総論
・十二指腸狭窄症は、小児における消化管閉塞疾患の一つで、先天性または後天性に発生します。
・本疾患は十二指腸が異常に狭くなることで、胃内容物が正常に通過できなくなり、消化不良や嘔吐などを引き起こします。
・先天性腸閉鎖疾患の中では、十二指腸狭窄・閉鎖が最も多いです。
分類
- 先天性狭窄:胎児期の発育異常が原因で、膜状閉鎖や輪状膵などが含まれます。
- 後天性狭窄:炎症、外傷、腫瘍などによる圧迫や瘢痕形成が原因です。
発生率は出生6,000~10,000人に1人とされ、30~40%の患者でダウン症候群や先天性心疾患、鎖肛などの合併症が見られます。
低出生体重児に好発します。
主な症状
・十二指腸狭窄症の典型的な症状は以下の通りです。
- 胆汁性嘔吐:生後数日以内から始まり、繰り返し起こります(閉塞部がVater乳頭より口側の場合は非胆汁性となる)。閉塞部位が口側であるほど早く生じます。主に出生直後から生じます。
- 腹部膨満:特に上腹部が目立ちます。
- 哺乳不良:体重増加不良や脱水症状につながることがあります。
また、出生前診断として胎児超音波検査で羊水過多や胃・十二指腸拡張像(ダブルバブルサイン)が確認される場合があります。羊水過多は、消化管通過障害によって、羊水を嚥下・吸収できないため起こります。
病因
・先天性腸閉鎖症の発生機序は完全には解明されていませんが、現在のところ、胎児期の腸管における再疎通障害説、血行障害説が有力な仮説です。
再疎通障害説
・腸管形成の過程では、腸管上皮の増殖により一時的に内腔が閉塞し、再疎通が起こる
・再疎通が不完全であると、膜様型の超兵装を生じると考えられている。
血行障害説
・胎児期の中期以降に、腸管に血行障害が生じると、離断型・索状型の腸閉塞が生じると考えられている。
・血行障害の原因には、腸重積、捻転、内ヘルニアによる絞扼などが想定されている
・多発型の腸閉塞にも血行障害が関与するとされるが、家族内発生例もあり、特定の遺伝子異常との関連が示唆されている。
診断
・診断には以下の手法が用いられます。
- 画像検査
- X線検査:double bubble sign(胃と近位十二指腸の拡張像)を確認。
- 上部消化管造影:閉塞部位を詳細に評価します。ただし、誤嚥リスクを考慮して慎重に行います。
- 胎児超音波検査:出生前診断で有効です。
- 内視鏡検査
- 狭窄部位を直接観察し、病変の詳細な評価が可能です。
- 血液検査
- 電解質異常や脱水状態を評価します。重篤な場合には迅速な補正が必要です。
- 十二指腸閉鎖と狭窄: 30 年以上の長期追跡調査

治療法
根治的治療は手術となります。
術前管理
・胃管挿入による腸管減圧
・輸液による脱水、電解質異常の補正
外科的手術
・治療には外科手術が必須であり、その選択肢には以下があります。
- 膜切除術:膜状閉鎖の場合に用いられる基本的な手技。
- 十二指腸-十二指腸吻合術(ダイヤモンド吻合):口側を横切開、肛門側を縦切開して吻合する方法。最も一般的で安全性が高いとされています。
- バイパス術:複雑な病変の場合に行われます。
術後管理
・術後ケアでは以下が重要です。
- 栄養管理:経鼻胃管による減圧と静脈栄養を行い、経口摂取再開までサポートします。
- 感染予防:抗生物質投与による術後感染リスク低減。
- 長期フォローアップ:成長発達や再発リスクを評価するため定期的な診察が必要です。
合併症と予後
・術後合併症として以下が挙げられます。
- 腹腔内癒着による腸閉塞
- 縫合不全や漏出
- 長期的には胃食道逆流症(GERD)や栄養障害
予後は一般的に良好ですが、ダウン症候群など他の疾患を伴う場合は慎重な管理が求められます。
先天性十二指腸閉塞手術後の術後合併症に関連する要因: 遡及研究

最新研究動向
・近年では以下のような進展が報告されています。
- ロボット支援手術
- 腹腔鏡手術技術の進歩により、安全性と治療成績が向上しています。
- 遺伝学的研究
- 十二指腸狭窄症に関連する遺伝子異常について新たな知見が得られています。これにより早期診断や予防策への応用が期待されています。
- 新しい診断技術
- 高解像度超音波装置やAI活用による画像解析技術が進化し、出生前診断精度が向上しています


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