総論
・熱刺激による皮膚・皮下組織の損傷は、熱量(温度)と作用時間(接触時間)によって決まる。
・熱によって皮膚組織が損傷を受ける結果、皮膚のバリア機能や生理的機能は失われ、体液の漏出、痛み、感染症など多くの問題を生じてくることになる。
特徴
・小児の熱傷には、成人とは異なる特徴がある。
①成人より皮膚が薄いので、深い熱傷となりやすい→瘢痕、拘縮を生じやすい
②細胞外液量の占める比率が高く、不感蒸泄も多い→熱傷性ショックを生じやすい
③体重あたりの表面積が大きい→成人と輸液量が異なる
④糖の貯蔵量に乏しい→幼児は糖質が枯渇しやすいので、輸液は糖を添加した細胞外液を使用
⑤被虐待児症候群の一症状としての熱傷の可能性もある。
問診
・熱傷のチェックポイントは「TOPICAL」とまとめると覚えやすい
T・・Time:受傷時期と経過
O・・Operation:手術治療は必要か
P・・Pain:受傷部の痛みは
I・・Infection:発熱などの感染徴候
C・・Cause:受傷原因
A・・Age&Area:年齢、受傷面積
L・・Location:受傷部位
・また、基本的確認事項として年齢、体重、性別はチェック。
・加えて、受傷後の尿量、尿回数も確認(長時間の無尿、乏尿では熱傷ショックに注意)
・応急処置として冷却・流水を実施しているかも確認。
受傷面積の確認
・小児では頭部の占める割合が大きく、5の法則を用いて算出する。
・もしくは、熱傷患者の手掌を約1%とする手掌法もある。
乳児
頭部・顔面:20%
体幹部:前面20%、後面20%
上肢:左右ともに10%
下肢:左右ともに10%
小児
頭部・顔面:15%
体幹部:前面20%、後面20%
上肢:左右ともに15%
下肢:左右ともに15%
深度(熱傷の深さ)の診断
・深度が分かれば、熱傷創面のたどる一般的な経過がわかる。
・特に、治癒までの経過時間が大きく異なる浅達性II度(SDB)と深達性II度(DDB)の鑑別は重要。
・受傷早期ではSDBとDDBの鑑別は困難であり、経時的な観察により明確になることも多い。
Ⅰ度
所見:紅斑(発赤)、軽度疼痛、水疱(-)
治癒経過:数日〜1週間
原因:日光、都市ガス、中高温の熱湯
Ⅱ度:浅達性II度(SDB)
所見:水疱形成(水疱底赤色)、ヒリヒリ痛い、灼熱感
治癒経過:10日〜2週間、瘢痕を残さない、色素沈着
原因:日焼け(sun burn)、熱傷(短時間)、火焔(短時間)
Ⅱ度:深達性II度(DDB)
所見:水疱形成(水疱底白濁・暗褐色)、痛み(+)〜(±)、知覚鈍麻
治癒経過:3〜4週から数週間、瘢痕治癒、肥厚性瘢痕
原因:火焔、熱湯、天ぷら油、プロパンガス爆発、化学熱傷
Ⅲ度:DB
所見:乾いた白色〜褐色、皮膚は硬い、羊皮紙様、無痛(ピンプリック)、抜毛しても無痛
治癒経過:自然治癒困難、植皮術を要する、瘢痕拘縮、肥厚性瘢痕
原因:火焔、電撃傷、赤熱した金属、低温熱傷(医原性の時もあり。保温用の湯たんぽ等。特に新生児)、化学熱傷
入院を考慮する熱傷
・以下のような場合、熱傷ショックの可能性や経過に不安のある場合は入院経過観察が必要。
①7-10%以上のⅡ度熱傷(7%以下でもⅢ度熱傷は入院経過観察がベター)
②受傷してから無尿・乏尿が続いているとき
③気道熱傷、電撃傷、合併損傷のあるとき
④虐待による熱傷の疑いがあるとき
治療
・軽症では局所療法が主体となるが、広範囲重症熱傷では輸液療法を始めとした全身管理を要する。
