日本小児科学会雑誌 Injury Alertより参照です
今回も実際の症例をチェックしておきましょう!
※「(→)」の記載は個人の感想です。
事例
年齢:4 歳 性別:男
(→4歳は、色々なことに興味が湧き、また運動性も活発な年齢です)
傷害の種類
刺傷
原因対象物
歯ブラシ
(→歯ブラシでの口腔内外傷の症例は多いです。また、口腔内細菌がブラシ部分に付着しているため、口腔内を傷つけた際には膿瘍形成に注意が必要です)
臨床診断名
上咽頭異物
病歴と経過
夕食後に歯磨きをしていた.いつも,歯磨きは踏み台を使用して洗面所で行っている.
夕食後,洗面所で歯磨きを開始した.そのとき母が居間に移動したため,本児も母の後に
ついて居間に移動した.
1 人かけソファの袖の部分(50cm の高さ)に立って歯ブラシをくわえていた.
泣き声で母が振り向くと,歯ブラシを口にくわえたまま,フローリングの床にうつ伏せに転倒していた.
(→体重がかかると、口の中に穴を開けてしまうほど強い力がかかる場合がありますね。)
仰向けにしたところ,歯ブラシの柄の部分が口から見えており,児は唸っていた.あわてて突き刺さっている歯ブラシの柄の部分をつかんで 2 ~ 3 回ひっぱった.その時,ひねってはいないが引っかかる感じがあった.歯ブラシの先端(約 3cm)が無く,口の中には何も残っていなかった.救急車を呼んでいいのかわからず,#7119 に連絡したところ“救急車の要請”を指示され,前医に搬送となった.
歯ブラシは,1 か月以上使用した物で,長くても2~3 か月間の使用であり,子ども用のアンパンマンの歯ブラシであった
母親は「このような事故は初めてである.割り箸が刺さった事故もあり,危ないなと気を
つけてはいたが…」と話された.
(→親への注意よりもまず、適切な診察の方に集中。。。。。。)
治療経過と予後
1 月 27 日に救急車にて小児科を受診し,胸部 XP,腹部 CT の検査を施行した.異物の残存はなく,経過観察でよいと指示された.
1 月 28 日,家族が心配して耳鼻科を受診した.診察にて,口蓋垂左に発赤,ファイバースコープにて上咽頭の挫創が認められた.頭部単純 CTを施行したところ異物が認められ,毛がついているように見えるため歯ブラシの可能性が示唆された.
救急車にて搬送された.来院時,意識は清明,歩行でき,通常の発語が可能であった.気道,呼吸,循環に異常は認められなかった.入院し,全身麻酔下に摘出術が行われた.歯ブラシ片は,第 1 頸椎左方,左茎状突起背側,左内頸動静脈の背側に位置していた.
(→口腔内には重要な血管系が近くに走行している。そのため、歯ブラシで傷つけていないかどうか、注意の必要があります。)
摘出された歯ブラシ先端部は約 2.5cmであった.合併症として,膿瘍形成が認められた.
(→膿瘍形成は受傷当日には起きないので、歯ブラシ外傷で外来受診した際には、発熱がないかを確認の必要性あり。場合によっては経過観察の入院で熱型を確認しても良い。外来でみる場合は、必ずフォローアップの予定を設ける。もし発熱が認められる際には嫌気性菌もカバーした抗菌薬を選択する。)
歯ブラシ外傷について
歯ブラシに起因する傷害は,以前からよく知られている.
疫学・頻度
・日本小児科学会の各地方会では,歯ブラシの刺傷による咽後膿瘍の症例報告が,毎年,何件か散見される.東京消防庁からは,2006 年から 2010年の 5 年間に,5 歳以下の乳幼児について,歯磨き中の外傷で搬送された事例は 217 件(1 か月に 3―4件)と報告されている.
・2007 年―2011 年(2011 年は推定値)では,救急搬送された者が 229 人,うち1 歳が 108 人,2 歳が 62 人,3 歳が 30 人,4 歳が 13 人,0 歳が 11 人,5 歳が 5 人となっていた.
・歯の外傷と同じで,1 歳,2 歳が最も多くなっていた.原因としては,歯磨き中の転倒が 148 人(65%),歯磨き中に人やものにぶつかるが 23 人(10%),踏み台からの転落が 11 人(5%)となっていた.
特徴
日常的に子どもの身の回りに存在し,その製品に尖った部分があって,ある程度の硬さがあれば刺傷に
つながる可能性がある.
口や顔の近くで使用するものであれば,眼球,耳孔,鼻孔,口腔,口腔を経た咽頭などへの刺傷の危険性が高くなる.
歯ブラシ以外の日常で口腔内刺傷に関わる物
・子どもの口腔の刺傷に関与するものとして,わが国では,歯ブラシ,箸,割り箸,フォーク,鉛筆,綿菓子の芯の割り箸,おもちゃの太鼓のばちなどが代表的なものである.
・歯ブラシは,箸,フォーク,鉛筆などと違って細くなく,保護者はそれほど危険とは思っていないことが多いので,歯ブラシは危険という認識を持たせる必要がある.
今後の予防・対策
同じ傷害が起こり続けているため,歯ブラシの改善が検討されている.
歯ブラシが,把持した部位より深く口腔内に侵入することを防ぐリングを装着したもの,柄の材質を軟らかなものにするなど製品開発が進んでいる.
今後,乳幼児が使用する歯ブラシに関しては業界規準を作成し,予防の工夫がなされているもののみが製造,販売されるようにする必要がある


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