【小児科医blog:循環器】川崎病について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:循環器】川崎病について

循環器
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川崎病についてまとめます。

(追記:2025/3 再発率・疫学などについても追記しました。)

※詳しい診断等のプロセスは下記の書籍など参考に。

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疫学

川崎病の発症率は世界的に増加傾向にあり、特に東アジアで顕著です。

  • 日本: 2019年の全国調査では年間発症数が17,364例(前年比8.7%増)で過去最高を記録。
  • 発症年齢: 中央値は1歳2ヶ月、80%以上が4歳未満で発症。
  • 性差: 男女比は約1.5:1。男児の方が多く、全体の56.9%を占める
  • 季節性: 冬から春にかけて発症が多い傾向がある。
  • 人種:アジア人、特に日本人で最も頻度が高い。

定義と歴史・総論

・川崎病は、1967年に川崎富作博士によって初めて報告された急性熱性血管炎症候群です。当初は「小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(MCLS)」と呼ばれていましたが、後に発見者の名前を冠して「川崎病」と命名されました。

・再発率は約4%

・冠動脈瘤の合併率は約4%、巨大冠動脈瘤の合併率は0.13%

病態生理

川崎病の正確な病因は不明ですが、以下の要因が関与していると考えられています。

  1. 感染説: ウイルスや細菌などの感染因子が引き金となる可能性。
  2. 遺伝的素因: ITPKC、CASP3などの遺伝子多型が関連。
  3. 免疫応答異常: T細胞やB細胞の活性化、サイトカインストームの関与。

診断基準

日本川崎病学会の診断基準(2020年改訂)に基づき、以下の主要症状を評価します。

6つの主要症状のうち5つ以上の症状を伴うものを川崎病と診断します。

  1. 発熱
  2. 両側眼球結膜の充血
  3. 口唇、口腔所見(いちご舌、口唇の紅潮・乾燥・亀裂)
  4. 不定形発疹
  5. 四肢末端の変化(急性期:手足の硬性浮腫、掌蹠の紅斑、回復期:指趾先端の膜様落屑)
  6. 急性期の非化膿性頸部リンパ節腫脹

ただし、上記6症状のうち、4つの症状しか認められなくても、経過中に断層心エコー法、もしくは心血管造影法で、肝動脈瘤(いわゆる拡大を含む)が確認され、他の疾患が除外されれば本性とする。

参考条項

以下の症候および所見は、本性の臨床上、留意すべきものである。

  1. 心血管:聴診所見(心雑音、奔馬調律、微弱心音)、心電図変化(PR/QT延長、異常Q波、低電位差、ST-Tの変化、不整脈)、胸部X線所見(心陰影拡大)、断層心エコー所見(心膜炎貯留、肝動脈瘤)、狭心症状、末梢動脈瘤
  2. 消化器:下痢、嘔吐、腹痛、胆嚢腫大、麻痺性イレウス、軽度の横断、結成トランスアミナーゼ値上昇
  3. 血液:核左方移動を伴う白血球増多、血小板増多、赤沈値の促進、CRP陽性、低アルブミン血症、α2グロブリンの増加、軽度の貧血
  4. 尿:蛋白尿、沈渣の白血球増多
  5. 皮膚:BCG接種部位の発赤・痂皮形成、小膿疱、爪の横溝
  6. 呼吸器:咳嗽、鼻汁、肺野の異常陰影
  7. 関節:疼痛、腫脹
  8. 神経:髄液の単核球増多、痙攣、意識障害、顔面神経麻痺、四肢麻痺

検査項目

・血管炎としての検査所見:白血球増多、血清アルブミンの減少、FDP/D-dimerの増加、血清IL-6上昇、尿中白血球増加・蛋白尿

・冠動脈病変、心臓病変の評価:心エコー検査、心電図、胸部X線検査

・合併症を示す検査所見:血清ALT、ビリルビン増加(胆嚢炎、肝障害)、血清CKの上昇(心筋炎)

