「今年、インフルエンザワクチンはいつ打とう?」
秋になると、外来でこの質問が一気に増えます。
特に子どもの場合、
- 9月に打ってもいい?
- 10月と11月ならどちらがいい?
- 2回接種はなぜ必要?
- 1回目と2回目は何週間あける?
- ワクチンを打ってもインフルエンザになるの?
- 鼻から入れるワクチンってどうなの?
- 副反応は大丈夫?
など、分からないことや疑問に思うことががたくさんありますよね。
だからこそ、「ワクチンを打つ意味」を正しく理解することが大切です。
この記事では、小児科医として保護者の方からよく聞かれる疑問を中心に、できるだけ分かりやすく解説します。
- まず、結論だけ知りたい方へ
- そもそも、インフルエンザワクチンは何を防ぐ?
- 「ワクチンを打ったのにインフルになった」は失敗?
- 効果持続期間:「では、どのくらい効くの?」
- 子どもはなぜ「2回接種」なの?
- 2回接種なら、どれくらい間隔をあける?
- 一番気になる「何月に打つ?」問題
- 9月、10月にワクチンを打つのは早すぎる?
- 接種時期:9月・10月・11月、どれがいい?
- 「効果は何か月続く?」について
- 「ワクチンを打ったから、もう感染対策はいらない?」
- 注射と「鼻からのワクチン」、どっちがいい?
- インフルエンザワクチンの副反応は?
- 「ワクチンでインフルエンザになった」は本当?
- 他のワクチンと同時接種できる?
- こんな家庭は、早めに計画しておくと安心
- 🍎 結局、何月に打てばいい?
- 🍎 最後に、これだけ覚えてください
- この記事のポイント
まず、結論だけ知りたい方へ
最初に重要なところだけまとめます。
【🍎 インフルエンザワクチン7つのポイント】
① ワクチンを打っても、インフルエンザを完全に防ぐことはできません。
ただし、発病を減らしたり、重症化を防いだりする効果が期待できます。
② 子どもにも、しっかりと予防効果があります。
ただし、その効果は毎年同じではありません。
流行しているウイルスとワクチン株の一致度、年齢、過去の感染・接種歴などによって変わります。「毎年必ずこのくらい効く」というものではありません。
③ 日本では13歳未満は原則2回接種です。
1回目より2回接種後のほうが高い抗体価が得られるためです。
6ヶ月以上3歳未満は0.25mL/回、3歳以上は0.5mL/回です。
④ 2回接種する場合は、1回目と2回目を2〜4週間あけます。
日本小児科学会は4週間(2〜4週)を標準的な間隔として示しています。
⑤ 「9月は早すぎる」と一律には言えません。
日本では例年12〜3月頃に流行し、1月末〜3月上旬頃にピークを迎えるため、厚生労働省は12月中旬までに接種を終えることが望ましいとしています。しかし、近年は流行のピークがくるのが早く、秋にはワクチン接種を行ったほうが望ましい状況に変化してきました。
⑥ 早く打ちすぎるとシーズン後半に効果が低下する可能性があります。
ワクチンによる免疫は時間とともに低下することが知られています。
そのため、「早ければ早いほどいい」という単純な話でもありません。
ではどのくらいワクチンの効果が持続するのか?というのはこの後に教えます。
⑦ 2024年から日本でも「鼻からのワクチン」が使えるようになりました。
2歳以上19歳未満が対象で、シーズンごとに1回接種します。
ただし、喘息や免疫不全などでは注意が必要です。
そもそも、インフルエンザワクチンは何を防ぐ?
ここを理解すると、ワクチンに対する疑問の多くが解決します。
インフルエンザでは、
ウイルスが体内に入る
↓
ウイルスが増える
↓
症状が出る
↓
場合によっては重症化する
という流れがあります。
医学的には、
感染:ウイルスが体内に入り、増殖する状態
発病:発熱や咳などの症状が出る状態
重症化:肺炎や脳症など、重い合併症を起こす状態
と分けて考えます。
現在のインフルエンザワクチンは、感染そのものを完全に防ぐことはできません。
一方で、発病を抑える効果に加えて、「重症化を防ぐ効果」が期待されています。
ここは非常に重要です。
「ワクチンを打ったのにインフルになった」は失敗?
これはインフルエンザワクチンを理解するうえで、ぜひ知っておいてほしいことです。
たとえば、
「去年ワクチンを打ったのに、インフルエンザになりました。意味ないですよね?」
という相談。
実際には、「ワクチンを打ったのに発病した」=「ワクチンに効果がなかった」とは限りません。
ワクチンには、
① 発病する可能性を下げる
という効果があります。
そして、
② 発病した場合の重症化を防ぐ
という効果も期待されています。
つまり、
「絶対にかからないためのワクチン」ではなく、「かかりにくくする、そして重症になりにくくするためのワクチン」
と考えると分かりやすいでしょう。
効果持続期間:「では、どのくらい効くの?」
ここは数字だけを見ると誤解しやすいところです。
インフルエンザワクチンの有効性は、毎年一定ではありません。
たとえば日本の2023/24シーズンの小児研究では、インフルエンザAに対する有効性は入院で51%、外来で54%、インフルエンザBでは入院60%、外来56%と推定されました。
一方、2024/25シーズンの別の日本の研究では、インフルエンザAに対する有効性は入院で73%、外来で57%でした。
このように、同じ「インフルエンザワクチン」でも、シーズンによって数字が変わります。
なぜでしょうか?
