【新生児エコー】おしりのくぼみ(Dimple)を見たらどうする?二分脊椎を除外する脊髄エコーの評価法 4つのポイント | ゆるっと小児科医ブログ
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【新生児エコー】おしりのくぼみ(Dimple)を見たらどうする?二分脊椎を除外する脊髄エコーの評価法 4つのポイント

新生児
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はじめに:その「くぼみ」は大丈夫?

1ヶ月健診などで頻繁に遭遇するのが、新生児のおしりのくぼみ(Sacral Dimple:仙骨部皮膚陥凹)です。

「ただの個性の範囲内(Simple Dimple)」なのか、それとも「潜在性二分脊椎(Occult Spinal Dysraphism)のサイン」なのか。この判断に迷った経験はありませんか?

かつては「念のためMRI」という流れもありましたが、乳児のMRIは鎮静のリスクやコストがかかります。そこで現在、第一選択のスクリーニングとして推奨されているのが「脊髄超音波検査(Spinal US)」です。

今回は、ベッドサイドでサッと評価し、リスク層別化を行うための脊髄エコーのテクニックを解説します。


なぜ今、エコーなのか?

新生児の脊柱(椎弓)はまだ骨化しておらず、超音波が透過しやすいという「期間限定」の期間でもあります。

  • 適応時期: 生後すぐ〜生後3・4ヶ月頃まで
  • メリット: 無被曝、鎮静不要、リアルタイムで確認できる
  • 目的: 脊髄係留症候群(Tethered Cord Syndrome)のリスクとなる病変の有無をスクリーニングする

この時期を逃すと骨化が進み、詳細な評価にはMRIが必須となります。「エコーで見えるうちに評価する」のが鉄則です。


エコーを当てるべき「ハイリスクなDimple」とは?

全てのDimpleにエコーが必要なわけではありません。以下の所見がある場合は、脊髄奇形の合併率が高まるため積極的なエコー適応となります。

  • 深い陥凹: 底が見えないもの
  • 位置が高い: 肛門縁から 25mm以上 頭側にある
  • 皮膚所見の合併: 多毛、血管腫、皮膚隆起(Lipoma疑い)、皮膚タグ
  • 正中からの偏位: 左右にズレている、形がいびつ(Y字型など)

逆に、肛門から25mm以内で底が見える浅い窪み(いわゆるCoccygeal pit)単独であれば、病的意義は低いとされています。


実践!脊髄エコー評価の「LFOT」

プローブは高周波リニア(10MHz以上)を使用し、患児は腹臥位にして背中を軽く丸めます。 見るべきポイントは、頭文字をとって「LFOT(エル・フォット)」と覚えましょう。

① Level:脊髄円錐の高さ

脊髄の末端(脊髄円錐:Conus Medullaris)がどこにあるかを確認します。

  • 正常: L2/L3 椎間板レベルより頭側(L1〜L2付近が多い)
  • 異常(疑い): L3以下 にある場合

【同定のコツ】 仙骨の最後端(S5)から頭側へ椎体をカウントアップするか、第12肋骨のある椎体をTh12としてカウントダウンして同定します。L3より低い場合は脊髄が下から引っ張られている(係留されている)可能性が高いです。

② Filum:終糸の太さと輝度

脊髄円錐から伸びる「糸(終糸:Filum Terminale)」を評価します。

  • 正常: 厚さ 2mm未満
  • 異常: 厚さ 2mm以上、または高輝度(Lipomaの迷入を示唆)

ここが太い(Fatty filum)と、成長に伴って脊髄が引っ張られ、将来的に排尿障害や下肢麻痺などの神経症状が出るリスクがあります。

③ Oscillation:脊髄の拍動・可動性

ここがエコー最大の強みです。動画で観察してください。

  • 正常: 呼吸や心拍に合わせて、馬尾神経がサラサラと揺れ動く(Pulsation / Oscillation あり)
  • 異常: 脊髄が背側に張り付いていて、動きが乏しい・固定されている

「背側に偏位(Dorsal positioning)」していないかも重要なチェックポイントです。

④ Tract:瘻孔の連続性

Dimpleの直下を観察します。

  • 評価: 皮膚の窪みから、脊柱管内(硬膜内)へ続く低輝度〜高輝度のライン(Tract)がないか?
  • 異常: Dorsal Dermal Sinus(背側皮膚洞) の場合、瘻管を通じて細菌が脊髄内に入り、細菌性髄膜炎を起こすリスクがあります。


判定とネクストステップ

エコー所見に基づいたフローチャートの目安です。

所見なし(All Normal)

  • 正常バリエーションと判断。
  • Action: 親御さんに「今のところ脊髄の形や位置に異常はなく、将来的なリスクは極めて低い」と説明し、経過観察(または終診)。

    所見あり(Abnormal) / 描出困難

    • 脊髄位置が低い、終糸が太い、動きが悪いなど。
    • Action: 脳神経外科や脊椎専門医へ紹介。確定診断のための脊髄MRI(通常は鎮静が安全に行える生後3〜6ヶ月以降)を計画します。


      まとめ:エコーを聴診器のように使おう

      新生児の脊髄エコーは、慣れれば数分で終わる検査です。

      これにより、「念のためMRI」という過剰な検査を減らし、逆に「一見大丈夫そうだが実は病変がある」ケースを早期に拾い上げることができます。

      Dimpleを見たら、まずはエコー。「LFOT」の4点をチェックして、赤ちゃんの将来を守るスクリーニングを行いましょう。


      【参考文献・参考ガイドライン】

      • Ultrasound screening for occult spinal dysraphism
      • 日本小児神経外科学会 ガイドライン等

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