・鑑別検査:溶連菌抗原検査・咽頭培養、血液培養、アデノウイルス抗原検査

初期治療

・急性期は、免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)とアスピリン内服療法(ASA)が標準治療。

・治療反応性は、原則としてIVIGで終了後24~36時間で37.5℃未満に解熱しているかどうかで判断する。

免疫グロブリン大量静注療法(intravenous immunoglobulin : IVIG)

・IVIGは冠動脈病変の頻度を低下させ、また80%の患者がこの治療で解熱する。しかし、逆にいうと20%はファーストラインの治療に不応である。

第7病日以前に開始し早期治療により冠動脈病変の発症を抑止する。

・IVIGでも解熱しない症例の予測スコアが複数提唱されており、IVIG不応ハイリスク患者には、プレドニゾロン(PSL)あるいはシクロスポリンA(CsA)を併用する強化療法のエビデンスも蓄積している。

①IVIG+ASA

  IVIG:2g/kg/回 単回投与、12-24時間で点滴静注

   投与時期:診断後できるだけ早期(原則として第5-10病日までに)

  ASA:急性期 30-50mg/kg/日、分3-4、解熱後減量(3-5 mg/kg/日, 分1)

②IVIG+PSL+ASA

  PSL:2mg/kg/日、分3 経過により漸減

③IVIG+CsA+ASA

  CsA:5mg/kg/日、分2、5日間

IVIG:製剤ごとの投与速度

・浸透圧調整されたIVIG10%製剤では、6~12時間での投与が可能。それ以外では、下記リンクを参考にして、12~24時間点滴静注を行う。

献血ベニロン-I (帝人ファーマ株式会社 医療関係者向けサイト)

https://medical.teijin-pharma.co.jp/product/iyaku/ve.html

献血ヴェノグロブリンIH (一般社団法人 日本血液製剤機構)

医療関係者ですか?「はい」「いいえ」|(JB)日本血液製剤機構 医療関係者向け
このページは、(JB)日本血液製剤機構が提供する医療関係者の方のためのページです。医療関係者の方は、「はい」を選択して閲覧をお願い致します

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アスピリン:ASA

・IVIG(静注用免疫グロブリン静注療法)と併用することで、現在の標準治療となっている。

 急性期:初期治療としては、30-50 mg/kg/日, 分3 の中等量を使用。

 回復期:48-72時間の解熱を確認して3-5 mg/kg/日 1日1回 の低用量に減量する。

・冠動脈病変(CAL)がない症例においても発症後6-8週まで続けることが一般的である。

・肝機能障害、出血傾向が主たる有害事象であるが、治療前に川崎病によるAST・ALT上昇がある場合も中等量を用いて問題ない。これは血管炎浮腫による肝胆道閉塞性障害によるものであり、アスピリンの肝細胞障害とは機序が異なるためである。

高度肝機能異常を認める場合:フロビプロフェン(フロベン)

・上記のように、軽度のAST・ALT上昇ではASAを使用しても問題ないのですが、高度の肝機能異常を認める場合は、アスピリンに代えてフルルビプロフェン(フロベン)を内服します。

 用量:3~5 mg/kg/、分3、経口

IVIG(静注用免疫グロブリン静注療法)

・アスピリンとの併用で、現在の標準治療となっている。

・第7病日以前に開始することが望ましい。

・投与量 2 g/kg/日(単回投与)

・投与後数時間でショックを呈することがあり、急速な容量負荷による心不全の発症、心機能の低下に十分注意すべきである。

・そのため、投与後は最初は10-15分などからの短時間でバイタルを確認、投与終了までも2-3時間間隔で確認を継続していく。

・おおむね20~24時間で投与する。投与時反応やアナフィラキシーの発現に注意。

・IVIGの治療効果判断は、IVIG終了後24~48時間で発熱炎症所見(CRP. 血清IL-6など)で評価を行う。

※グロブリン製剤の使用前に、必ず生物学的製剤使用説明同意書にて説明し、同意を得ること!

