腎代替療法:RRT(renal replacement therapy)について
・腎臓の機能が低下している場合(腎不全)、もしくは本来腎臓で処理される有害物質を取り除く必要がある場合、腎臓の働きを代替する治療が必要であり、腎代替療法(RRT:renal replacement therapy)といわれる。
Renal indication
・尿毒症:電解質・酸塩基補正、尿毒素など有害物質除去
・心原性肺水腫、うっ血性心不全:体内過剰水分の除去
Non-renal indication
腎機能障害がなくても血液浄化を行うこと
・有害(毒性)物質除去:中毒・先天性代謝異常によるアンモニア高値など、敗血症に伴う高炎症性サイトカイン血症のサイトカイン除去など
RRTの種類
・RRTには、腹膜透析(PD: peritoneal dialysis)と血液体外循環がある。
・今回はPDについてまとめるが、血液体外循環は以下のようなものがある。
血液体外循環
間欠的腎代替療法(IRRT: intermittent RRT)、持続的腎代替療法(CRRT: continuous RRT)
I: intermittent
C: continuous
・IRRTはおもに長期維持血液透析において行われる。
HD:間欠的血液透析
HF:間欠的血液濾過
HDF:間欠的血液透析濾過
HD:hemodialysis
HF: hemofiltration
HDF:hemodiafiltration
・CRRTは通常ICUにおいて急性期重症患者に行われる。
CHD:持続的血液透析
CHF:持続的血液濾過
CHDF:持続的血液透析濾過
・半透膜フィルターのIRRT用をダイアライザー、CRRT用をヘモフィルターと別呼称で呼ぶこともあるが、基本構造や膜孔径に差はない。
RRTの適応
腎不全
・薬物療法に抵抗性の電解質・代謝異常(心電図変化を伴う高K血症、無尿または反射消失を伴う高Mg血症など)
・BUN>100mg/dLまたは尿毒症症状(意識障害、心嚢液貯留、易出血など)
・利尿薬抵抗性の溢水(目安:Fluid overload>10%、肺水腫、輸液スペース確保のため)
・薬物療法に反応しない重症代謝性アシドーシス(目安pH<7.15)
・無尿
腎外適応
・急性肝不全+肝性脳症
・先天代謝異常による有害物質の蓄積(尿素サイクル異常症による高アンモニアなど)
・透析可能な薬物による中毒(アスピリン、アセトアミノフェン、炭酸リチウム、エタノール、メタノール、エチレングリコール)
PDの適応
・PDは特に年少児の腎代替療法(RRT: renal replacement therapy)として有用。
・末期腎不全に陥る小児患者の場合、透析方法は成人では血液透析が多いが、小児では腹膜透析が選択されることが多い。
・理由は以下の通り、、
①透析効果が緩徐
②抗凝固療法の必要性がない
③循環動態への影響が少ない
④バスキュラーアクセスの必要がない
・小児の慢性腎不全の原因として最も多いのは、先天性尿路奇形(特に低・異形性腎)であり。2番目は巣状分節性糸球体硬化症。成人では糖尿病が最多。
・溶質除去が緩徐であるため、アンモニア、エンドトキシン、サイトカインやミオグロビン、薬物などの除去には向かない。
・腹膜透析液は乳酸を含有しているため、ミトコンドリア異常症など乳酸アシドーシスを来す患者では、アシドーシスを悪化させる可能性があり要注意。この場合、血液濾過用補充液に糖を加えた重炭酸含有の透析液が有効である。
・近年では、透析を経ずに、生体腎移植を行う症例も出てきている。
・また、腹膜透析は長期間継続すると、被嚢性腹膜硬化症(encapsular peritoneal sclerosis; EPS)のリスクが高くなるため、10年以上の継続は望ましくない。腹膜透析児の10年生存率は90%以上である。
・近年、術前の抗体除去(血漿交換)および抗CD20モノクローナル抗体の投与などにより、血液型不適合腎移植も可能となってきている。
相対的禁忌
・肝脾腫や腹腔内の腫瘤性病変(腹腔内圧が上がるため)
・最近の腹部手術歴
・消化管穿孔
・人工肛門
・胃瘻(腹膜炎のリスクが高くなるため)
・横隔膜ヘルニア
PDカテーテル
・先端はDouglas窩に留置する
・カテーテル長期留置の場合、感染リスクを下げるために皮下トンネルを作る
PD処方内容と方法
透析液濃度
・糖濃度は低濃度から開始し、除水量を見ながら必要に応じて高濃度に切り替える
・高濃度糖は長期的には腹膜の透過性維持に悪影響を与えるため、必要でない場合は低濃度に保つ
・糖濃度調節の際は、1.5と2.5%の混合など、複数の透析液を混ぜて使うこともある。
・透析液にはフィブリン塞栓防止としてヘパリン100-200U/L添加する。
