こんにちは!「ゆるっと小児科医ブログ」へ足を運んでいただき、ありがとうございます。私自身も、妻と二人三脚で2歳の娘のイヤイヤ期(?)に奮闘している、30代のパパドクターです。
出産という大仕事を終え、ようやく赤ちゃんに会えた喜びも束の間。
産院で我が子が小さな「かかと」に針を刺され、真っ赤な顔で泣き叫ぶ姿を見て、「こんなに小さいのに可哀想…」「何のために血を採るの?」と不安になったパパやママも多いはずです。
実はこの採血、『新生児マススクリーニング(先天性代謝異常等検査)』と呼ばれる、赤ちゃんの生涯を守るための超・重要ミッションなのです。
今回は、この検査がなぜ行われるのか、どんな病気を見つけているのか。そして、パパやママが一番不安になる「もし再検査になったら?」という疑問まで、小児科医の視点から徹底的に分かりやすく解説します!
なぜ「かかと」から血を採るの?
大人の採血といえば腕の血管ですが、生まれたばかりの赤ちゃんの血管は細く、腕から血を採るのは赤ちゃんにとっても大きな負担になります。
一方、赤ちゃんの「かかと」には毛細血管が豊富に集まっています。
かかとの側面(骨から離れた安全な部位)に専用の小さな針で「チクッ」と浅く傷をつけるだけで、検査に必要な数滴の血液を安全かつ短時間で採取できるのです。専用の「ろ紙(フィルターペーパー)」に血液を染み込ませ、専門の検査機関へと送られます。
新生児マススクリーニングの目的は「発症前の超早期発見」
この検査の最大の目的は、「病気の症状が出る前に見つけ出し、すぐに治療をスタートすること」です。
対象となる病気(先天性代謝異常症や内分泌疾患)は、お母さんのお腹の中にいる間は、お母さんの体が代わりに代謝を行ってくれるため、生まれた直後は症状がない場合もあります。
しかし、自分の力で母乳やミルクを飲み始めると、特定の酵素が生まれつき足りないために栄養をうまく処理できず、体内に有害な物質が溜まったり、成長に必要なホルモンが不足したりします。
これを放置してしまうと、数週間から数ヶ月後に突然、けいれん、重度の知的障害、臓器障害などを引き起こし、最悪の場合は命に関わります。一度脳がダメージを受けると、元に戻すことは困難です。
しかし、発症前に検査で見つけ出し、特殊なミルク(治療乳)を飲んだり、足りないホルモンを薬で補ったりすれば、障害を未然に防ぎ、他の子供たちと全く同じように元気に成長していくことができるのです。
新生児マススクリーニングは「希望のパスポート」なのです。
拡大スクリーニング検査について
現在、日本では主に「タンデムマス法」という、ごくわずかな血液から複数の成分を超高感度で分析する技術が使われています。
最近では、標準検査に加えて「拡大スクリーニング」という選択肢も広がっており、数多くの自治体にてこの新たな出生時検査が行われています。
| 検査の種類 | 費用 | 対象疾患の例と特徴 |
| 標準スクリーニング (約20疾患) | 公費負担 (原則無料※) | 【先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)】 成長に必須の甲状腺ホルモンが不足する病気。早期にお薬を飲み始めれば正常に発育します。 【フェニルケトン尿症】 特定のアミノ酸を分解できず脳に蓄積する病気。特殊ミルクで予防可能です。 |
| 拡大スクリーニング | 自己負担 (数千円〜1万円程度) | 【重症複合免疫不全症(SCID)】 生まれつき免疫がなく、感染症で命を落としやすい病気。 【脊髄性筋萎縮症(SMA)】 運動神経が低下する病気。 ※近年、画期的な遺伝子治療薬などが開発され早期発見の意義が高まっています。 |
※採血料や郵送料など、一部実費がかかる場合があります。
🍎 ワンポイントアドバイス
「拡大スクリーニングは受けた方がいいの?」とよく聞かれます。決して安い金額ではありませんが、対象となるのは「早期発見できれば人生が大きく変わる、治療可能な重篤な疾患」です。小児科医としては、ぜひ受検を前向きに検討していただきたいと考えています。
最も多い不安。「再検査(要精密検査)」と言われたら?
退院後、産院から「マススクリーニングで引っかかったので、再検査に来てください」と電話がかかってくることがあります。これを聞くと、パパやママは頭が真っ白になってしまうと思います。
しかし、ここで強くお伝えしたいのは、「再検査=病気が確定したわけではない」ということです。
マススクリーニングは、病気の赤ちゃんを絶対に見逃さないよう、あえて「少しでも疑わしい場合は引っかかる(偽陽性が出やすい)」ように設定されています。
ミルクの飲み具合や、未熟性、採血のタイミング(※現在は日齢4が推奨されています)によって、健康な赤ちゃんでも一時的に数値がズレて引っかかることがよくあるのです。
再検査や精密検査(大きな病院での血液検査や尿検査など)をした結果、「一時的な数値の異常で、全く問題ありませんでした」となるケースが非常に多いので、どうかパニックにならず、指定された日に落ち着いて受診してください。
最後に
最後に。かかとから血を採られ、全力で泣く我が子を見るのは辛いですよね。「代わってあげたい」と思うのが親心です。
赤ちゃんのあの元気な泣き声は、「これからこの世界で生きていくぞ!」という力強い生命力の証です。そして、親御さんが「この子の健康な未来のために」と検査を受けさせる決断をすることは、赤ちゃんに対する最初にして最大の「プレゼント」なのです。
まとめ
たった数滴の血液。しかしそれは、先天性代謝異常症という見えない脅威から子供たちを守り、健やかな未来を約束するための大きな力を持っています。
もし、これから赤ちゃんを迎える方や、今まさに同意書にサインしようとしている方がいたら、ぜひ「我が子の一生を守る大切な儀式」として、前向きな気持ちで見守ってあげてくださいね。
皆さんの子育てが、少しでも笑顔にあふれたものになりますように。


コメント