プレドニゾロン併用療法

・初期治療としてIVIGと併用する。

・プレドニゾロン(PSL) 2mg/kg/日 分3 静脈投与 解熱し全身状態が改善した後に経口投与に変更。

・治療期間は15日以上、漸減についてはガイドライン参照

・しかし、IVIG標準治療と比較し、CAL合併率はPSL併用しても有意差なし。施設によって、IVIG単独かPSL併用かは治療法が異なる。

<投与方法>

「同時期の投与」が基本です。 RAISE study(重症川崎病に対するIVIG+プレドニゾロン併用療法)のプロトコルにおいても、IVIG投与開始と同時にプレドニゾロン(PSL)の静注(または経口)を開始します。

  • IVIG: 2g/kg を24時間かけて投与。
  • ステロイド:
    • PSL静注の場合: 1日3回(8時間ごと)などに分割して投与するため、IVIGが流れている最中に、時間になったらステロイドを投与することになります。

●ルート管理

IVIGとステロイドを投与する際、ルートには注意です。

  • 別ルート推奨: 可能であれば、ダブルルーメンカテーテルを使用するか、末梢ルートを2本確保し、それぞれ別のラインから投与するのが最も安全です。
  • 同一ルートの場合: 小児でルートが1本しか取れない場合は、以下の手順で側管(三方活栓)から投与します。
    1. IVIGの滴下を一時的に止める(または側管より下流を止める)。
    2. 生理食塩水でフラッシュする(配合変化防止)。
    3. ステロイドを静注する。
    4. 再度生理食塩水でフラッシュする。
    5. IVIGを再開する。 ※IVIG製剤によっては、他剤との混合で白濁や力価低下のリスクがあるため、チューブ内での混合は避けます。

●全身管理上の注意点

この併用療法を行う重症例では、心筋炎の合併や血管透過性亢進により循環動態が不安定なことがあります。

  • 水分負荷: IVIG(容量負荷)+ステロイド(Na貯留)により、心不全が悪化するリスクがあります。
  • 利尿剤: 必要に応じてフロセミド等の使用を検討しますが、循環血液量が減少している場合(ショック時)は慎重な判断が必要です。

シクロスポリン(カルシニューリン阻害薬)

 投与量:3-5mg/kg/日 分2(目標トラフ値:C0 60-200ng/mL)

  →解熱しにくい場合は、トラフ値が120-200 ng/mLになるように投与量を調節する。

 投与期間:1st-lineで使用する場合、原則5日間。3rd-lineでは10-14日間が目安(またはCRP陰性化)

・シクロスポリンAは3回目治療における前向き研究があり、解熱率79%と報告されている。

・IVIG不応リスクハイリスクの場合に有用

・注意点としては、偽性高カリウム血症がある。

IVIG不応リスク

・小林、江上、佐野らが、IVIGでも解熱しない症例の予測スコアを提唱している。下記の表の通りである。

追加治療

・IVIG投与終了後24時間でも解熱しない、または再発熱した場合、追加治療を行う。

・IVIG再投与、プレドニゾロンの他に、インフリキシマブ(IFX) 5mg/kg/日 、シクロスポリンA(CsA) 5 mg/kg/日 などの選択肢がある。

①IVIG+ASA

・初期治療と同様

②IFX(インフリキシマブ)

投与量

・5mg/kg 単回投与(IVIG不応例に対する早期導入)

用法

・単回投与。体重が25kg未満の小児は約50mL、25kg異常の小児は約100mLの生理食塩液に希釈し、2時間以上かけて点滴静注する。他の注射剤、輸液などは混合しない。

前投薬

・施設によっては、infusion reaction予防のために以下の前投薬が行われる。

アセトアミノフェン 10mg/kg(経口または挿肛) or ASA 17 mg/kg 経口

ヒドロキシジン 1mg/kg  経静脈投与

主な副作用

・発疹(2.7%)