透析液量
・10mL/kgから開始する
・急性期の場合、必要に応じて30mL/kgまで増量する。維持透析に向かう場合、40-50mL/kgまで段階的に増量する。
・一定の注液量(100mL前後)に達しないと注排液を自動で行うAutomated peritoneal dialysis(APD)を使えないため、維持透析に向かう場合はAPDを使える注液量を目標とする。
・先天性心疾患開心術後など、ルーチンで挿入したPDカテーテルを、PDを開始せずにドレーンとして留置しておく場合には、10mL/kgの透析液で毎日フラッシュする。
サイクル
・注入/貯留/排液の1サイクルで1時間、1日24サイクル
・注液数分、排液に10-15分、貯留に30-60分
・貯留時間45分で開始し、除水不足など頻回のサイクルが必要な場合には、貯留時間を30分まで短縮する。
・低体温を避けるために、透析液は温める。
除水量の調節
・下記のいずれかで除水量は増やすことができる。
①透析液の注入量(Fill volume)を増やす
②貯留時間を短縮することでサイクル数を増やす(小児は腹膜の透過性が高く、貯留時間はさほど必要ない)
③透析液の糖濃度を上げる
ブドウ糖以外の浸透圧物質
・ブドウ糖濃度を高めても高血糖を来すのみで除水が改善しない場合(早期産児や低出生体重児など)は透析液にアミノ酸製剤を添加し、1-2%アミノ酸濃度にして浸透圧を高めて使用する場合があるが一般的ではない。
・ブドウ糖とアミノ酸を混合し時間が経過すると、メイラード反応が起こるため添加は直前にする。
・浸透圧物質としてイコデキストリンを含有した透析液(エクストラニール)も存在する。
・イコデキストリンは分子量が大きいため、腹膜を介して急速に吸収されることもなく、ブドウ糖による高血糖や腹膜組織への障害をふせぐ。
腹膜透析液の組成
・具体的な透析液の組成については以下の通り
ダイアニール
ダイアニールN PD-4 1.5/2.5:Na132mEq/L, Ca2.5mEq/L, Mg 0.5mEq/L, 乳酸40 mEq/L,ブドウ糖1.36/2.27
ダイアニールPD-4 4.25:Na132mEq/L, Ca2.5mEq/L, Mg 0.5mEq/L, 乳酸40 mEq/L,ブドウ糖3.86
ダイアニールN PD-2 1.5/2.5:Na132mEq/L, Ca3.5mEq/L, Mg 0.5mEq/L, 乳酸40 mEq/L,ブドウ糖1.36/2.27
ダイアニールPD-2 4.25:Na132mEq/L, Ca3.5mEq/L, Mg 0.5mEq/L, 乳酸40 mEq/L,ブドウ糖3.86
テルモ
ミッドペリックL 135/250/400:Na135mEq/L, Ca2.5mEq/L, Mg 0.5mEq/L, 乳酸40 mEq/L,ブドウ糖1.35/2.5/4.0
ミッドペリック 135/250/400:Na135mEq/L, Ca4.0mEq/L, Mg 1.5mEq/L, 乳酸35 mEq/L,ブドウ糖1.35/2.5/4.0
JMS
ペリセートNL 360/400:Na132mEq/L, Ca2.3mEq/L, Mg 1.0mEq/L, 乳酸37 mEq/L,ブドウ糖1.60/2.32
ペリセートN 360/400:Na132mEq/L, Ca4.0mEq/L, Mg 1.0mEq/L, 乳酸35 mEq/L,ブドウ糖1.60/2.32
ペリセート 400 ;Na132mEq/L, Ca4.0mEq/L, Mg 1.0mEq/L, 乳酸35 mEq/L,ブドウ糖3.39
フレゼニウス
ステイセーフバランス 1 1.5/2.5/4.25:Na132mEq/L, Ca2.5mEq/L, Mg 0.5mEq/L, 乳酸40 mEq/L,ブドウ糖1.36/2.27/3.86
ステイセーフバランス 2 1.5/2.5/4.25:Na132mEq/L, Ca3.5mEq/L, Mg 0.5mEq/L, 乳酸40 mEq/L,ブドウ糖1.36/2.27/3.86
持続注入腹膜灌流(CFPD: Continuous Flow Peritoneal Dialysis)
・腹腔へのアクセスを2ルート確保して、透析液の注排液を持続的に行うPD
・新生児や低出生体重児のAKIに対して、特に腹腔内の透析液量を抑えつつ十分な透析液量を使用したい場合に有用
・ダブルルーメンカテーテルでも再循環を減らす工夫をすれば施行可能。
・腹腔内に10-15mL/kgを貯留させた状態を25-30mL/kg/hrで持続注排液する。


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