定義
・新生児仮死とは、様々な原因により出生時から続く低酸素血症状、循環不全のこと。
・新生児脳症とは、生後数日以内に意識障害、筋緊張の異常(亢進・低下)、哺乳・呼吸障害(脳幹機能障害)、新生児けいれん、脳圧亢進症状などの一連の臨床症状を呈する脳機能異常状態のこと
原因
分娩前(70%)
・常位胎盤早期剥離、前置胎盤、胎盤機能不全、子宮内胎児発育不全、母体ショックなど
分娩時(20%)
・胎位異常、児頭骨盤不均等、臍帯脱出、鉗子・吸引分娩など
出生後(10%)
・肺の拡張障害、胎児奇形(横隔膜ヘルニア、先天性心疾患など)、胎児水腫、先天性神経筋疾患など
続いて、具体的な対応についてです。NCPRでは、フローチャートに沿って新生児蘇生の初期対応を行います。
●新生児蘇生法(NCPR)講習会
初期対応・NCPRアルゴリズム
生まれてくる前に
・母親の基礎疾患や家族歴、妊娠中の合併症などの母体情報や胎児心拍モニタリング所見などの分娩の経過をチェックする。
出生直後の評価
・出生直後に、①早産児かどうか、②弱い呼吸・啼泣はあるか、③筋緊張の低下はないか..を確認する。
・いずれも認めない場合はルーチンケア(母親の側で保温・気道開通・皮膚乾燥)
・一つでも認める場合は蘇生の初期処置を開始。
蘇生の初期処置
・皮膚の羊水を拭き取り、保温に努める。
・肩枕を挿入し起動確保の体位をとり、必要なら口・鼻の順で吸引を行う。
・呼吸を促すために背部または足底を優しく刺激する。
・初期処置後はパルスオキシメーターや心電図モニタの装着を検討し、呼吸と心拍の評価を行う。
人工呼吸
・初期処置後も自発呼吸を認めない、あるいは心拍100bpm未満の場合は人工呼吸を行う。
・新生児仮死の9割は人工呼吸で救うことができる。
・人工呼吸の回数は1分間に40-60回。1秒に1回を超えないようにする。
・正期産児や正期産に近い児(35週以上)ではまず空気で、早産児(35週未満)では低濃度酸素(21-30%)で人工呼吸を開始する。
・人工呼吸を30秒行ったあとも心拍が60bpm未満の場合は胸骨圧迫を開始するが、その前に換気が適切かどうかを評価する。
胸骨圧迫
・胸郭包み込み両母指圧迫法(両母指法)と2本指圧迫法(2本指法)がある。
・疲労度の少なく、かつ高い血圧を発生させることのできる両母指法が第一選択。
・胸骨圧迫3回に対して人工呼吸1回を2秒間で行う。
・胸骨の下3分の1を胸壁の厚さの3分の1が凹む強さで圧迫する。
・胸骨圧迫時には必ず酸素投与を行う。
薬物投与
・有効な人工呼吸と胸骨圧迫にも関わらず心拍数が60bpm未満の場合は、薬物投与を検討する。
・第一選択はアドレナリンの投与だが、人工呼吸と胸骨圧迫を中止してまで実施する処置ではない。
ボスミン®︎(0.1%アドレナリン)
溶解方法:ボスミン1mL+生食9mL(0.1mg/mL)
投与方法:10倍希釈ボスミンを、静脈内0.1-0.3ml/kg、気管内0.5-1.0ml/kg
※HR60bpm未満であれば3-5分ごとに投与
・循環血液量が減少していると考えられる場合は、循環血液増量剤(生理食塩水、乳酸リンゲル液など)の投与を検討する。
生理食塩水 投与方法:10mL/kg/dose 5-10分かけて
・代謝性アシドーシスが循環動態の改善を妨げると考えられる場合は炭酸水素ナトリウムの投与を検討する。
メイロン8.4%®︎(炭酸水素ナトリウム)
溶解方法:メイロン8.4% 5mL+蒸留水5mL(0.5mEq/mL)
投与方法:2倍希釈メイロンを、静脈内2-4mL/kg
症状・病態
中枢神経系
・低酸素虚血性脳症(HIE)、脳質周囲白質軟化症(PVL)、頭蓋内出血
呼吸器系
・胎便吸引症候群(MAS)、肺出血、気胸、縦隔気腫
循環器系
・遷延性肺高血圧、心筋虚血、心不全
消化器系
・壊死性腸炎(NEC)、肝機能障害
腎臓
・急性腎不全、尿細管壊死
代謝
・アシドーシス、低Ca血症、低Na血症、高K血症状、血糖異常
血液
・播種性血管内凝固(DIC)
検査
・全身評価のために、血液検査、胸腹部X線検査、頭部や心臓のエコー検査を行う。
・特に、生後60分以内の血液ガスは、pHが7未満、base defictが16 mmol/L以上であれば、低酸素療法の適応基準Aを満たすので必須の検査である。
治療と管理
・無呼吸で生まれた児に対して速やかに人工呼吸を開始できるかが大きなポイント。
・NCPRでは生後60秒以内に人工呼吸の適応を判断し、実施することを目標としている。


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