【小児科医blog】「吸入ステロイド薬」の種類と正しい使い方+ステロイド使用量まとめ | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog】「吸入ステロイド薬」の種類と正しい使い方+ステロイド使用量まとめ

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「お子さんに喘息のお薬を出しておきますね。今回は吸入ステロイドを使いましょう」

診察室でそうお伝えすると、「えっ、ステロイドですか? 副作用は大丈夫なんでしょうか……」と不安そうな表情を浮かべるお母さんやお父さんは少なくありません。

結論から言うと、小児の気管支喘息において「吸入ステロイド薬(ICS)」は、発作を予防するための最も重要で安全な治療の柱です。飲み薬のステロイドとは異なり、気管支(肺)にだけ直接届くため、全身への副作用はごくわずかです。

この記事では、どのように子どもの年齢や症状に合わせて吸入薬を選んでいるのか、その種類や「治療を成功させるコツ」をわかりやすく解説します。


1. 年齢で決まる!「吸入デバイス(器具)」の選び方

大人の喘息治療と子どもの喘息治療の最大の違いは、「薬を正しく吸えるかどうか(吸入手技)」にあります。どんなに良い薬でも、気管支まで届かなければ意味がありません。

そのため、まずは年齢(発達段階)に合わせて一番確実な方法を選びます。

乳幼児(5歳未満):マスク付きスペーサー または ネブライザー

  • 小さなお子さんは、タイミングを合わせて息を吸い込むことができません。そのため、お薬を一度筒(スペーサー)の中に噴射し、数回深呼吸をして自然に吸い込める方法をとります。
  • 泣いてしまって吸入が難しい場合や、発作時などは、霧状のお薬が出る「ネブライザー(吸入器)」を使うのが最も確実です。

学童期(6歳以上〜):ドライパウダー(DPI)

  • 小学生になり、「大きく吸って、息を止める」という動作ができるようになれば、自分の吸う力で粉薬を吸い込むタイプが使えます。持ち運びにも便利です。


2. 代表的な吸入ステロイド薬の種類と特徴

子どもによく処方される代表的なお薬を紹介します。症状の重さ(ステップ)に合わせて、医師が「低用量・中用量・高用量」を細かく調整しています。

① 吸入ステロイド単剤(基本のお薬)

フルタイド(フルチカゾン)

  • 特徴: 小児喘息の治療で最もポピュラーなお薬の一つです。乳幼児にはスプレー缶タイプ(エアゾール)とスペーサーを組み合わせて使い、小学生以降は円盤型の器具(ディスカス)を使います。

デバイス: エアゾール(pMDI)、ディスカス(DPI)

特徴: エアゾールはスペーサーを用いて乳幼児から使用可能。ディスカスは学童期以降に処方されます。

小児の1日用量目安(学童・6〜15歳)

  • 低用量:100 μg/日
  • 中用量:200 μg/日
  • 高用量:400 μg/日

パルミコート(ブデソニド)

  • 特徴: 乳幼児の強い味方です。液体タイプ(吸入液)があり、ネブライザーを使って確実に吸入させたい場合によく選ばれます。

乳幼児の治療において欠かせない「吸入液」があるのが最大の特徴です。

  • デバイス: 吸入液(ネブライザー用)、タービュヘイラー(DPI)
  • 特徴: 吸入液は、pMDI+スペーサーでの吸入が困難な乳幼児や、発作時・重症例でネブライザーを用いて確実に投与したい場合に選択されます。
  • 小児の1日用量目安(吸入液・5歳以下)
    • 低用量:0.25 mg/日
    • 中用量:0.5 mg/日
    • 高用量:1.0 mg/日

オルベスコ(シクレソニド)

  • 特徴: 肺の奥に届いてから効果を発揮するタイプで、口の中や全身への副作用がさらに少ないのが特徴。1日1回の吸入で良いため、保育園や習い事で忙しいご家庭でも続けやすいお薬です。

肺に到達してから活性化する「プロドラッグ」であり、局所や全身の副作用が少ないのが特徴です。

  • デバイス: エアゾール(pMDI)
  • 特徴: 粒子径が非常に小さく、気道の末梢まで届きやすいです。また、1日1回投与が承認されているため、アドヒアランス(服薬継続)の向上に寄与します。
  • 小児の1日用量目安(小児全般)
    • 低用量:100 μg/日
    • 中用量:200 μg/日

キュバール(ベクロメタゾン)

  • 特徴: 粒子が非常に細かく、気管支の奥の奥(末梢気道)までしっかり届きやすいお薬です。

デバイス: エアゾール(pMDI)

