令和6年度(2024年9月)の即時型食物アレルギーの原因食物では、全体第1位(26.7%)を占める、、鶏卵アレルギーについてのまとめです。
即時型食物アレルギーとして、0〜2歳においては圧倒的に多く、特に0歳台の乳児期では、55.6%と半数を締めます。
そのため、小児医療に関わる医師は、鶏卵アレルギーの知識は必要不可欠といえるでしょう。
本記事では、鶏卵アレルギーの特徴、診断方法についてをまとめていきます。
特徴
・卵白、卵黄ともにアレルゲン(アレルギーの原因)となりうるが、卵白が原因の大半。
・卵白は、加熱が化学処理に安定であるオボムコイド(Gal d 1)と加熱処理で凝固しやすいオボアルブミン(Gal d 2)が抗原性の多くを占める。
疫学・予後
耐性化率
・わが国における報告では、乳幼児期に発症した鶏卵アレルギーの耐性化率は3歳までに30%、6歳までに66%であった。
耐性化にプラスに働く因子
・加熱鶏卵を月に5回以上食べた群は、全く食べなかった群と比較してオッズ比3.51で耐性化が進んだという報告がある。
原因蛋白について
アレルギーコンポーネント
・オボアルブミン(Gal d 2)は卵白タンパク質の半分を占める。卵白の優れた調理特性である起泡性と熱凝固性はオブアルブミンによるところが大きく、加熱により凝固しやすいことが抗原性の低下に大きく関わっている。
・オボムコイド(Gal d 1)はトリプシンインヒビター活性をもち、卵白タンパク質の約11%を占める。熱や消化酵素に対して安定している。そのため、オボムコイドに対して耐性がない場合、加熱した鶏卵は大丈夫でも、低加熱(マヨネーズ・プリン・茶碗蒸しなど)の料理ではアレルギー症状が起こる可能性がある。
・オボトランスフェリン(Gal d 3)は卵白タンパク質の12%を占める。卵白タンパク質の中で最も熱変性を受けやすい。鉄イオンを結合することで抗菌活性を持つ。これは細菌の代謝に鉄を利用させないことで、細菌や真菌の増殖を抑制するためである。
・卵黄には血清アルブミン(α-リベチン, Gal d 5)が報告されている。Gal d 5は鳥類の羽や糞にも存在し、bird-egg症候群の原因アレルゲンともなる。
交差抗原性を示す食物
・ウズラやアヒルの卵は鶏卵と交差抗原性を示す。
・鶏卵アレルギー患者の内、ウズラ卵では69%、アヒル卵では66%に感作が見られたとの報告がある。
マトリックス効果
・卵白と小麦を混ぜ合わせて加熱すると、オボムコイドが重合し小麦の成分のグルテンと高分子複合体を形成、抗原性が減弱する。
診断手順
・鶏卵摂取に伴う即時型症状が認められた場合、特異的IgE抗体検査が陽性であれば診断を確定できる。
・しかし乳児アトピー性皮膚炎患者では、特異的IgE抗体価が陽性というだけでは診断せず、湿疹のコントロールをおこなった上で食物経口負荷試験を予定する。
食物経口負荷試験(OFC)
以下に鶏卵の負荷試験の方法を示す。
基本的に、現在の摂取量よりもひとつ上の段階の負荷を目標とする。
未摂取・完全除去中→少量
卵白少量レベル→卵白中等量
卵白中等量レベル→卵白高用量(日常摂取量)
卵白(ゆで卵白重量は1個で40g)
少量:1-3g
中等量:加熱卵白5-10g
日常摂取量:加熱卵白1個(40g)
鶏卵加工品で摂取可能な加工食品
| ゆで卵白重量(タンパク質量) | 全卵換算 | 加工食品 |
| 40g(4.5g) | 1個 | 低加熱料理(茶碗蒸し、プリン、卵スープ、マヨネーズ)、通常加熱料理(卵焼き、オムレツ、目玉焼き) |
| 20g(2.3g) | 1/2個 | カステラ1切れ、バウムクーヘン1/2個、シフォンケーキ1切れ、ショートケーキ1カット |