主な理由は、
- 流行したウイルスの種類
- ワクチン株との抗原性の一致
- 年齢
- 過去の感染・接種歴
- 研究方法
などが異なるからです。
したがって、
「インフルエンザワクチンは○%効く」
と一つの数字だけで説明するのは正確ではありません。
子どもはなぜ「2回接種」なの?
ここも大切です。
日本では、13歳未満の子どもは原則2回接種です。
理由は、「1回接種後より、2回接種後のほうが高い抗体価が得られる」ためです。
特に、これまでインフルエンザワクチンを受けたことがない小さな子どもでは、免疫をしっかりつけることを考えて2回接種が基本となります。
ただし、「2回打てば必ず2倍効く」という意味ではありません。実際の発病予防効果は、年齢や流行ウイルスなどによって変わります。
2回接種なら、どれくらい間隔をあける?
日本小児科学会の2026年4月版スケジュールでは、
1回目 → 2〜4週間 → 2回目
とされています。
標準的には4週間あけます。
ただし、実際には医療機関の予約状況などもあります。
重要なのは、「2回目が必要な子は、流行が本格化する前に2回目まで終えられるよう計画する」ということです。
一番気になる「何月に打つ?」問題
ここからが本題です。
「9月に打つのは早い?」
「10月がベスト?」
「11月まで待ったほうがいい?」
これは非常に悩ましいところです。
日本ではインフルエンザは例年、12月〜3月頃に流行し、1月末〜3月上旬頃にピークを迎えてきました。
そのため、12月中旬までに接種を終えることが一つの目安とされてきたのです。
しかし、最近はインフルエンザの流行も前倒しで来ることが多く、2026年も夏〜秋頃からインフルエンザの流行がみられ始めています。従来の12月までに接種という常識は、少しずつ変化してきているのです。
9月、10月にワクチンを打つのは早すぎる?
結論:一律に「早すぎる」とは言えません。
インフルエンザワクチンは、接種から時間が経つにつれて免疫が低下する可能性があります。
そのため、一般的に1回接種で済む人については、米国CDCは9〜10月の接種を推奨しています。
また、CDCでは、2回接種が必要な6か月〜8歳の子どもについて、2回目を4週間以上あけて接種する必要があるため、流行前に2回目まで終えられるよう、早めに1回目を開始することを勧めています。
ここから分かるのは、「早すぎるから絶対ダメ」ではないということです。
接種時期:9月・10月・11月、どれがいい?
大まかに考えると、
🍎 9月
メリット
- 早く免疫を準備できる
- 2回接種が必要な子でもスケジュールを組みやすい
注意点
- 流行シーズン後半までの期間が長くなる
- 免疫の低下を考慮する必要がある
🍁 10月
メリット
- 流行前に免疫をつけやすい
- 冬の流行までの期間とのバランスを取りやすい
注意点
- 2回接種の場合、2回目の時期も考える必要がある
❄️ 11月
メリット
- 1〜3月の流行までの期間を短くできる
注意点
- 2回接種の場合、2回目が12月以降になる可能性がある
- その地域で早く流行が始まる年には、接種完了前に流行する可能性がある
「効果は何か月続く?」について
これもよく聞かれます。
答えは、「○か月で突然切れる」というものではありません。です。
接種後にできた免疫は、時間とともに徐々に低下します。
ただし、その速度は年齢やシーズン、ウイルスの種類などによって異なります。
小児についても、接種後時間が経つにつれて効果が低下する可能性を示す研究がありますが、
「6か月経ったら完全に効果がなくなる」といった単純な線引きはできません。
だからこそ、「早く打ちすぎない」だけでなく、
「遅すぎて流行前に接種できない」ことも避ける必要があります。
「ワクチンを打ったから、もう感染対策はいらない?」
もちろん、そうではありません。
インフルエンザ対策は、「ワクチン+日常の感染対策」で考えるのが大切です。
日本小児科学会も、
- 手指衛生
- 咳エチケット
- 必要に応じたマスク
などを引き続き重要な対策として挙げています。
家庭では、
帰宅後の手洗い+十分な換気+体調不良時の無理な登園・登校を避ける
など、できることから取り入れましょう。
注射と「鼻からのワクチン」、どっちがいい?
2024年から日本でも、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト®点鼻液」が使用できるようになりました。
これは注射ではなく、左右の鼻に1回ずつ噴霧するタイプのワクチンです。
日本小児科学会の2026年4月版スケジュールでは、
「2歳以上19歳未満:シーズンごとに1回」となっています。
経鼻ワクチンは「注射より効く」の?