・病期によって求められる治療法は異なる。
①熱傷ショック(hypovolemic shock)
・初期治療としては輸液を優先して行う。
代表的な輸液の公式は以下の通り
Brooke formula
0.5mL×熱傷面積(%)×体重(kg)・・・a(膠質液)
1.5mL×熱傷面積(%)×体重(kg)・・・b(電解質液)
維持水分量・・・c (体重10kg未満 100mL/kg、10-20kg 1000mL+50mL/kg、20kg以上 1500mL+20mL/kg)
投与速度
受傷時から8時間までは(a+b+c)/2、次の16時間で(a+b+c)/2 、総量は10000mLまで。
翌日の24時間は(a+b+c)/2、50%以上の熱傷は50%として計算する。
・尿が出るまではしっかり輸液を行い、尿が出たら1.5-2mL/kg/hrの時間尿量を目安に輸液調節する方法もある。
②薬物加療
・利尿薬、昇圧薬、鎮静薬で病態をコントロールしようとすることは避けたい。
・熱傷創の汚染がひどくなければ、抗菌薬は受傷後数日してから開始する。
・筋注、皮下注による薬物投与は不適切(熱傷の浮腫のため、吸収・効果発現までの時間が不明確)
・屋外での受傷や汚染された熱傷創では、破傷風に注意
③全身管理
・一般的にはバイタルサインの確認で十分。絶対安静の必要はなし。
・気道熱傷など、浮腫進行によって気道狭窄をきたす病態では、気道確保を視野に。
急性期(ショック期)
受傷後の時間:48時間まで
症状:熱傷ショック(血管透過性亢進による低容量性ショック)
治療:輸液療法(乳酸リンゲル)、浸出液対策の局所療法
急性期(ショック離脱期)
受傷後の時間:2日〜Ⅰ週間
症状:血管へのrefilling、大量の排尿、肺水腫、心不全
治療:呼吸器系・循環器系管理、体位変換、創面保護の局所療法
感染期
受傷後の時間:1-2週
症状:肺炎、敗血症、多臓器不全、burn wound sepsis、貧血
治療:抗菌薬投与、局所療法、局所化学療法、温浴療法、デブリードマン、植皮術、高カロリー栄養
受傷後の時間:4週〜
回復期
症状:熱傷潰瘍、肥厚性瘢痕、瘢痕拘縮、色素沈着・脱失、瘢痕潰瘍
治療:植皮術、瘢痕拘縮形成術、外用療法、内服療法、圧迫療法、機能訓練、遮光療法
④局所療法
・受傷後の時間経過と熱傷創面の状態に適した外用薬を選択・変更することが重要。
油脂性軟膏(疎水性軟膏)
・創面保護作用
・痂皮の浸軟、除去
・浸出液貯留しやすい
種類:白色ワセリン、流動パラフィン、亜鉛華軟膏、ゲンタシン軟膏、プロスタンディン軟膏、アズノール軟膏
乳剤性軟膏(クリーム)
・経皮浸透力あり
・水で洗い流せる
・界面活性剤、防腐剤を含む
・刺激、皮膚炎に注意(びらん、潰瘍面)
種類:水中油型(o/w)バニシングクリーム、ゲーベンクリーム、オルセノン軟膏
油中水型(w/o)コールドクリーム、リフラップ軟膏、ソルコセリル軟膏
水溶性軟膏
・浸出液吸収、創面活性化、伸びが良い、水で洗い流せる、刺激痛あり。時に接触性皮膚炎
種類:マクロゴール軟膏(ソルベース)、スルファジアジン軟膏(テラジアパスタ)、ブクラデシンナトリウム軟膏(アクトシン)、ブロメライン軟膏
軟膏・被覆剤の選択
Ⅰ度熱傷(赤みのみ、日焼けのような状態)
軟膏: ステロイド軟膏(リンデロン、ロコイドなど):炎症を早期に抑えるために数日間使用されることがあります。
非ステロイド性抗炎症軟膏(アズノールなど):炎症と痛みを和らげます。