| 10g(1.3g) | 1/4個 | とんかつ1枚、ホットケーキ1枚、ドーナツ1個、ハンバーグ1個 |
| 5g(0.6g) | 1/8個 | うずら卵1個、コロッケ1個、中華麺1玉、からあげ3個 |
| 2g(0.2g) | 1/20個 | クッキー1枚、ビスケット1枚、ロールパン1個、かまぼこ3切れ、ハム1枚、ウインナ1本、ちくわ1本、スティックパン1本 |
負荷試験後の増量目安
増量の目安:3回食べて問題なければ2割増量
試験陰性→総量の半分量から摂取、問題なければ増量
判定保留→同上
判定陽性→負荷試験前の摂取レベルを継続。
除去解除:加熱卵1個摂取が安定して可能(家庭での接種もOK)。
たまこな
・負荷食材である鶏卵は、しっかりと20分ほど沸騰したお湯で茹でた、固茹でたまごである必要性がある。しかし、この固茹でたまごは独特の匂いがあり、患児の嗜好によっては食べてくれない場合がある。
・そのような時に有用なのが、『たまこな』という加熱全卵の粉末製品である。



・少量よりもさらに少ない微量・極少量(<1g)の負荷も行うことができ、アレルギー専門施設での使用もされている製品です。
・デメリットとしては、少し価格が高いかな?という所がありますが、どうしても患児の嗜好で鶏卵を摂取してくれない…という場合には一つの選択肢となるでしょう。
Bird-Egg症候群
定義
・鳥の飼育者が、鳥由来光源に経気道や経皮感作された後、鶏卵を摂取後に即時型アレルギー症状をきたす病態とする。
・飼育する鳥の羽毛や糞、血清などに含まれる抗原と、鶏卵由来抗原の交差反応に起因して発症し、主要抗原として血清アルブミンが同定されている。
臨床的特徴
・生ないし不十分な加熱の鶏卵(特に卵黄)を摂取した直後に、口腔内のかゆみや違和感、口唇や顔面の浮腫、手掌のかゆみや全身性の蕁麻疹、鼻汁や鼻閉、咳嗽や呼吸困難感などの呼吸器症状、消化器症状などがあらわれ、時にアナフィラキシーを呈する。
疫学
・鳥を飼育する人に多い。小児例はまれである。
・感染源となる鳥の種類は、セキセインコが多く、他にカナリヤやオウムなどが報告されている。
発症機序
・おもに鳥類間での血清アルブミンへの交差反応性によって発症する。
・血清アルブミンは毛細血管内皮から上皮に移行するため、鳥では結成のほか、上皮、羽毛、糞、肉にも存在する。これらを経皮・粘膜的、経気道的に感作されて発症する。
・血清アルブミンは熱に不安定なので、鶏卵を加熱せずに摂取した時に生じやすい。
患者指導
・加熱によりGal d 5のIgE反応性は88%減弱したとの報告もある。そのため十分に加熱しておけば鶏卵を摂取できることがある。
・鶏肉については小児で22%、成人で12%と症状誘発の可能性があり、個人の症例で摂取可能かどうか判断を行う。
予後
・飼育していた鳥への曝露を止めることで、特異的IgEが陰性化し、鶏卵黄に耐性を獲得した症例も報告されている。
・つまり感作源を取り除くことで耐性獲得の可能性がある。
薬剤で気をつけること
・薬剤の薬効成分自体にアレルギーを有さなくても、添加成分として食物成分が含まれているとアレルギーを起こすことがあります。
・塩化リゾチーム製剤は、卵白に含まれるリゾチームが主成分のため、鶏卵アレルギーの児への投与は控えた方が良いでしょう。
・また、よく勘違いされますが、インフルエンザワクチンやMRワクチンの摂取は問題になることはほとんどありません。MRワクチンやインフルエンザワクチンは、極めて微量のニワトリ胚成分を含んでいますが、高度に精製されているので、実際の卵成分はほぼないからです。安心して予防接種を行って良いでしょう。


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