・ウイルス、細菌感染症(2.1%)

・infusion reaction(1.4%)

・白血球減少(0.3%)

・肝機能障害(0.3%)

③IVIG+PSL+ASA

・初期治療と同様

④血漿交換

・血漿交換療法は、血中の炎症性サイトカインの除去を目的として2000年代前半に報告がなされ、薬事承認され、3rd-lineの治療として位置付けられている。集中治療が必要となるが、発症10日以内に開始すると冠動脈拡大を抑えることができる。

・血漿分画製剤であるアルブミン製剤は小児集中治療が可能な施設に限られる。

適応:多剤不応例、ショック合併例

プロトコル:1.5倍循環血液量を5%アルブミン液で置換、隔日3-5回

慢性期の治療

冠動脈病変を残さなかった患者

・アスピリン3-5mg/kg/日、分1を6-8週間投与する。これは川崎病による血小板活性化が解熱後も数ヶ月続くためである。

・その後、5年間検診を行う。

冠動脈瘤を残した患者:抗血小板薬、抗凝固薬

・基本的に、アスピリン3-5mg/kg/日、分1を継続。

 ※インフルエンザや水痘罹患時には一時的に服薬中止(ライ症候群予防のため)。またインフル予防接種を勧める。

・径5mmを目安に冠動脈径拡大に応じて抗凝固療法も加えるが、炎症が収束していない亜急性期には調整が比較的容易なヘパリン10-20単位/kg/hrの持続点滴でAPTTを対象値の1.5-2.5倍でコントロール、炎症が完全に収束すればワルファリンに置換する。

ワルファリンカリウム (ワーファリン) ※アスピリンと併用

 1歳未満:0.16mg/kg/日. 分1

 1歳以上:0.04-0.10mg/kg/日, 分1

 ※PT-INR 1.6~2.5に管理する

・一過性の場合も高校生までフォロー。病期の理解と禁煙、将来の血圧管理など患者教育。

・永続的な障害がある場合は、一生にわたって管理が必要になる。

抗凝固薬の使用方法

  1. ワーファリン:目標INR 2.0-2.5(巨大冠動脈瘤例)
  2. 低分子量ヘパリン:1mg/kg 12時間毎皮下注(乳児や急性期の使用)
  3. 直接経口抗凝固薬(DOAC):リバーロキサバンの小児適応(体重に応じて調整)

心血管系合併症

  • 冠動脈病変: 最も重要な合併症。IVIG治療導入後、発症率は約3%に低下。
  • 重症例は病日早期から冠動脈拡大が進行することがわかってきた。このような症例は重度の冠動脈後遺症を残す確率が高く、強化治療が選択可能である。
  • 冠動脈瘤分類:
    1. 小動脈瘤:内径<5mm
    2. 中等度動脈瘤:内径5-8mm
    3. 巨大動脈瘤:内径≥8mm 
      • 巨大肝動脈瘤の合併により血栓形成などにより血管内腔の狭小化を生じ、その結果、心筋虚血をきたす可能性があります。このため、肝動脈瘤を認める症例では画像検査や心電図による評価を慎重に行います。

その他の合併症

  • 心筋炎、心膜炎、弁膜症
  • 末梢動脈瘤(腋窩、上腕、腸骨動脈など)
  • 無菌性髄膜炎
  • 胆嚢水腫

長期合併症管理と予防戦略

  1. 冠動脈狭窄・閉塞の予防
  2. 心筋虚血の早期発見と治療
    • 運動負荷心筋血流シンチグラフィ:年1回実施
    • 冠動脈インターベンション:狭窄>75%で考慮(ロータブレーター、薬剤溶出性ステント)
  3. 心不全管理
    • β遮断薬:カルベジロール0.05-0.4mg/kg/日 分2
    • 心臓再同期療法(CRT):適応例での検討
  4. 不整脈管理
    • ホルター心電図:年1-2回実施
    • カテーテルアブレーション:難治性不整脈例で検討

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