こんにちは!小児科医りんご🍎です!
今回は男の子で問題となる、デリケートゾーンの痛み・腫れに関するお話です。
ある日突然、
「おちんちんが真っ赤に腫れ上がっている!」
「おしっこのたびにギャン泣きする…」
「パンツに黄色い膿(うみ)がついている!」
となった時、心配ですよね。
デリケートな部分ですし、あまりの痛がりように「重い病気なのでは…?」と、パパもママもパニックになってしまいますよね。
でも、まずは深呼吸してください。大丈夫です。 それは小児科や泌尿器科の日常診療で、1日に何度も診察するほどよくある「亀頭包皮炎(きとうほうひえん)」という病気かもしれません。
今回は、男の子のママ・パパが必ず知っておきたい「亀頭包皮炎」について、原因から正しい洗い方、絶対やってはいけないNG行動まで、専門医の視点から解説します。
1. なぜ起こるの?原因は「生理的包茎」と「バイ菌」
亀頭包皮炎とは、おちんちんの先端(亀頭)と、それを覆っている皮(包皮)のすき間に細菌が入り込み、炎症を起こしてしまう病気です。
主に思春期前は不潔な手で触ることによる特発性で、思春期後は性感染症も原因となり得ます。
【なぜ子どもの男の子に多いの?】
赤ちゃんから幼児期の男の子は、ほぼ100%が亀頭を包皮がすっぽりと覆っている「生理的包茎(せいりてきほうけい)」という状態です。これは異常ではなく、成長とともに自然にむけていく正常な過程です。
しかし、この皮と亀頭の間には狭いすき間があり、そこにオシッコの残りや、古い角質が混ざった「恥垢(ちこう:スメグマ)」という白いカスが溜まりやすくなっています。
そこに以下のようなルートで細菌が入り込み、繁殖すると炎症を起こします。
オムツの中の細菌: うんちに含まれる大腸菌や腸球菌など
汚れた手での接触: 汚れた手でおちんちんを触った時のブドウ球菌や連鎖球菌など
そのため、オムツをしている赤ちゃんや、おちんちんを触る癖がある1〜5歳くらいの幼児に最も多く見られます。
亀頭包皮炎は割礼されていない男児にのみ起こる疾患であり、本邦には割礼の文化がないため、比較的遭遇頻度は多い疾患です(前思春期の男児100人中1.5人が罹患 ※Kayaba H, et al : Analysis of shape and retractability of the prepuce in 603 Japanese boys. J Urol, 156 : 1813-1815, 1996)。
また、思春期以降は性感染症についえも鑑別を行う必要があります。尿道から分泌物や排膿があれば、性感染症の可能性が高くなります。
2. うちの子も?見逃さないでほしい5つのサイン
お子さんの様子や、おむつ・パンツをチェックしてみてください。以下の症状が急に現れます。
- 発赤と腫脹(赤みと腫れ): 先端が赤く、水ぶくれのようにプックリと腫れ上がります。
- 疼痛(痛み): 少し触れただけでも嫌がります。下着とこすれるのをかばうような歩き方をすることもあります。
- 排尿時痛・頻尿: おしっこが通過する時にしみて激しく泣くため、おしっこを我慢したり、逆にチビチビと何度もトイレに行ったり(頻尿)します。
- 排膿(膿が出る): 皮の先端から、黄色や黄緑色のドロッとした膿が出たり、下着に付着したりします。
- 不機嫌・発熱: 痛みのせいで機嫌が悪くなります。まれに微熱を伴うこともありますが、全身の元気がなくなることは少ないです。
●尿閉を起こすことがある?
亀頭包皮炎は尿閉を起こすことがあります。解除のため局所へのリドカインゼリーの塗布や温浴によって尿閉が解除される場合もあります。ちなみに、小児の尿閉の約15%が亀頭包皮炎だったとの報告もあります。※Schmidt AM, et al : Acute urinary retention in children. J Pediatr Urol, 16 : 842. el-842. e6, 2020
3. 病院ではどんな検査をするの?痛い?
