【小児科医🍎blog】「食べない」はワガママじゃない。こどもの摂食障害に気づくための5つのサイン | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医🍎blog】「食べない」はワガママじゃない。こどもの摂食障害に気づくための5つのサイン

児童精神・発達

こんにちは!2歳の娘の絶賛イヤイヤ期と日々格闘中の小児科医りんご🍎です。

毎日のお子さんのサポート、本当にお疲れ様です。

小児科外来で診療していると、保護者の方からこんな相談を受けることがあります。

「うちの子、急にご飯の量を減らし始めて…」

「『味が嫌だ』と言って、特定の決まったものしか食べなくなったんです」

ただの偏食?思春期特有のダイエット?

いいえ、もしかするとそれは「摂食障害」という、脳と心のSOSサインかもしれません。

「摂食障害=若い女性の病気」というのは一昔前の常識です。

今は小学生や中学生といった低年齢層の男女でも増加しています。

今日は、お子さんの心と体の健康を守るために、親として知っておきたい「こどもの摂食障害」についてのの情報と、家庭でできるサポートについて、ゆるっと、でも詳しく解説していきます。

まずはチェック!見逃してはいけない5つのサイン

こどもの摂食障害は、「体重が減ってガリガリになる」よりずっと前からサインが出ています。お子さんに以下の様子はありませんか?

  • 食事の儀式化: 食べ物を異常に細かく刻む、食べる順番にこだわる、カロリー表示を必ず確認する。
  • 隠れての行動: 家族と一緒に食事をしたがらない。食後すぐにトイレに駆け込む(嘔吐の疑い)。
  • 急激な体調変化: 寒がりになる、立ちくらみが増える、産毛が濃くなる。女の子なら、月経が止まる(あるいは初経が来ない)。
  • 性格の変化: 以前より完璧主義になった、イライラしやすくなった、成績や友人関係への関心が薄れた。
  • 特定の食感・味への極端な拒否: 「これを食べたら吐くかも」と怯え、食べられるものが極端に減る。

ひとつでも当てはまり、それが長く続いているなら、少し注意が必要です。

摂食障害で生じる主な身体症状

摂食障害情報ポータルサイト(🔗https://edcenter.ncnp.go.jp/edportal_pro/treatment.html)から、症状一覧表を参照します👇️

入院が望ましい身体症状

「摂食障害」の正体は?タイプ分類

医学的に「摂食障害」と呼ばれる状態には、大きく分けて3つのタイプがあります。

摂食障害情報ポータルサイト(🔗https://edcenter.ncnp.go.jp/edportal_pro/treatment.html)から、分類などの一覧表を参照します👇️

① 神経性やせ症(いわゆる拒食症)

「太ること」への極端な恐怖があり、客観的には痩せているのに「自分は太っている」と思い込んでしまいます(ボディイメージの障害)。病気だという自覚(病識)がないことが多く、本人は「もっと頑張って痩せなきゃ」と信じ込んでいます。

【小児科医blog:精神, 栄養, 電解質, PICU】神経性やせ症(Anorexia nervosa:AN)について
臨床的特徴神経・精神症状・摂食行動の異常(摂食量低下、食物のこだわり、食事時間の延長、食物破棄、食べさせ行為等)・体重増加の恐怖・ボディイメージの障害・過活動・認知機能障害・抑うつ、不安・強迫症、焦燥・希死念慮、無気力検査・頭部CT、MRI...

② 神経性過食症(いわゆる過食症)

ストレスなどから大量の食べ物を詰め込み(むちゃ食い)、その後、体重増加を防ぐために自分で吐いたり、下剤を乱用したりします。本人は激しい自己嫌悪を感じており、親に隠れて行うことが多いです。

③ 回避・制限性食物摂取症(ARFID:アーフィッド)

近年、小児科で非常に注目されている概念です。体型や体重へのこだわりはありません。

しかし、食べ物の「色・匂い・食感」への極端な感覚過敏があったり、過去に「喉に詰まらせた・吐いた」というトラウマがあったりして、結果的に必要な栄養がとれなくなってしまう状態です。単なる「好き嫌い」とは異なります。

BMIでの重症度分類

標準体重を元にした活動制限

大人と何が違う?成長期のこどもの経過で重要なポイント

「お腹が空けば、そのうち食べるでしょ」 そう思って様子を見ているうちに、こどもの体には生涯取り返しのつかないダメージが蓄積されることがあります。

ここが、大人の摂食障害と最も違う恐ろしい点です。

  • 成長のストップ(低身長): 骨が伸びる時期に栄養が足りないと、本来伸びるはずだった身長まで到達できません。
  • 骨粗鬆症のリスク: 10代は一生の骨の貯金(最大骨量)を作る大切な時期。ここで栄養不足や無月経が続くと、将来若くして骨折を繰り返すことになります。
  • 脳の萎縮: 栄養不足により、物理的に脳が縮むことがMRI画像で確認されます(栄養状態が戻れば改善することが多いです)。
  • 重篤な不整脈・突然死: 極端な栄養不良や頻繁な嘔吐により、体内の電解質(カリウムなど)のバランスが崩れ、心臓が止まってしまうリスクがあります。

検査・治療

「食べないから病院へ行く」ということに抵抗があるかもしれません。しかし、小児科医は「食べなさい!」とこどもを怒るためにいるのではありません。

検査

まずは命に関わる状態ではないかをチェックします。

  • 血液検査: 貧血、肝機能障害、低血糖、電解質異常がないか。
  • 心電図: 危険な不整脈や徐脈(脈が異常に遅くなること)が起きていないか。
  • その他の検査: 必要に応じて骨密度検査や、頭部MRIなどを行います。

