「赤ちゃんが寝ている時にピクつく。けいれん・てんかんでは??」
…という主訴で小児科外来を受診するケースは多くあるかと思います。
多くの場合『良性』であり、起こして止まるなら心配ないのですが、一方で、「起きている時にもピクつく」「抱っこしてもあやしても止まらない」「発育の遅れ(首がすわらない等)を伴う」場合は、専門的な検査が必要かもしれません。
今回は睡眠時ミオクロニーについてまとめていきます。
概念・分類
まず、臨床的に問題となる「睡眠中にピクッとする動き(ミオクローヌス)」は大きく以下の3つに分類されます。
- 生理的睡眠時ミオクロニー(入眠時ミオクローヌス)
- 全年齢で見られる正常な反応。
- 乳児良性睡眠時ミオクローヌス
- 新生児〜乳児期特有の良性疾患。てんかんではない。
- てんかん性ミオクロニー発作(Epileptic Myoclonus)
- てんかん症候群の一部として出現する病的な発作。
乳児良性睡眠時ミオクローヌス
特徴
- 好発年齢: 新生児〜生後3、4ヶ月頃まで(多くは生後6ヶ月までに自然消失)。
- 発生状況: 睡眠中(特にノンレム睡眠:nonREM睡眠)にのみ出現する。
- 症状: 上肢や下肢に、数回〜数分続く律動的または非律動的なピクつき(ミオクローヌス)が見られる。
- 最重要鑑別点: 刺激を与えて覚醒させると、発作(動き)は直ちに消失する。
- 脳波: 正常(発作時・発作間欠時ともに異常波が出ない)。
治療
- 経過観察: 治療の必要はない。
- 保護者への説明: てんかんではないこと、成長とともに自然に治ることを説明し、安心させることが治療の中心となる。
- 注意: 抗てんかん薬(特にフェノバルビタールやベンゾジアゼピン系)の投与は、逆に症状を悪化させるケースがあるため、誤診による投薬を避けることが重要。
生理的睡眠時ミオクロニー
特徴
- 対象: 小児から成人まで全年齢。
- 発生状況: 入眠時(覚醒から睡眠への移行期)。
- 症状: 全身または体の一部が「ビクッ」と大きく動く。落下感(落ちる感覚)を伴うことが多い。
- 誘因: 疲労、ストレス、カフェイン摂取、激しい運動後などに増強しやすい。
治療
- 治療不要: 生理現象であり、病的意義はない。
- 生活指導: 睡眠環境の改善やカフェイン制限などが有効な場合がある。
てんかん性ミオクロニー発作 (Epileptic Myoclonus)
特徴
- 発生状況: 覚醒時・睡眠時を問わず出現するが、症候群によっては入眠時や覚醒直後(例:若年ミオクロニーてんかん)に好発する。
- 症状: 瞬間的で電撃的な筋肉の収縮。持っている物を投げ飛ばしたり、膝が折れて転倒したりすることもある。
- 脳波: 全般性多棘徐波複合(Polyspike and wave complex)などのてんかん性異常波を認める。
- 関連疾患:
- 若年ミオクロニーてんかん (JME)
- レノックス・ガストー症候群 (Lennox-Gastaut syndrome)
- ドラベ症候群 (Dravet syndrome)
- 早期ミオクロニー脳症 (EME)
治療
- 薬物療法(抗てんかん薬):
- 第一選択: バルプロ酸ナトリウム (VPA / デパケン)
- その他: レベチラセタム (LEV / イーケプラ)、クロナゼパム (CZP / リボトリール / ランドセン)、トピラマート (TPM / トピナ) など。
- 禁忌・注意: カルバマゼピン (CBZ / テグレトール) やフェニトイン (PHT / アレビアチン) は、ミオクロニー発作を悪化させることがあるため、原則使用しない。
鑑別のためのチェックリスト(臨床的アプローチ)
保護者から「寝ている時にピクピクする」という相談を受けた際、以下のフローで鑑別を行います。
| チェック項目 | 良性 | てんかん性 |
| 出現タイミング | 睡眠中のみ | 覚醒時も出現しうる |
| 覚醒させた時の反応 | 止まる (Stop test 陽性) | 止まらない / 誘発される |
| ミオクロニーの質 | 四肢遠位が多い、群発する | 全身、四肢、体幹など様々 |
| 脳波所見 | 正常 | スパイク、鋭波などを認める |


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