【小児科医blog:循環器】心室期外収縮(premature ventricular contraction:PVC)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:循環器】心室期外収縮(premature ventricular contraction:PVC)について

循環器
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総論

・心室期外収縮 (premature ventricular contraction: PVC) は、学校検診で最も多く同定される心電図異常の1つです。

・多くの場合は無症状で、学校検診で指摘されることが多いです。ほとんどは良性で運動制限は不要ですが、一部には致死性不整脈を惹起するものや、PVC誘発性心筋症の原因となるもの、さらには心筋症の病初期であるものである場合があります。

・PVCが同定された場合、抽出区分はA群 (二次以降の検診に抽出) に分類され、心筋症や致死性不整脈起の可能性が示唆される所見を認めた場合に速やかに精密検査を考慮します。

・二次検診以降の精密検査として、運動負荷心電図、ホルター心電図、心エコー検査、血液検査があります。

・鑑別疾患として、malignant PVC、PVC誘発性心筋症、不整脈源性右室心筋症、チャネル病、運動誘発などがあります。

・良性例と診断された場合でも、高頻度、多形性、運動誘発性 (抑制されない) など、懸念される所見がある場合は経過観察を継続する必要性があります。

・心室期外収縮 (premature ventricular contraction: PVC) は、学校検診で最も多く同定される心電図異常の1つです。

心電図所見

PVCの心電図

・PVCは、心室起源の早いタイミング (期外) で起こるリズム (収縮) です。心電図では、「P波を伴わず、調律時のRRより短い間隔」、QRS波形は通常、調律時のものよりも幅広くなります。

心室補充調律の心電図

・PVCと誤って認識されることがあるが、両者は発生する機序や、鑑別する疾患群が異なるため、正確に診断されるべきです。

・心室補充調律は、心室起源ですが、調律が遅いまたは房室ブロックのため、心室調律非選択性、P波を伴わない、調律時のRRより長い間隔 (補充収縮) を呈します。

促進性心室固有調律 (AIVR) の心電図

・心室筋の自動能が、調律よりも少しだけ早めに起こります。

・頻拍時の拍数が多い心室頻拍 (slow VT) との鑑別が必要となりますが、促進性心室固有調律 (accelerated idioventricular rhythm:AIVR)は、①単形性であること、②wide QRS rhytumの隣の心拍数が洞調律の110-150%以内であること(通常120bpm以下)、③自己QRSとの融合波形が見られること、④運動などにより洞調律の心拍数が上昇すると消失することが特徴となります。

学校検診抽出基準:要精査基準


・多形性心室期外収縮 :心室期外収縮の波形が多形性の場合
・2連発以上の心室期外収縮 :心室期外収縮が2連発以上で出現する場合
・R on T型心室期外収縮 :心室期外収縮がR on T型を示す場合
・後続心拍にT波異常を伴う心室期外収縮 :心室期外収縮が心拍にT波の異常所見を伴う場合
・心室頻拍:多形性心室頻拍を含む

二次検診以降で施行すべき検査

二次検診で、高頻度、多形性、運動で抑制されない、連発を認めるなどの所見 がみられる時には、さらなる精査が必要である。

注意を要するPVCの特徴

Non-benign PVCの可能性のある所見には、特に注意を要する。

・頻発するもの
・Complex PVCs (2連発、3連発、非持続性心室頻拍)
・多形性
・運動誘発性 (または運動で抑制されない)

・洞房解離/洞室起源
・Coupling intervalの短いもの (R on T)
・QRS幅の広いPVC

12誘導心電図


・12誘導心電図で、PVCが単形性か多形性の判定や、PVC起源の推定を測ります。

・しかし、それだけでなく、洞調律のQRS波形、ST-T変化は、心筋症の有無や心室負荷の程度を判定するため重要な検査となります。

・PVCが頻発している場合、不整脈源性右室心筋症を含む心筋症やチャネル病の可能性を考慮し、安静時のQRS波形・ST波形を経時的観察することが重要です。

運動負荷心電図


・運動でPVCが抑制されるか誘発されるか、疾患の鑑別、予後判定に重要です。

・心室期外収縮が、運動負荷後回復期に誘発されるものも注意します。


ホルター心電図


・単形性か多形性か、PVCが全心拍数の何%にみられるか (PVC burden)、PVCが出現している時の活動状況、連発の有無等を検討します。

心エコー検査


・二次検診以降で、心筋症の可能性や基礎疾患の合併が疑われる場合には施行する。

血液検査


・電解質異常、甲状腺ホルモン障害の鑑別に有用である。

観察期間


・以下に「2016年版学校心臓検診ガイドライン」から、学校検診区分の条件と観察期間を抜粋する。
①連発を認めない単形性期外収縮で、出現数が1分間に2つと少なく、運動負荷心電図で心室期外収縮が消失、減少ないしは不変の場合: E可 (観察期間1-3年)。ただし、長期観察例で減少傾向または変化がなければ管理不要でもよい。


