【小児科医blog:神経, 感染症, 抗菌薬】細菌性髄膜炎 (Bacterial meningitis) について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:神経, 感染症, 抗菌薬】細菌性髄膜炎 (Bacterial meningitis) について

小児

総論

・脳脊髄を覆う、くも膜下腔に細菌が侵入して炎症を起こした病態。適切な治療を行っても神経学的後遺症を残りたり死亡する場合もある、重症疾患である。

・細菌性髄膜炎のうち、結核菌を除く起炎菌によるものを化膿性髄膜炎という。

・細菌の侵入経路の多くは血行性で、起炎菌が定着している鼻咽頭や腸管などを介して細菌が血液中に侵入し、髄膜に達して発症する。

・小児では基礎疾患がない児に発症することが多いですが、反復する場合には免疫不全、髄膜瘤、VPシャント留置、内耳奇形、皮膚洞などを除外する必要があります。

頻度

・3ヶ月未満発熱における細菌性髄膜炎の頻度は、1ヶ月未満で1.1%、1k月以上2ヶ月未満で0.4%である。

・肺炎球菌、Hib(インフルエンザ菌b型)ワクチンの導入によって、大幅に細菌性髄膜炎は減少しました。おおよそ、Hib髄膜炎は約90%、肺炎球菌髄膜炎は約70%減少したと推定されています。

・母体の妊娠中GBS (group B streptococcus, B群溶血性連鎖球菌) スクリーニングと出産時の抗菌薬投与の結果、早発型GBSは減少したが、遅発型の頻度は減っていない。

症状・経過

・診断されるパターンはいくつかあり、「髄膜炎と診断されるまでに数日かんの発熱や不活発、易刺激性が先行する」「発症後急速に症状が悪化」「発症から一日の間で髄膜炎に特異的な症状が出てくる」など様々。

・髄膜刺激症状(発熱、頭痛、嘔吐)が主症状でありますが、意識障害、けいれんを認める場合もあります。また髄膜刺激兆候(項部硬直、Kernig兆候など)も含めて、初診時から全ての症状がそろっているとは限らないことに注意が必要です。

・適切な治療では48時間以内に臨床的な改善があるが、発熱は通常4~6日間続く。

・感音性難聴やてんかん、知的障害、水頭症などの神経学的後遺症は10~15%で見られる。

検査

・髄膜炎を疑った時は速やかに腰椎穿刺を行います。髄液所見としては、予測スコアも試みられています。

Bacterial meningitis score:細菌性髄膜炎予測スコア

以下の5項目すべて満たす場合は細菌性髄膜炎の可能性は低いと判断できます(感度98%、特異度62%)。

①髄液Gram染色陰性

②髄液好中球数≦1,000 /μL

③髄液蛋白≦80 mg/dL

④末梢血好中球数≦10,000 /μL

⑤来院前けいれん既往なし

上記スコアの反対の所見、つまりGram染色陽性、髄液好中球数の増加、髄液蛋白の増加、末梢血好中球数上昇、けいれんありの患者は、細菌性髄膜炎の可能性が高いということになります。

髄液検査

・Bactarial meningitis score以外の項目として、糖減少 (髄液糖/血糖比 0.4以下) や初圧の上昇、髄液細胞数の増加(>1,000)は細菌性髄膜炎でみられる所見です。

・また、髄液検査を行う場合、腰椎穿刺の禁忌があるか確認が必要です。

腰椎穿刺の禁忌

・バイタル不安定

・意識障害(GCS<8)

・痙攣の持続

・頭蓋内圧亢進症状(徐脈や呼吸数低下を伴う血圧上昇、うっ血乳頭)

・神経学的異常所見

・穿刺部位の皮膚の感染所見

・髄膜瘤

・凝固異常(血小板<50,000/μL、PT-INR>1.4)

腰椎穿刺検査のポイント

・患者の体位を整える前に、滅菌物品を処置台に整え、バイタルサインを測定。また、SPO2モニターや心電図モニターも装着します。

・検体スピッツは、事前に何本目を何用にするか準備する。

 1本目:細胞数、分画、生化学検査

 2本目:培養、塗抹

 3本目:検体保存用

血液培養

・抗菌薬投与が事前に行われる場合は髄液検査が陰性となることもありますが、数時間のタイムラグがあるので、抗菌薬開始直後の髄液検査では検出可能です。髄液検査の遅れのために抗菌薬投与を遅らせてはいけません。とにかく時間が勝負であり、早期介入が最も重要です。

・細菌性髄膜炎における血液培養の陽性率は、抗菌薬投与前で約7割です。血培から効率に検出されうるため、強く疑う状況では血培投与後に抗菌薬投与を行うべきです (つまり、髄液検査で抗菌薬投与が遅れることはいけないですが、血培は先に取っておこう!ということです)。