現時点では、「経鼻ワクチンのほうが明らかに優れている」とはいえません。
日本小児科学会は、2〜19歳未満では、不活化ワクチンと経鼻弱毒生ワクチンの間に、インフルエンザ罹患予防効果について明確な優位性は確認されていないとしています。
そのため、「注射が苦手だから経鼻ワクチン」という選択肢はありますが、「経鼻のほうが絶対に効果が高い」という理解は避けたほうがよいでしょう。
経鼻ワクチンに注意が必要な子
経鼻弱毒生ワクチンは、すべての子どもに適しているわけではありません。
日本小児科学会は、
- 2歳未満
- 免疫不全
- 無脾症
- 妊婦
などでは不活化ワクチンを推奨しています。
また、喘息のある子どもでは不活化ワクチンが推奨されています。※点鼻が絶対ダメな訳ではありません!!
さらに、経鼻ワクチンは弱毒化した生ワクチンなので、周囲に免疫不全者がいる場合などには接種方法を医師と相談する必要があります。
インフルエンザワクチンの副反応は?
最も多いのは、接種した場所の反応です。
たとえば、「発赤」「腫脹」「疼痛」など。
厚生労働省によると、局所反応は10〜20%程度にみられ、通常2〜3日で消失します。
発熱、頭痛、悪寒、倦怠感などの全身症状は5〜10%程度にみられ、こちらも通常2〜3日で消失します。
「ワクチンでインフルエンザになった」は本当?
注射:不活化ワクチンの場合
ワクチンそのものでインフルエンザを発症することはありません。不活化ワクチンには、体内で増殖してインフルエンザを起こすようなウイルスは含まれていないためです。
ただし、接種後に発熱することはあります。
また、接種した直後に別のウイルス感染症にかかっていた場合、「ワクチンを打ったら熱が出た」
…ように見えることもあります。
接種後、こんな症状があったら?
まれですが、アナフィラキシーなどの重いアレルギー反応が起こることがあります。
たとえば、
- 全身のじんましん
- 顔や唇の腫れ
- 呼吸が苦しい
- 意識がおかしい
など。
このような症状があれば、速やかに医療機関へ相談・受診してください。
厚生労働省は、アナフィラキシーなどは接種後比較的早く起こることがあるため、接種後30分程度は接種医療機関で安静にすることを案内しています。
他のワクチンと同時接種できる?
結論:はい。大丈夫です。
インフルエンザワクチンは、他のワクチンとの接種間隔に関する制限が撤廃されています。
また、6か月以上の小児では、新型コロナワクチンとの同時接種も可能です。日本小児科学会も、インフルエンザワクチンと他のワクチンの接種間隔に制限はないとしています。
つまり、
「インフルエンザワクチンを打ったから、次のワクチンまで2週間待たなきゃ」
という考え方は現在は必要ありません。
こんな家庭は、早めに計画しておくと安心
特に、
・初めてインフルエンザワクチンを受ける子
・13歳未満で2回接種が必要な子
・保育園・幼稚園・学校などで集団生活をしている子
・基礎疾患があり、インフルエンザ重症化のリスクが高い子
では、「流行してから考える」より「秋のうちに計画する」ほうが現実的です。
🍎 結局、何月に打てばいい?
ここまで読んで、「結局いつワクチン打つのが良いの?」と思った方へ。
小児科医としてシンプルにまとめると、
2回接種が必要な子
9〜10月頃から1回目を検討
↓
2〜4週間後に2回目
1回接種でよい子
9〜10月頃が一つの目安
ただし、11月になっても接種する意味はあります。
流行開始時期は毎年変わるため、カレンダーだけでなく地域の流行状況も考慮します。
🍎 最後に、これだけ覚えてください
インフルエンザワクチンは、
「絶対にインフルエンザにならないためのワクチン」ではありません。
でも、
発病を減らす。
重症化を防ぐ。
という大切な役割があります。
そして小児では、
「何月に打つか」だけでなく、
「必要な回数を流行前に終えられるか」
がポイントです。
だから、「9月は早すぎるからダメ」でも、「11月まで待つのが正解」でもありません。
その子に必要な回数を考えて、流行前に接種を完了できるよう計画する。
これが一番シンプルです。
今年のインフルエンザシーズンも、
ワクチン+手洗い+換気+体調管理
で、できる範囲の対策をしていきましょう🍎
この記事のポイント
- インフルエンザワクチンは感染を完全に防ぐものではない
- 発病予防と重症化予防が期待できる
- 効果はシーズンや年齢などによって変わる
- 日本では13歳未満は原則2回接種
- 2回接種は2〜4週間あける
- 9月が一律に早すぎるわけではない
- 日本では12月中旬までに接種完了が一つの目安
- 2回接種が必要な子は、早めに1回目を始めることが重要
- 経鼻ワクチンは2歳以上19歳未満で選択肢になる
- 喘息や免疫不全などではワクチンの種類について医師に相談する
- ワクチンを打っても、手洗いや換気などの感染対策は大切


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