「痛がっているのに、むかれたり痛い検査をされるの?」と不安になるかもしれません。
基本的には、医師が目で見て確認する「視診」だけで診断がつきます。痛い検査はほとんどありませんので安心してください。
視診: 赤みや腫れ、膿の有無を確認します。
細菌培養検査・尿検査(必要な場合のみ): 基本は行いませんが、「何度も繰り返す」「薬が効きにくい」といった場合は、膿を綿棒で軽く拭い取って原因菌を調べたり、ばい菌が膀胱まで入って「尿路感染症」を起こしていないか確認するために尿検査を行うことがあります。
Q, どんな細菌が原因になる?
起因菌は、A群溶連菌や黄色ブドウ球菌が多いです。
4. 治療法と、治るまでの経過
治療はとてもシンプルで、「バイ菌をやっつける」ことと「清潔を保つ」ことです。
塗り薬 (外用薬加療)
包皮先端が軽度の赤みのみの場合、ステロイド軟膏(mildランクなど)を清潔な手で塗布することで治るケースが多いです。
排膿などある場合は、原因菌を退治する抗生物質入りの軟膏(ゲンタマイシンやテラマイシンなど)を1日2〜3回、腫れている部分に優しく塗布します。
飲み薬(経口抗菌薬)
腫れや痛みが強い、膿が多い、熱があるといった炎症所見が強い場合は、飲み薬の抗生物質(セフェム系など)を3〜5日間ほど処方します。
例)セファレキシン(ケフレックス) 50-100 mg/kg/day 分3-4 ※蜂窩織炎に準じて
清潔
これが非常に重要です。下記に、おうちでの正しい清潔ケア方法をまとめました👇️
【治るまでの経過】 適切に薬を使い、優しく洗い流していれば、早ければ翌日、通常は3〜5日程度で赤みや痛みが劇的に改善します。 痕が残ったり、将来のおちんちんの機能に悪影響を及ぼすことはありません。
5. おうちでの正しいケアと、NGな行動
治りを早くし、再発を防ぐためのポイントです。ここが一番大切です!
⭕️ 正しいケア方法(優しく洗う)
●シャワーで洗い流す
お風呂の際、ぬるま湯のシャワーを弱めの水流にして、外側から優しく洗い流してください。
●石鹸は泡で優しく
石鹸を使う場合は、よく泡立てた泡を乗せる程度にし、ゴシゴシこすらないでください。粘膜は非常にデリケートです。
●座浴(ざよく)
痛みが強くてシャワーを嫌がる場合は、洗面器にぬるま湯を張り、そこにお尻ごと浸からせて(座浴)、お湯の中でチャプチャプと洗うのも痛みが和らぎ効果的です。
❌ やってはいけない「NG行動」
●「無理に」皮をむいて洗おうとする!
「中まで綺麗に洗わないと」と無理に皮をむくのは絶対にやめてください。癒着している部分が裂けて傷になり、そこからバイ菌がさらに入り込みます。また、むいた皮が元に戻らなくなり亀頭を締め付ける「嵌頓(かんとん)包茎」という、緊急手術が必要になる恐ろしい事態を引き起こす危険があります。
●自己判断で抗生物質を途中でやめる!
「痛みが引いたから」と飲み薬を途中でやめると、バイ菌が生き残り、すぐに再発したり薬が効きにくい耐性菌になったりします。処方された分は飲み切ってください。
6. ママ・パパの疑問にお答えします(Q&A)
Q. 何度も繰り返すのですが、手術(包皮環状切除術)が必要ですか?
A. 幼児期はどうしても繰り返しやすいですが、成長とともに皮がむけやすくなり、自分で清潔にできるようになれば自然と起こらなくなります。そのため、単に数回繰り返すだけで小児期に手術をすることは現在ではほとんどありません。
Q. 白いカス(恥垢)が見えるのですが、取らなくていいですか?
A. 無理に取る必要はありません。恥垢自体は無菌の分泌物であり、それ自体が悪いわけではありません。入浴時に表面を優しく洗い流すだけで十分です。
まとめ:痛がったら、無理せず早めに受診を!
おちんちんのトラブルは、親としてはとても心配になるものです。しかし「亀頭包皮炎」は、適切な治療ですぐに良くなる病気です。
「おしっこを痛がる」「腫れている」と気づいたら、慌てて皮をむいたり石鹸で洗いすぎたりせず、まずはそのままの状態で、早めにかかりつけの小児科や泌尿器科を受診してくださいね。


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