PCR検査

・従来の単一微生物を対象としたReal-time PCR法の他に、マルチプレックスPCR法による髄液検査(FilmArray髄膜炎・脳炎パネル)が保険適用となった。

・E.coli、H.influenzae、N.meningitidis、S.agalactiae、S.pneumoniae、CMV、HHV-6、パレコウイルス、VZV、エンテロウイルス、C.neoformans/gattii など複数の微生物を一度に検査可能となった。少量の検体で迅速に検査できる点が有用だが、偽陽性や偽陰性が生じることも忘れてはならない。臨床推論と異なる検査結果であった場合には注意が必要。」

原因菌

・髄膜炎の治療では、その児が何ヶ月なのかにより、髄膜炎の原因菌が異なる。

・ターゲットとする原因菌が異なるので、当然抗菌薬の選択も週数・月齢により変化していく。

・また、抗菌薬投与量、投与間隔も変わってくるので注意が必要。

・生後1ヶ月未満はGBS、大腸菌を主とする腸内細菌が主な起炎菌で稀にリステリアが原因。生後1~3ヶ月ではGBSは(遅発型)が主な起炎菌ですが、それ以降では肺炎球菌が主となります。

新生児

・B群溶連菌と大腸菌が主な原因。

・グラム染色性から推定できる。

 グラム陰性桿菌→大腸菌

 グラム陽性球菌→B群溶血性連鎖球菌

 グラム陽性桿菌→リステリア菌

新生児以降(特に生後3か月以降〜)

・肺炎球菌とインフルエンザ菌が主な原因。

・グラム染色から原因菌はある程度推定できる

 グラム陰性桿菌→インフルエンザ菌

 グラム陽性球菌→肺炎球菌

 グラム陰性球菌→髄膜炎菌

 

抗菌薬治療

・血液培養と髄液培養が採取されれば即に治療を開始する。しかし、髄液培養の検体を採取することに時間がかかって、抗菌薬治療が遅れてはならない。

・抗菌薬は髄液移行性が悪いため、通常より高用量が必要になります。

・培養結果から起炎菌および感受性結果が判明したら、速やかに最適治療に以降します。

1ヶ月未満

ABPC+CTX(用量は日齢で変わる)

・新生児期では、リステリアのカバーのためにABPCを治療選択肢としています。

・CTXは腸内細菌、溶連菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌を目的菌としてカバーします。

・VCMはペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)をカバーします。

日齢0-7

ABPC 100 mg/kg/dose 8時間毎 (300mg/kg/日)

CTX  50 mg/kg/dose 8時間毎 (150mg/kg/日)

+α:VCM  15 mg/kg/dose 8時間毎 (45mg/kg/日)

日齢8-28

 ABPC 100 mg/kg/dose 6時間毎 (400mg/kg/日)

 CTX 50 mg/kg/dose 6時間毎 (200mg/kg/日)

 +α:VCM 15 mg/kg/dose 6時間毎 (60mg/kg/日)

1ヶ月以降

CTX 75 mg/kg/dose  6時間毎 (300mg/kg/日)

VCM 15 mg/kg/dose  6時間毎 (60mg/kg/日)

起炎菌判明後の抗菌薬治療

・細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014により、起炎菌によって下記の抗菌薬が第一選択として推奨されています。

B群連鎖球菌(GBS):グラム陽性 連鎖球菌

 ABPC 300~400 mg/kg/day (日齢による)

・GBSでは髄液培養陰性化まで GM 3〜7.5 mg/kg/day, 分3をABPCと併用する。これはABPCとの相乗効果を期待してのものです。

・バンコマイシンとゲンタマイシンは血中濃度のモニタリングが必要です。

・ゲンタマイシン併用は、髄液培養陰性化が確認できるまで継続。

肺炎球菌:グラム陽性 双球菌

 感受性不明なら、PAPM/BP or CTX/CTRX 300mg/kg/day 分4

 効果不十分(ペニシリンG MIC ≧ 0.12 μg/mL)なら、VCM追加 60mg/kg/day 分4

 ペニシリン感受性(ペニシリンG MIC≦0.06 μg/mL)なら、ABPC 300mg/kg/day 分4

・S. pneumoniaeはCTXに20%耐性、ABPC/MEPMに30%耐性あり。また小児用肺炎球菌ワクチンはカバー率で100%の有効性を持たない。よってワクチンタイプ以外の血清型による侵襲性感染症の発症リスクはある。対して、Hibワクチンはほぼ100%の有効性あり。