治療

治療は長期戦です。「体」と「心」の両面から、医師、公認心理師、管理栄養士らがチームでサポートします。

体の回復(栄養療法)

まずは命を守ります。しかし、飢餓状態の体に急に大量の栄養を入れると、「リフィーディング症候群」という致死的な合併症(心不全など)を起こす危険があります。そのため、入院設備の整った病院で、医師の厳重な管理のもと、少しずつカロリーを増やしていく必要があります。

心の回復(心理療法・家族療法)

こどもの摂食障害において、現在世界的に最も効果が高いとされているのが「家族療法(FBT: Family-Based Treatment)」です。こどもを親から引き離すのではなく、「親を治療の最高のパートナー(資源)」として巻き込み、家族全員で病気に立ち向かうアプローチです。

Refeeding症候群(RFS)

・ANの患者に栄養を与えていく際はRefeeding症候群に注意が必要

・RFSは重度の栄養障害で異化が亢進している患者における、栄養投与後に生じる生命を脅かす代謝性合併症とされており、慢性疾患患者でより発生頻度が高い。

・Naおよび体液の貯留と臓器障害を伴う電解質異常が特徴とされる
・Vit.B1欠乏が臨床像に影響を与えることもある

病態

・異化(絶食/ストレス/炎症など)が起きているときには、細胞内イオン(K/P/Mg)やNa、微量元素などが失われていく。

・栄養療法が始まるグルコース血液中に増えていき、インスリン分泌が刺激される。

 →そしてグルコースと電解質の細胞内移動/腎排泄の減少によるNaと水の保持が起きる。
 →さらに低P血症・低K血症・低Mg血症と細胞外液量の過多が生じる。

・また解糖系やTCA回路に必要なチアミンは、飢餓状態では貯蔵量が少なく、糖代謝が促進されることで急性欠乏症に陥る可能性がある。結果的に乳酸が生成されてグルコース代謝が損なわれ、乳酸アシドーシスが発生するリスクもある。

・重症患者で高血糖が起きると、superoxideの過剰産生が誘発される可能性もあり、心臓・呼吸器・血液・肝臓・神経筋系に悪影響及ぼす場合もある。

栄養療法の具体的プラン例

・Refeeding症候群の予防のため、栄養療法は少ない栄養量から開始し、徐々に増量していきます。

軽度or中等度のやせ(標準体重の70%以上)

・1400-1800 kcal/dayの栄養量で開始

・1日おきに200-400 kcal/dayずつ増量

・1-2kg/weekの体重増加を目標とする

重度のやせ(標準体重の70%未満)

・1000-1200 kcal/day(or 20-25 kcal/kg/day)の栄養量で開始

・1日おきに200 kcal/dayずつ増量

・1 kg/weekの体重増加を目標

・RFSの症状として浮腫や腹水を認める場合もあるため、想定以上に体重増加がある場合は注意が必要。

家庭でできること

もし、お子さんが摂食障害かもしれないと思ったら。 保護者の方に一番にお伝えしたいのは、

「私の育て方が悪かったのかも」と絶対に自分を責めないでください、ということです。

摂食障害は育て方の失敗ではなく、遺伝的要因、性格、社会的ストレスなどが複雑に絡み合って発症する「病気」です。

では、家庭ではどう接すればいいのでしょうか。私が日頃から大切にしているアドラー心理学の「横の関係」と「勇気づけ」の視点からお話しします。

❌ NGな接し方(縦の関係・コントロール)

  • 「どうして食べないの!食べなきゃ病気になっちゃうよ!」(正論による説得)
  • 「一口でも食べたらスマホ見ていいよ」(条件付きの取引)
  • 「せっかく作ったのに!」(罪悪感を煽る)

病気によって脳が「食べることが怖い」と誤作動を起こしている状態の子に、正論をぶつけても追い詰めるだけです。

⭕️ OKな接し方(横の関係・共感と勇気づけ)

  • まずは病気を「外在化」する: こどもと病気を切り離して考えます。「あなたが悪いんじゃない。あなたの中にある『病気(摂食障害)』が、食べることを怖くさせているんだね」と伝えます。
  • 本人の辛さに共感する: 「食べられなくて、一番辛くて怖いのはあなた自身だよね」と同じ目線で寄り添います。
  • 小さなステップに注目する: 食べられなかった結果ではなく、「食べようと食卓についたこと」「一口だけ口に運べたこと」というプロセスに注目し、「一緒に頑張ろうね」「少しでも口にできてよかったね」と勇気づけます。

親が「こどもを評価する裁判官」ではなく、「一緒に困難に立ち向かう味方」になることが、最大の治療薬になります。

最後に:一人で抱え込まないで

こどもの摂食障害は、親御さんにとっても想像を絶するストレスと不安を伴います。家庭だけで解決しようとせず、少しでも「おかしいな」と感じたら、まずは私たち小児科医に頼ってください。

「食べない」というサインの裏にある、こどもの本当のSOSに一緒に耳を傾けていきましょう。

(※この記事は医学的知識に基づいて作成していますが、個別の症状については必ず医療機関を受診してご相談ください。)

参考

摂食障害情報ポータルサイト:🔗https://edcenter.ncnp.go.jp/edportal_general/

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