特徴: こちらも粒子が細かく、末梢気道への到達率が高いHFA(代替フロン)製剤です。スペーサーを用いた吸入が推奨されます。

小児の1日用量目安(小児全般)

  • 低用量:100 μg/日
  • 中用量:200 μg/日
  • 高用量:400 μg/日

② 合剤(ステロイド+気管支拡張薬)

基本のステロイド単剤(中用量以上)を使っても、咳で夜中起きてしまうなどコントロールが不十分な場合、気管支を広げるお薬がセットになった「合剤」へステップアップします。(※主に幼児期後半〜学童期以降)

アドエア(フルチカゾン / サルメテロール)

  • 合剤の代表格。小児用のスプレー缶タイプもあり、スペーサーを使った吸入が可能です。

小児喘息において最も広く使われている合剤です。年齢や吸入手技に合わせて「スプレー缶(エアゾール)」と「粉薬(ディスカス)」を使い分けます。

  • アドエア50エアゾール (低用量)
    • 対象: 主に乳幼児〜幼児(スペーサー使用)
    • 小児の用量: 通常、1回1吸入を、1日2回(朝・夕)。
    • 調整: 症状に応じて、最大「1回2吸入(1日計4吸入)」まで増量可能です。
  • アドエア100ディスカス (ドライパウダー:中用量)
    • 対象: 学童期(「大きく吸い込む」ことができる年齢)以降
    • 小児の用量: 通常、1回1吸入を、1日2回(朝・夕)。

シムビコート(ブデソニド / ホルモテロール)

  • 気管支を広げる即効性が高いため、毎日決まった時間に吸うだけでなく、発作が起きたときに追加で吸う使い方ができる場合があります(年齢等の条件あり)。

【小児適応:なし(原則15歳以上・成人が対象)】 日本国内では小児に対する臨床試験が行われておらず、添付文書上は小児の用法・用量が設定されていません。一般的な小児(乳幼児〜小学生)に処方されることは原則ありません。

  • シムビコート タービュヘイラー(※参考:15歳以上の成人用量)
    • 対象: 15歳以上(または体格が大人と同等の思春期以降に、専門医の判断で適応外使用されるケースあり)
    • 成人の通常量: 1回1〜4吸入を、1日2回(朝・夕)。
    • 発作時の追加(SMART療法): いつもの定期吸入に加え、発作が起きた際に「1吸入」を追加できる特別な使い方が認められています(1日の合計が最大8〜12吸入を超えない範囲)。

フルティフォーム(フルチカゾン / ホルモテロール)

  • こちらも即効性と強力な抗炎症作用を併せ持ち、小児向けの適応があります。

気管支拡張の「即効性」と、ステロイドの「強力な抗炎症作用」を併せ持つスプレー缶タイプのお薬です。

  • フルティフォーム50エアゾール
    • 対象: 小児全般(乳幼児はスペーサー使用)
    • 小児の用量: 通常、1回2吸入を、1日2回(朝・夕)。
    • 注意点: アドエアと異なり、基本の用量が「1回2プッシュ」である点に注意が必要です。(※成分量の多い「125エアゾール」という規格もありますが、こちらは小児適応がありません)


3. 治療を成功させるための「3つの約束」

最後に、おうちで気をつけていただきたい重要なポイントです。

  1. 「うがい」は必ずセットで!
    • 口の中にステロイドが残ると、声がかすれたり、カビ(カンジダ)が生えたりすることがあります。吸入の後は「ガラガラ・ブクブクうがい」をしましょう。うがいができない赤ちゃんは、吸入の直後にミルクやお茶を飲ませたり、ご飯を食べさせたりすればOKです。
  2. 自己判断でやめない(ステップダウンの原則)
    • 吸入を始めると、すぐに咳がピタッと止まることがあります。しかし、気管支のボヤ(炎症)はまだくすぶっています。 症状がない状態を3〜6ヶ月キープできたら、医師の判断で少しずつお薬の量や強さを減らしていきます(ステップダウン)。絶対に自分の判断でやめないでください。
  3. 定期的な身長のチェックを
    • 吸入ステロイドによる最終的な身長への影響は「ほとんどない」とされていますが、長期間、多めの量を使う場合は、念のため成長曲線を一緒に確認していきます。気になることがあればいつでも小児科医に相談してください。

おわりに

喘息の治療は「発作を抑える」ことから「発作を起こさない気管支を作る」ことへ変わってきています。お子さんの年齢やライフスタイルに合ったお薬を一緒に見つけ、元気に走り回れる毎日を守っていきましょう!

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