の脆弱性を評価。
- 直接抗グロブリン試験(Coombs試験):陰性であることが特徴。
- 遺伝子解析:確定診断には遺伝子変異の特定が有効。
治療法
1. 脾臓摘出術
HSにおける最も効果的な治療法です。摘脾により溶血が大幅に軽減し、貧血や黄疸も改善します。ただし、小児の場合は感染リスクを考慮し、学齢期以降に手術を行うことが推奨されます。
2. 支持療法
- 葉酸補充:代償的造血をサポート。
- 輸血:重度の貧血時に行われます。
3. 胆石合併例への対応
胆石を伴う場合は胆嚢摘出術を同時に行うことがあります。
予後と生活上の注意点
HSは適切な治療と管理で良好な予後が期待できます。しかし、小児期に摘脾を行った場合は感染症リスクが高まるため、以下の対策が重要です。
- 肺炎球菌ワクチンやインフルエンザ菌B型ワクチン接種。
- 感染予防として抗生物質の予防投与。
最新研究と今後の展望
近年では次世代シークエンサーによる遺伝子解析技術が進歩し、新規変異の発見や診断精度向上に寄与しています。また、新しい治療法として分子標的薬や遺伝子治療も研究されています
参考文献
- https://www.shouman.jp/disease/details/09_08_011
- Nathan & Oski’s Hematology of infancy and childhood 6th edition
- 小児疾患診療のための病態生理(第4版)
- 別冊日本臨床 血液症候群(第2版)2013


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