【小児科医Blog:感染症】百日咳(pertussis)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医Blog:感染症】百日咳(pertussis)について

感染症
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総論

・百日咳(Pertussis)は、Bordetella pertussisという細菌の飛沫感染、および接触感染によって引き起こされる急性呼吸器感染症です。感染症法では第5類感染症全数把握対象疾患に分類されています。

・この病気は非常に感染力が強く、特にワクチン未接種の乳幼児において重篤化することがあります。

・特徴的な症状として、「whoop」と呼ばれる吸気時の笛のような音を伴う激しい咳発作が挙げられます。


症状・経過

百日咳の症状は以下のように進行します。

潜伏期

・通常、5〜10日(最大3週間程度)。

初期症状(カタル期)

・風邪に似た症状(鼻水、軽い咳、微熱)が1~2週間続きます。

・乳児ではまれに咳が先行しない場合があります。

発作期

・次第に咳が強くなってきます。激しい咳発作「スタッカート:顔を真っ赤にしてコンコンと咳き込む」が特徴で、咳後に「whoop(ウープ):咳き込みの最後にヒューと音を立てて息を吸う発作」音や嘔吐、無呼吸発作(チアノーゼの有無は問わない)を伴うことがあります。この時期は夜間に症状が悪化しやすいです。


・また、発作期には血液検査所見として白血球数増多を認めることがあります。

・乳児(特に新生児や乳児早期)では重症になり、肺炎、脳症を合併し、まれに致死的になることがあります。

回復期

・咳発作が徐々に軽減し、数週間から数か月かけて回復します。ただし、他の感染症によって再発することもあります。

診断方法


百日咳は以下の方法で診断されます。

臨床的評価


症状や病歴を基に診断を行います。小児呼吸器感染症診療ガイドラインでは下記のような診断基準が設けられています。

百日咳診断基準(2017)

(1)1歳未満

臨床診断例:咳があり(期間は限定なし)、かつ以下の特徴的な咳あるいは症状を1つ以上呈した症例

・発作性の咳嗽

・吸気性笛声

・咳嗽後の嘔吐

・無呼吸発作(チアノーゼの有無は問わない)

確定例:

・臨床診断例の定義を満たし、かつ検査診断陽性

・臨床診断例の定義を満たし、かつ検査確定例と接触があった例

(2) 1歳以上の患者(成人を含む)

臨床診断例:1週間以上の咳を有し、かつ以下の特徴的な咳、あるいは症状を1つ以上停止た症例

・発作性の咳嗽

・吸気性笛声

・咳嗽後の嘔吐

・息詰まり感、呼吸困難

確定例:

・臨床診断例の定義を満たし、かつ検査診断陽性

・臨床診断例の定義を満たし、かつ検査確定例と接触があった例

検査での確定

・咳発症後からの期間を問わず、百日咳菌の分離あるいはLAMPまたはPCR陽性

・血清診断:百日咳菌-IgM/IgA抗体およびPT-IgG抗体価

検査

病原体の分離・遺伝子検出が診断の基本となります。

抗菌薬開始の判断材料となるのは、分離培養による百日咳菌の検出および、病原遺伝子の検出です。

培養検査

・病原体菌が分離されれば、薬剤感受性検査も可能となります。

・後鼻腔からの検体を検査室では選択培地に塗布する必要があるため、事前に百日咳を疑っていることを連絡することが分離率を上げるポイントです。

遺伝子検出

・PCR法またはLAMP法で、百日咳毒素遺伝子を検出します。

・高感度で、項筋に焼く治療中の場合や発症後4週間以上経過していても検出できることがあるため、疑った場合はまず本検査を行います。

抗体検査

培養、もしくは遺伝子検査で陰性だった場合に考慮されます。

IgM抗体・IgA抗体

・百日咳含有ワクチン接種者や不明の場合でも、単血清で判断できる。

・特異度は高いが、感度は60-70%であるため、陽性であれば届け出対象となる。

・陽性となるのは、感染後2病週以降が多いため、早期診断には限界がある。

・本邦では、2016年から検査キット(ELISA法)が体外診断薬として承認され保険適用となっている。

PT-IgG 抗体

・ワクチン摂取歴の多い本邦では、評価が難しい。ワクチン摂取による「10 EU/mL以上」の陽性か、急性感染による陽性かを区別できない。

・この検査だけでは百日咳と確定できない。回復期血清とのペア血清で2倍以上の上昇が確認されて初めて確定診断例の届け出対象となる。

治療法

抗生物質治療

・マクロライド系抗生物質が一般的に使用されます。潜伏期やカタル期であれば症状の軽症化には有効であるが、百日咳に特徴的な咳が認められるようになった時期では、抗菌薬での症状改善効果は少ない。しかし、早期治療は感染拡大防止にも有効です。

・治療開始後5~7日で百日咳菌は陰性となることが多い。

<投与例>

CAM(クラリスロマイシン) 10-15 mg/kg/日 , 分2, 5日間

感染管理

・米国小児科学会での感染管理法を紹介します。

①患者との接触者で百日咳ワクチン1−2回接種者は追加接種

②風屋内や保育施設内の濃厚接触者は、EM(エリスロマイシン)14日間内服

③医療従事者は接触後21日間は咳などの症状に注意し、咳症状が出現すれば病原体検体採取後、抗菌薬内服を開始

・・・などを推奨している。

学校保健安全法

特有の咳が消失するまで、または、5日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで出席停止。

支持療法

・水分補給や酸素投与など、症状を緩和するための治療が行われます。

流行背景


・近年、一部地域で百日咳の流行が再び増加しています。その要因として以下が挙げられます。

免疫持続期間の短縮


・無細胞ワクチンへの切り替え後、免疫効果が短期間で低下する傾向があります。

病原体の進化


・Bordetella pertussis菌がワクチン効果を回避する形で進化している可能性があります。

診断技術の向上

・PCR検査など新しい技術によって、これまで見逃されていた軽症例も検出されています。


予防

ワクチン接種率向上

予防接種率を高めることで集団免疫を維持し、感染拡大を抑えることが重要です。

公衆衛生対策

手洗いやマスク着用など基本的な感染対策も有効です。また、患者との接触者には予防的抗生物質投与が推奨される場合があります。

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