【小児科医Blog】シェーグレン症候群とは?最新研究から見る病態と治療法 | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医Blog】シェーグレン症候群とは?最新研究から見る病態と治療法

免疫
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総論

・シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome, SS)は、自己免疫疾患の一つであり、主に涙腺や唾液腺などの外分泌腺がリンパ球によって攻撃されることによって発症する、全身性の炎症性自己免疫疾患です。

・患者は口や目の乾燥(ドライマウス、ドライアイ)を主訴とすることが多いですが、それだけでなく全身性の合併症も引き起こす可能性があります。

・小児患者では、乾燥自覚症状を訴える例は少なく、耳下腺腫脹、発熱、関節症状、皮疹などの非特異的症状が受診のきっかけとなることがあります。

・腺症状の治療は対症療法が主であり、腺外臓器障害の治療は程度に応じて免疫抑制療法を行います。

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分類

・シェーグレン症候群は大きく分けて「一次性」と「二次性」に分類されます。膠原病合併のないSSHを一次性もしくは原発性、膠原病を合併するSSを二次性もしくは続発性と分類します。

・さらに一次性は、病変が外分泌腺のみに限局する腺型、外分泌腺以外の全身の諸臓器に病変が及ぶ腺外型に分類されます。

・二次性シェーグレン症候群は関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)など他の自己免疫疾患に伴って発症します。

・また、乾燥の自覚症状がなく口腔検査、眼科検査、血液検査で異常を呈する症例を潜在型、乾燥症状が認められる顕在型(Clinical)という分類もされますが、近年はあまり使用されていません。

疫学

・小児のSSの有病率は小児人工10万人あたり0.53人と計算されています。しかし、二次性SSは他の膠原病合併での報告が多くなるため、この数字は一次性SSが主な人数と考えられます(1998年〜2004年:小児慢性特定疾患調査研究事業による)。

原因・病態

・他の膠原病同様、原因は不明である。外分泌腺は外界と接触していることから、何らかの遺伝的素因を持つ個体に環境因子が作用し、外分泌腺が障害されることが発症のきっかけとされています。しかし、様々な説があり、以下の考えられる病態と原因をまとめます。

免疫学的メカニズム

・シェーグレン症候群では、自己免疫反応が涙腺や唾液腺などの外分泌腺を標的にして炎症を引き起こします。この病態にはB細胞とT細胞が深く関与しており、特にB細胞活性化因子(BAFF)やインターロイキン17(IL-17)が重要な役割を果たしています。

・これらのサイトカインは免疫系を過剰に刺激し、自己抗体(抗Ro/SSA抗体、抗La/SSB抗体)の産生を促進します。

遺伝的要因

・遺伝的要因も大きく関与していることが示唆されています。HLA-DRB1遺伝子型がリスク因子として関連していることが報告されています。

・また、ゲノムワイド関連解析(GWAS)による解析では、STAT4、IRF5、TNFAIP3の多型と疾患感受性との関連が報告されています。しかし、いずれの遺伝子もSSだけでなく、全身性エリテマトーデスや関節リウマチ、乾癬などとの関連も言われており、自己免疫疾患に共通の感受性遺伝子と考えられています。

・この他、IL12A、CXCR5などがSSとの関連を指摘されています。

環境要因

・また、ウイルス感染やホルモンバランスの変化なども環境要因として考えられています。

・感染によるSS発症機序は以下の要因が考えられます。

 ①感染したことによる異常な免疫応答の誘導

 ②感染微生物の抗原と自己抗原の分子相同性

 ③感染により自己の蛋白が変化して新たな抗原性を獲得する

 ④感染微生物がスーパー抗原を有する

 ⑤感染により自己トレランスの障害が引き起こされる。

・これまでにSSとの関連を指摘されたウイルスは、EBウイルス、HTLV-1ウイルス、コクサッキーウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVなどがあります。

症状

乾燥症状

最も顕著な特徴は外分泌腺機能不全による乾燥症状です。具体的には以下の症状があります。

  • ドライアイ:涙液分泌が減少し、目のかすみや異物感、さらには角膜炎などが発生します。涙が出ないなどの症状にも注意です。

  • ドライマウス:唾液分泌が低下し、口内炎や虫歯、嚥下困難などが生じます。摂食特に水分を多くとる、口臭が気になる…などの症状に注意です。

全身性合併症

乾燥以外にも全身的な影響があります。以下は代表的な合併症です:

  • 関節痛・筋肉痛:関節リウマチ様の関節痛や筋肉痛がよく見られます。
  • 肺疾患:間質性肺炎や気管支拡張症など呼吸器系への影響も報告されています。
  • 腎疾患:間質性腎炎や遠位尿細管アシドーシスなど腎機能障害が発生することがあります。
  • 神経障害:末梢神経障害、中枢神経系への影響もあり、一部では認知機能障害も報告されています。
  • リンパ腫リスク:慢性的な炎症状態から、一部患者では非ホジキンリンパ腫(NHL)のリスクが増加します。

診断

血液検査での自己抗体の評価と、外分泌腺障害の検査所見が重要となります。

血液検査

・シェーグレン症候群では自己抗体検査が重要です。B細胞のポリクローナルな活性化が起こることから、高ガンマグロブリン血症を認め、様々な自己抗体が陽性となります。

・特に以下の項目が診断に有用です。

  • 抗Ro/SSA抗体および抗La/SSB抗体:これらは一次性シェーグレン患者で高頻度に陽性となります。SSA抗体は感度が高いが特異性は低く、SSB抗体は感度は低いが特異性が高いという違いがあります。

  • リウマトイド因子(RF)および高ガンマグロブリン血症:これらも特徴的であり、多くの場合陽性となります。しかしRFは関節症状とは相関しません。

唾液腺生検

・唾液腺生検は確定診断において非常に重要です。SS診断のGoldStandardと言われており、すべての診断基準、分類基準で単独項目として採用されています。

・小唾液腺からリンパ球浸潤を確認することで診断されます。組織への炎症性細胞の浸潤、導管の拡張、組織の線維化などを評価します。

・導管周囲への50個以上の単核球浸潤(Focus)を4mm²に1個以上認めた場合(Greenspan分類Grade3以上)を陽性とします。

・この検査は特に疑わしい場合や他疾患との鑑別が必要な場合に行われます。

涙液分泌試験(シルマーテスト:Schirmer test)

・一定時間の涙液分泌量を測定することでドライアイの程度を評価します。

・このテストは簡便でありながら診断には有用です。

・色素を染み込ませた専用の濾紙(シルマー試験紙)の端を折り下眼瞼の外側1/3の位置にかけます。毛細管現象で涙液が吸収され、色素が水分と反応して発色します。5分間で色の変化した部分の長さを測定します。

・ACR/EULAR基準では、5mm以下を陽性とします。小児では陽性率は低くでます。

治療

対症療法

・現時点では根本的な治療法は存在せず、多くの場合対症療法が中心となります。具体的には以下があります。

涙腺障害・眼症状

・不足している涙液の補充:人工涙液の点眼

・分泌促進:ムチン分泌促進作用のある点眼薬(ジクアホソルナトリウム、レバミピド)

・喪失の予防:ドライアイ用の保護メガネの使用、涙点縫縮術または涙点プラグによる鼻涙管への流出の予防

点眼薬(ヒアルロン酸ナトリウム、ジクアホソルナトリウムなど)


• 用法:1日4~6回点眼。小児でも成人と同じ頻度で使用可能です。
• 効果:涙液分泌促進や角膜保護作用があります。
• 注意点:
• 点眼後は目を閉じて涙液排出を防ぐよう指導します。

唾液腺障害

・口腔内の保湿:人工唾液の噴霧、市販の口腔保湿ゼリーの口腔内塗布、保湿用パッチの貼付、こまめな水分摂取

・分泌促進:ガムや飴の使用(砂糖不使用なものを選ぶ)

・内服治療:ムスカリンレセプター刺激薬(ピロカルピン、セビメリン)、気道粘液潤滑薬(ブロムヘキシン、アンブロキソールなど)、麦門冬湯の内服

ピロカルピン(商品名:サラジェン錠)


• 用量:

通常、成人には1回5mgを1日3回、食後30分以内に経口投与します。

小児では体重に応じて調整され、通常は成人用量(1回5mg、1日3回)の約50~75%程度が目安とされます。
• 例:体重30kgの小児の場合、1回2.5~3.75mgを1日3回投与。