保湿剤(白色ワセリン、プロペト):乾燥を防ぎます。
被覆剤: 基本的に不要です。露出したままで問題ありません。
Ⅱ度熱傷(水ぶくれがある状態)
• 軟膏: 油脂性軟膏(白色ワセリン、アズノール、エキザルベ):創面を乾かさないために多めに塗布します。
• 抗菌薬配合軟膏(ゲンタシン軟膏など):感染予防のために処方されることが一般的です。
• 被覆剤(ドレッシング材): ハイドロコロイド:浸出液を吸収し、湿潤環境を保ちます。
• ポリウレタンフォーム(ハイドロサイトなど):クッション性があり、浸出液が多い場合に適しています。
• 非固着性ガーゼ(メロリン、トレックスガーゼ):傷口にくっつかない特殊加工のガーゼ。軟膏をたっぷり塗ってから当てます。
Ⅲ度熱傷(皮膚が白・黒くなる、深い火傷)
• 軟膏: ゲーベンクリーム:強力な殺菌作用があり、感染を防ぎますが、深い傷用です。
• ブロメライン軟膏:壊死した組織を溶かして取り除くために使われます。
• 被覆剤: 専門的な処置が必要なため、外科的な管理(植皮術など)と併せて選択されます。
●受診の目安
以下のような場合は、すぐに皮膚科や形成外科を受診してください。
• 顔、手、関節、生殖器の火傷。
• 水ぶくれが大きく、範囲が広い(お子様の手のひらサイズ以上)。
• 数日経っても赤みが引かない、または膿が出てきた。
受診前・家庭での応急処置について
冷却・洗浄
• まずは冷却: 受傷後すぐ、水道水などの流水で冷やすことが最も重要です。
・受傷直後は水道水などの清浄な流水による冷却・洗浄が最も重要。熱傷深度の進行を防ぐとともに、創面の汚れも落とせる。
・乳幼児の場合低体温に注意(病院では創面を微温生理食塩水やシャワーで洗浄)。
・酸やアルカリによる化学熱傷の場合も流水による希釈と洗浄が第一
・冷却後は清潔なガーゼやタオルをあてて医療機関へ
保護
・受傷早期は、創面の保護と浸出液対策が重要。
・衣服の上からの熱傷の場合、冷却後に脱がせるか衣服をハサミで切る
• 「くっつかない」工夫: 普通のガーゼを直接当てると、剥がす際に再生した皮膚を剥がしてしまい、お子様が激痛を感じます。必ず軟膏をたっぷり塗るか、市販の「傷にくっつかないパッド」を使用してください。
・その上で、ガーゼが創面に固着しないよう、また圧迫しないように軽めに巻く。
やってはいけないこと
・消毒や民間療法は禁忌・
・熱傷創面を消毒すると、帰って創傷治癒を阻害し、創面への刺激や接触皮膚炎の原因となってしまうので要注意。
• 水ぶくれは潰さない: 水ぶくれの膜は「天然の被覆剤」です。無理に剥がすと感染のリスクが高まり、治りも遅くなります。
・病院での対応としては、水疱はハサミで少孔を開けて内用液を排出させるのみ。水疱膜は除去しない方がよい。
最後に
なお、日本熱傷学会からはガイドラインも発行されています。私は今まで熱傷ガイドラインがあることは知りませんでしたが、普段の診療で関わる機会もあると思うので、勉強しておきます。
<熱傷診療ガイドライン 改訂第3版〜日本熱傷学会〜>

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ちなみに、救急対応についてわかりやすく記載があるのは、上記の書籍です。
この書籍は当直・救急対応の時によく見ています。名著ですので、ぜひぜひご覧ください!


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