はじめに
まず最初にお伝えしたいことがあります。それは、おこさんのおねしょが中々なくならなくても、「あなたの育て方のせいではありません」ということ。そして、「お子さんの性格や努力不足のせいでもありません」ということです。
小学校に入学してもおねしょが続く子は、実はクラスに1〜2人はいると言われています。決して珍しいことではないのです。今日は一緒に、この悩みの正体を解き明かしていきましょう。
「おねしょ」と「夜尿症」の違いって?
実は、医学的には年齢によって呼び方が変わります。
- 乳幼児期: 「おねしょ」と呼びます。これは生理的な現象です。
- 5〜6歳以降: 月に数回以上のおねしょが続く場合、医学的に「夜尿症」と診断されることがあります。
なぜ起きるの?メカニズムを解説
夜尿症の原因は、主に以下の2つのバランスが崩れていることにあります。
- 夜間に作られる尿の量が多い(抗利尿ホルモンの分泌不足など)
- 膀胱のタンクが小さい(尿を溜められる量が少ない)
これに加え、「睡眠が深くて、尿意を感じても起きられない」という要因が重なって起こります。つまり、身体の成長・発達のスピードが、たまたま膀胱やホルモンに関係する部分だけゆっくりなだけなのです。
親が絶対に守りたい「3つの原則」
夜尿症の治療やケアにおいて、世界中の小児科医が提唱している大切なスローガンがあります。
それは、「焦らず、怒らず、起こさず」です。
焦らず
・治るまでには時間がかかります(年単位のこともあります)。長期戦の構えで。
怒らず
・怒っても身体の機能は変わりません。むしろストレスで悪化したり、自信を喪失させてしまいます。「失敗したくてしたわけじゃない」ことを理解してあげましょう。
起こさず
・ 夜中に無理やり起こしてトイレに行かせるのは、実はNGです。抗利尿ホルモン(おしっこを減らすホルモン)のリズムが崩れたり、膀胱におしっこを溜める練習にならなかったりするため、治療的な意味では推奨されません(※宿泊行事などの特別な日は別です)。
今日からできる!家庭での生活改善ポイント
お薬を使う前に、まずは生活習慣を見直すだけで改善することも多いです。
✅ 夕食後の水分コントロール
- 朝〜昼: たっぷり水分を摂らせてください。
- 夕食〜寝る前: 水分摂取を控えめにしましょう。目安はコップ1杯(200ml)程度まで。
- 注意点: 夕食に塩分が多いと喉が渇くので、薄味を心がけましょう。また、果物(スイカやミカンなど)も水分が多いので夜は控えめに。
✅ 寝る前のトイレ習慣
- 寝る直前に必ずトイレに行く習慣をつけましょう。「布団に入る儀式」にしてください。
✅ 体を冷やさない
- 冷えると尿量が増え、膀胱も縮こまります。冬場はもちろん、夏場のエアコンの効きすぎにも注意です。
✅ 便秘の解消
- 実はこれが盲点! 直腸に便が溜まっていると、膀胱を圧迫してしまいます。便秘を治すだけでおねしょが治る子もたくさんいます。
病院に行くタイミングは?
以下のような場合は、一度かかりつけの小児科、または夜尿症外来を受診することをお勧めします。
- 小学校に入学しても、毎晩のようにおねしょがある。
- おねしょのことで、子供自身が自信を失っている。
- 宿泊行事(林間学校や修学旅行)が近づいていて心配。
- 一度おさまっていたのに、急にまた始まった(二次性夜尿)。
- ※急に再開した場合は、ストレスや尿路感染症、糖尿病などの病気が隠れていることもあるため、早めの受診が必要です。
病院での治療って何するの?
主に以下の2つのアプローチがあります。
- お薬(抗利尿ホルモン薬など): 夜間の尿量を減らすお薬を飲みます。
- アラーム療法: パンツにセンサーをつけ、水分を感知すると音が鳴る装置を使います。睡眠中に「膀胱に尿が溜まった感覚」を脳に学習させる方法で、根治率が高いとされています。
まとめ
夜尿症は、本人の努力不足でも、親のしつけのせいでもありません。「身体の発達の通過点」です。いつかは必ず治ります。
一番大切なのは、シーツが濡れていても「あ、出ちゃったね。着替えようか!」と明るく流してあげること。
朝一番に親からガミガミ怒られると、子供の一日は最悪のスタートになってしまいます。
「大丈夫、いつか止まるよ」と、どーんと構えて、一緒に長いトンネルを歩いていきましょう。どうしても辛いときは、私たち小児科医を頼ってくださいね。
💡 次のステップ
もし「これって受診すべき?」と迷ったら、まずは1週間だけ「夜尿日記(おねしょカレンダー)」をつけてみてください。
- 寝る前に飲んだ量
- おねしょの有無
- おねしょの量(シーツまで濡れたか、パンツだけか)
これを持って受診すると、診断がとてもスムーズになりますよ!


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