• 効果:唾液腺や涙腺を刺激し、唾液および涙液分泌を促進します。
• 注意点:
• 空腹時投与は避けること(副作用としての発汗や胃腸障害を軽減するため)。
• 1回5mgを超える増量は行わないよう指導されています

セビメリン(商品名:エボザックカプセル)


• 用量:通常、成人には1回30mgを1日3回、食後に経口投与します。
• 効果:M3ムスカリン受容体への選択性が高く、唾液および涙液分泌を効果的に促進します。
• 注意点:
• 縮瞳(瞳孔が小さくなる)による夜間視力低下の可能性があるため、運転や暗所での作業には注意が必要です

免疫抑制療法

・全身性合併症または重篤な炎症反応を伴う場合には免疫抑制剤が使用されます。これには以下があります。

・治療薬の使い方に関しては、SLEの治療法が参考になります。しかし必ずしも長期の免疫抑制療法を要さない例もあり、患者の病態をよくみて、できるだけ副作用を軽減するように務める必要があります。

ステロイド剤

・急性期にはプレドニゾロンなどステロイド剤が使用されます。

プレドニゾロン
• 用量:
成人:軽度の場合:5~10mg/日、重度の場合:20~40mg/日から開始し、その後徐々に減量。

小児

軽症例:0.1~0.2mg/kg/日
中等度~重症例:0.5~1mg/kg/日
急性期や重篤な腺外症状の場合にはパルス療法(メチルプレドニゾロン30mg/kg/日を3日間静注)も考慮されます。


• 効果:急性増悪時に迅速な抗炎症作用を発揮します。

• 注意点:

成人:長期使用では骨粗鬆症や糖尿病などの副作用リスクがありますしょ

小児:長期使用では成長障害や骨粗鬆症のリスクがあるため、定期的なモニタリングが必要です。

免疫抑制薬

・ステロイド剤が無効な場合、メトトレキサート、アザチオプリンなどが使用される。

ヒドロキシクロロキン(商品名:プラケニル錠)


• 用量:通常、成人には1日200~400mgを経口投与します。
• 効果:免疫調整作用により関節痛や疲労感を軽減します。
• 注意点:
• 長期使用では網膜症のリスクがあるため、定期的な眼科検査が必要です

メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)


• 用量:

成人:週に7.5~25mgを経口または皮下注射で投与。
小児:10~15mg/m²/週を経口または皮下注射で投与。

• 効果:免疫抑制作用により炎症を抑制し、関節痛や内臓病変を改善します。
• 注意点:
• 肝機能障害や骨髄抑制のリスクがあるため、定期的な血液検査が必要です

生物学的製剤

・B細胞標的療法として近年注目されています。リツキシマブは特に難治性の場合に使用されることがあります。

リツキシマブ(商品名:リツキサン)


• 用量:通常375mg/m²を週1回、4週間連続で静脈内投与します。
• 効果:B細胞活性化を抑制し、全身症状や関節炎の改善が期待されます。
• 注意点:
• 投与中は感染症リスクが高まるため、感染予防策が必要です

ニポカリマブ(FcRn阻害薬)


• 用量:第II相試験では15mg/kgを4週間ごとに静脈内投与。
• 効果:IgG抗体レベルを低下させることで自己免疫反応を抑制し、中等度から重度の患者で疾患活動性スコア(ClinESSDAI)の有意な改善が確認されています。
• 注意点:現在も臨床試験中であり、安全性プロファイルの確認が進められています

今後の展望

・直近5年以内の研究では、シェーグレン症候群患者における新しいバイオマーカー探索や個別化医療へのアプローチが注目されています。

・また、新規治療薬としてJAK阻害薬やBAFF阻害薬だけでなく、T細胞標的療法も開発段階にあります。これら新しい治療法によって、将来的にはより効果的かつ副作用の少ない治療選択肢が増えることが期待されています。

まとめ

・シェーグレン症候群は単なる乾燥疾患ではなく、多くの場合全身性合併症を伴う複雑な自己免疫疾患です。

・現在まで根本的な治療法は確立されていませんが、新しい研究成果によって今後さらなる進展が期待されています。

・患者ごとの病態に合わせた個別化医療アプローチを取り入れることで、より質の高いケア提供につながるでしょう。

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