②運動負荷心電図で単形性心室期外収縮の増加、または2連発の単形性心室期外収縮が出現する場合 (ホルター心電図を記録することが望ましい): D, E禁、またはE可 (観察期間1-6か月)。ただしマスター負荷などでの心拍数が150拍/分以上まで達していない負荷では、負荷法をトレッドミル負荷などにし、心拍数を150拍/分以上まで評価する。


③多形性心室期外収縮を認める場合: D, E禁、またはE可 (専門医の精査を必要とする)。

鑑別疾患

Benign PVC


・学童期にみられるPVCのほとんどは無症状で、良好な経過をとり、約3〜4割は思春期で消失するします。

・その60〜80%は流出路起源で、単形性で、運動で抑制されることが多いですが、ときに運動で誘発される場合があります。僧帽弁や三尖弁狭窄開閉起源の場合もあります。

・注意を要するPVC所見が否定される場合は、benignと判断し得る。

Malignant PVC


・特発性PVCのなかにはきわめてまれではあるが、malignant PVCとよばれ心室細動を誘起するものがある。

・無症状であっても、coupling interval (PVCが出現した時のRR間隔) が短い、非持続性心室頻拍がみられるものは要注意。

PVC誘発性心筋症

・PVCが頻発することで、心収縮能が低下するPVC誘発性心筋症とよばれます。

・小児においてはPVC誘発性心筋症の合併はまれで、心収縮能低下がみられても軽度で可逆性です。

・自然消退する場合があり、心機能低下が無く無症状の場合は、経過観察を行います。

不整脈源性右室心筋症

・不整脈源性右室心筋症は思春期に注目されがちで、不整脈源性右室心筋症を念頭に心筋異常が明らかにならなくとも先にPVCなどの心電図所見が先行します。

・運動は心室性不整脈を誘起するのみならず、病態を悪化させます。

・そのため、学校検診で不整脈源性右室心筋症を早期に同定し運動制限を行うことは、致死性不整脈を防ぐのみならず、病態進行抑制のため重要となります。
・しかしながら、病初期にはBenign PVCとの鑑別が困難です。不整脈源性右室心筋症に特徴的な12誘導心電図所見 (V1-V3陰性T波、イプシロン波、右胸部誘導S波upstroke遅延) は、学童期・思春期には明らかでなく、PVCバーデンも低いことが多いです。

・経過中に悪化する多形性PVC、運動誘発性PVCはより注意が必要です。安静時心電図では、II/III/aVF/V3/V4の陰性T波、胸部誘導非進行性T波、右胸部誘導notched S波の出現が早期診断に有用との報告があります。

チャネル病 (QT延長症候群、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍、Andersen Tawil症候群)

・安静時心電図でQT延長がみられる場合はQT延長症候群を疑います。
・運動誘発性PVCの場合、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍、Andersen Tawil症候群、QT延長症候群を鑑別します。

・カテコラミン誘発性多形性心室頻拍、Andersen Tawil症候群は、運動中に二方向性心室頻拍 (期外収縮のQRS幅が1拍ごとに交互に出現する) が特徴的です。

・カテコラミン誘発性多形性心室頻拍は、安静時心電図では異常を認めず、運動時や興奮した時のみに心室性不整脈が発生する。Andersen Tawil症候群はQT延長症候群 (LQT7) に分類され、安静時心電図で顕著なU波を認めます。

冠動脈起始異常

・運動動脈起始異常は学童期に突然死をきたす可能性のある疾患群の1つです。

・運動誘発性PVCの鑑別に挙がる。

治療

経過観察

・予後良好と判断された特発性PVCであっても、経過中に初診時とは異なる形態に変化があるため、経過観察は重要です。

・高頻度、多形性、運動誘発性 (または抑制されない)、連発を認めるなど、懸念される所見がある場合には慎重に経過観察します

薬物治療およびカテーテルアブレーション

・不整脈源性右室心筋症やチャネル病などPVCの原因となる疾患群が診断された場合は、原因疾患に対する治療を行います。

・器質疾患やチャネル病を合併しない特発性PVCの多くは、予後良好で3〜4割は自然消退するため、治療介入を必要としません。治療介入を行う場合、その目的は①症状の軽減、②将来起こる可能性のあるイベントの予防の2つに大別されます。

    まとめ

    ・学校検診で同定されるPVCのほとんどは良性であり、治療を要しません。

    ・しかし、まれに突然死のリスクを伴う疾患が潜んでいる可能性があります。よって、どのような所見に精査を行うべきなのか、なぜ精査が必要なのか、そしてどのような疾患群を鑑別すべきなのかを理解することにより、検診の精度向上を行っていきましょう。

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