用語
weaning(離脱過程):人工呼吸器への依存から脱却する過程
discontinuation:人工呼吸器から離脱すること
extubation(抜管):人工気道から離脱すること
weaning(ウィーニング)について
開始条件
・人工呼吸を必要とした基礎的原因が解除または病状が改善傾向である
・FiO2≦0.5かつPEEP≦8cmH20のもとでSpO2>90%
・循環動態の安定
・発熱がない
・貧血がない
・代謝、電解質異常がない
・咳反射がある
・十分な吸気努力がある
・呼吸パターン異常がない
・重篤な体液過剰がない
方法
以下のような呼吸器モードが選択しうる
・自発呼吸トライアル:PSV(PS 5 cmH2O・PEEP 5 cmH20・30分〜2時間まで)
・PSV:サポート圧を2-3 cmH2Oずつ減じる
・PEEPを2-3 cmH20ずつ減じる
人工呼吸の中止と抜管
自発覚醒トライアル(SAT: Spontaneous awakening trial)
・鎮静薬を減量/中止して覚醒を確認する(30分〜4時間観察)
・苦痛緩和目的に鎮静薬は継続する
・Richmond agitatino-sadation scale(RASS)を用いて評価する
自発呼吸トライアル(SBT: Spontaneous breathing trial)
・30-120分間のSBTの成功は人工呼吸中止可能を予測する最も良い指標
・成功の評価指標:呼吸パターン、ガス交換、循環動態、患者の快適度
・初回のSBTに失敗したら、失敗の原因となる条件を解除し、24時間おいて再びトライアルを行う
・SBTに失敗し、次のトライアルまでの間は安定した呼吸サポートを行う
抜管
・再挿管の準備をした環境で抜管する(安全確保を行う、可能なら何人かでその場にいてもらう)ことが基本です。
抜管に向けた全身状態の評価
抜管を検討する前に、以下の「抜管準備状態(Weaning Criteria)」を満たしているか確認します。
- 原疾患の改善: 挿管の原因となった疾患(肺炎、心不全など)がコントロールされている。
- 意識状態: 命令に従える、咳嗽反射・嚥下反射がある。
- 循環動態の安定: 昇圧剤が少量または不要、重篤な不整脈がない。
- 酸素化: FiO2 ≦ 0.4 かつ PEEP ≦5〜8 cmH2Oで SpO2≧90%以上を維持。
ステロイドの投与
抜管後の上気道閉塞(喉頭浮腫)を予防するために行われます。特にカフリークテスト(Cuff Leak Test)でリークが陰性(不十分)な場合に推奨されます。また、特に48時間以上挿管されたハイリスク小児(気道系に問題がある可能性)に対するステロイド静脈内投与は抜管後の喘鳴発生率を下げる。
- 投与のタイミング: 抜管の12〜24時間前から開始するのが最も効果的です。
- 投与量の目安:(デキサメタゾンの場合)
- 成人標準量: 5mgを6時間おきに計4回(または抜管前までに複数回)。
- 体重換算: 小児の用量を参考にすると 0.5mg/kg 程度(最大16〜20mg/日)を分割投与、または抜管4〜6時間前に単回投与する手法もあります。体重が成人に近ければ、標準量(5mg×4回)で十分な効果が得られますが、過剰投与を避ける場合は 1回 2.5〜4mg 程度への調整を検討します。
主な薬剤と使用量(成人)
一般的には、即効性と組織移行のバランスからメチルプレドニゾロン(ソル・メドロールなど)や、半減期の長いデキサメタゾン(デカドロンなど)が使用されます。
| 薬剤名 | 標準的な投与量 | 投与タイミング |
| メチルプレドニゾロン | 20mg 〜 40mg / 回 | 抜管の4〜6時間前から、4〜6時間おきに計4回程度 |
| デキサメタゾン | 5mg 〜 8mg / 回 | 抜管の6時間前、またはそれ以前から数回 |
●小児投与量例
例)デキサメタゾン:0.5mg/kg 抜管6-12時間前、以後6時間毎、合計6回投与
投与スケジュール
- 多回投与法: メチルプレドニゾロン 20mgを4時間おきに計4回(抜管前12〜16時間前から開始)。
- 単回投与法: 抜管の少なくとも4時間以上前にメチルプレドニゾロン 40mgを1回。
- ※1回だけの投与よりも、抜管の4〜6時間以上前から複数回投与する方が効果が高いとされています。
注意点
抜管後の対応: ステロイドを投与していても喘鳴が出ることはあります。その場合は、アドレナリン吸入や再挿管の準備を並行して行います。
即効性はない: ステロイドを打ってすぐに抜管しても、浮腫を抑える効果は期待できません。最低でも抜管の4時間前には最初の投与を終えている必要があります。
副作用: 短期間の投与であれば大きな問題にはなりにくいですが、血糖値の上昇(糖尿病患者など)には注意が必要です。
呼吸器設定の変更と自発呼吸トライアル(SBT)
抜管直前には、人工呼吸器による補助を最小限にして、自発呼吸で維持できるかを確認します。
設定の変更(SBTの実施)
- モード: PSV(プレッシャーサポート)またはTピース、CPAP
- PS(圧支持): 5~8 cmH2O
- PEEP: 5 cmH20
- 時間: 30分〜120分。
評価指標(RSBI)
f/Vt(呼吸回数 / 一回換気量[L])が 105未満 であることが目安です。
抜管直前の最終チェック
- カフリークテスト: カフを抜いた状態で、気管チューブの周囲から空気が漏れる音を確認。音がしない場合は喉頭浮腫のリスクが高いため、ステロイドの追加投与や抜管の延期を検討します。
- 胃内容物の確認: 誤嚥防止のため、経管栄養は抜管の4〜6時間前に中止し、胃内容物を吸引しておきます。
- 分泌物の処理: 気管内および口腔内を十分に吸引します。
注意点
- 呼吸筋疲労: 低体重(悪液質や廃用性萎縮の可能性)の場合、SBT中は問題なくても、抜管数時間後に疲労で再挿管になるケースがあります。抜管後に NPPV(非侵襲的陽圧換気) や ハイフローセラピー を早期に導入することを検討してください。
- チューブサイズ: 使用しているチューブが体格に対して太すぎないか、抜管時の喉頭損傷リスクとして考慮してください。


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