ブドウ球菌:グラム陽性 

 感受性不明なら、VCM

 メチシリン感受性ブドウ球菌 (MSSA)の場合、PAPM/BP or CZOP

リステリア(Lysteria monocytogenes):グラム陽性桿菌

 ABPC 300mg/kg/day 分3

  +

 生後7日未満:GM 5mg/kg/day 分2

 生後8日以上:GM 7.5mg/kg/day 分3

インフルエンザ菌:グラム陰性 小球桿菌

 薬剤感受性不明なら CTX・CTRX or MEPM もしくは両者併用

 ABPC感受性ならABPC

H. influenzaeを疑う場合、Hib髄膜炎による難聴リスクを減らすため、デキサメタゾン 0.15 mg/kg/dose 1日4回(0.6mg/kg/day、分4), 2-4日間を投与。新生児期ではインフルエンザ菌が主な原因菌となることは少ないので、デキサメタゾン投与は必ずしも必要ではない。

・なぜステロイドを投与するかについては、大量の細菌が短時間で崩壊するため、一時的に炎症性メディエーター(TNF-α、IL-1、血小板活性化因子など)が増加してしまうため、また引き続いて起こる宿主免疫反応の暴走を防ぐためである。

・生後6週未満、H. influenzaeやS.pneumoniae以外の細菌性髄膜炎、ウイルス・真菌性髄膜炎の場合は、ステロイド使用しなくても良い。

大腸菌:グラム陰性 長桿菌

 感受性不明なら、CTX

 ESBL産生大腸菌の場合は、カルバペネム系(PAPM/BP or MEPM)に変更する。

 ※ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ: extended spectrum β-lactamase)

緑膿菌:グラム陰性

 薬剤感受性不明なら, MEPM or CAZ or AZT

 薬剤感受性低下の場合は、MEPM + AMK

髄膜炎菌:グラム陰性 双球菌

 薬剤感受性不明なら、ABPC 300mg/kg/day 分4

 ペニシリン耐性なら CTRX 300mg/kg/day 分4 or  MEPM

※抗菌薬

ABPC:アンピシリン、CTX:セフォタキシム、CAZ:セフタジジム、AZT:アズトレオナム、CZOP:セファゾプラン、PAPM/BP:パニペネムベタミプロン、MEPM:メロペネム、VCM:バンコマイシン、GM:ゲンタマイシン、AMK:アミカシン、LZD:リネゾリド

治療期間

・培養で同定された起因菌によって、治療期間は異なる。

・下記の治療期間はあくまで目安であり、治療反応性など臨床経過に応じて調整が必要です。

GBS(B群溶連菌)

・14~21日間 (臨床的な改善が得られるまではGMも併用)

肺炎球菌

 10~14日間

・感受性検査の結果を参考に使用薬剤変更

Hib (インフルエンザ菌b型)

7~10日間

・感受性試験を参考に、ABPC、CTXのいずれで治療。

大腸菌, リステリア

21日間以上 (リステリアは臨床的改善得られるまではAMPCにGM併用)

髄膜炎菌

7日間

・感受性試験を参考に、ABPC, CTXのいずれかで治療

髄膜炎の可能性もあるため治療開始….中止しどきは?

・実際によくあるケースとして、髄液中の細胞数は上昇するものの、さまざまな原因で培養陽性とならないケースもあります。そんな時はどうすればよいのでしょうか?

・対応としては、3日経過して全ての培養が陰性では抗菌薬中止も考慮されます。髄膜炎の場合、概ね48時間以内には培養陽性となってくるためです。

・もしくは血液培養で陽性となる場合には、その菌を原因微生物として加療を継続する方法もあります。

治療反応不良の場合

・細菌性髄膜炎の場合、適切な治療を行っても4〜6日間の発熱が持続する経過は異常ではありません。しかし、8日以上経過した後に、再発熱ないし発熱持続する場合は、下記のような状況を考慮する必要性があります。

①不適切な治療を行っている

・抗菌薬の選択が誤っている、投与量や投与方法が異なるなど

②医療関連感染症

・細菌性髄膜炎とは別に、院内肺炎や尿路感染症、カテーテル関連血流感染症などを発症している場合があります。

③デキサメタゾン中止後再発熱

・特にHib髄膜炎に対する過量の一貫でステロイドを使用している場合は、中止した後に一時的に発熱のリバウンドがあることに注意が必要です。

④他の熱源

・静脈炎、心外膜炎、膿胸、反応性関節炎、硬膜下膿瘍など

⑤薬剤熱

・治療のために使用した薬剤による発熱

髄液検査再検の適応

・治療経過が良い場合は、培養陰性の確認や、所見改善確認のための髄液検査の再検は不要です。

・しかし、下記のような場合は、髄液検査を再度行う必要性があります。

①治療開始後48時間で臨床的な改善がない場合

②ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)髄膜炎

③新生児のGNR髄膜炎

④GBS髄膜炎:治療終了間際(14日)に髄液検査再建が推奨される。、髄液好中球割合>30%、タンパク>200mg/dLである場合、脳炎合併が疑われ、治療期間を21日に延ばす必要があります(かつ21日目に再検)。

⑤診断がついていない場合

⑥VPシャント関連髄膜炎

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