発達障害の診療 | ゆるっと小児科医ブログ
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発達障害の診療

小児

Introduction

今回は、発達障害の診療手順についてまとめます。

  1. 診断とその説明
    • 初回の診察では、病院に来るまでのエピソードや発達歴を聴取しながら、子育ての大変さに共感し、現在の発達特性につながるものかどうかを確認する。
    • 現在の見立てを親御さん、子供の話から考える。あくまで親御さんのせいではなく、その子の発達特性と環境によるということを大事に診察。
    • 児童精神科医のいる施設と連携し診察を進める。
  2. 知能検査や発達検査などのアセスメント
    • 年齢に応じた適切な知能検査、発達検査を行う。
    • 田中ビネー知能検査
      • 対象年齢:2歳〜成人まで
      • 14歳未満は知能指数として精神年齢mental age(MA)を生活年齢chronological age(CA)で割って算出する比率IQ方式を採用している。
      • 知能を注意・想像、推理、判断などのさまざまな知能活動の基盤となる一般知能と捉えている。
      • 知能のもつ細かな内容を把握しにくい。
      • WISCよりも若干IQが高くなる傾向がみられる。
    • WISC-Ⅳ
      • Wechslerにより開発された知能検査。
      • 対象年齢:5歳0ヶ月〜16歳11ヶ月
      • 知能検査の中では広く用いられる。
      • 下記の4つの指標で構成されている
      • ①言語理解指標(VCI:verbal comprehension index):言語形成概念、言語的理解、結晶性知能
      • ②知覚推理指標(PRi:perceptual reasoning index):視知覚・視覚統合、同時処理、視覚運動協応などの力
      • ③ワーキングメモリー指標(WMI:working memory index):作業などを遂行しながら注意や集中力を保ち、短期記憶に情報を保持する力
      • ④処理速度(PSI:processing speed index):単純かつ習慣的情報に対する処理能力
      • Wechslerは知能を「個人が一定の目標を持って行動したり、合理的に考えたり、周囲と有効な関係をもったりできる相対的な能力」や、環境への適応能力など、さまざまな能力が統合されたものと捉えていた。
    • 新版K式発達検査
      • 児童精神科領域では乳幼児および発達の遅れが疑われる児童に用いられる。
      • 全体の発達指数(developmental quotient:DQ)に加えて、姿勢・運動、認知・適応、言語・社会の3領域の課題を実際に子供に行うことで評価する。
  3. ASDのスクリーニングや評価に用いられるツール
    • スクリーニング:M-CAT、AQ、PARS-TR
    • 評価:PARS-TR
    • ①M-CAT:ASDの早期発見のスクリーニングツールの一つ。2歳前後の幼児に使用される。
    • ②AQ:50項目の質問紙からなり、ASD特性が強いほど総得点は高くなる。不安やうつ状態などの影響を受けやすい。
    • ③PARS-TR:半構造化面接法で、発達早期と現在の評価のために用いられる。カットオフポイントも設定されており、スクリーニングにも使用できる。
  4. ADHDのスクリーニングや評価に用いられるツール 
    • スクリーニング、評価:ADHD-RS-Ⅳ、Conners3®️
    • ADHD-RS:家庭版と学校版が用意されている。項目はDSMの診断基準が元。
    • Conners3®️:ADHDの中核的な特性に加えて、それと関連する学習や実行機能、挑戦性/攻撃性や友人/家族関係から併存することが多い不安や抑うつまでも評価できる。
  5. SLDのスクリーニングや評価に用いられるツール
    • 限局性学習障害(specific learning disability:SLD)については、学習の様子や漢字ドリルの様子、音読の様子、連絡帳やノートにおける板書の記載、日々の生活場面の記録などから判断される。STRAW(小学生の読み書きスクリーニングツール)やLDI-Rなどのスクリーニングは有効であると言われている。STRAWは約15分程度で本人に実施。LDI-Rは子供の学習状況をよく知っている先生などが回答するチェック項目式の質問表で、小学校1年生〜中学校3年生までが対象となっている。
  6. 家族支援 
    • 診断のみを伝えても有用でなく、家族ができそうな支援策を伝えることが重要。
    • 家族が疲れ切ってしまい、余裕がなくならないように、どの窓口、社会資源にアクセスできるのかを教えてあげる。
  7. ペアレントトレーニングのプログラム、怒りなどの感情のコントロールのプログラム 
    • 子育てに困難を感じている親御さんに対して、子供の「行動」に焦点をあてて客観的な理解の仕方を学び、今できることに注目して褒める対応や、よくない行動が起きる前の環境調整、こどもが達成しやすい指示の出し方を学ぶ。子育てに少しでも前向きになれるように。
  8. 薬物治療的なアプローチ
    • うつ病や双極性障害、精神病症状に対しては薬物療法は有効性が高い
    • しかし、ASD、ADHDなどでは、薬物療法を一律に選択する前に、心理社会的な治療を行う必要がある。
    • ターゲットとする症状が明確か、子供自身が薬物療法の必要性を理解できているかを確認する必要がある。
    • また、そもそも薬をしっかりと服用できるのか、副作用が出た時親に伝えられるかにも注意が必要。
  9. 子供自身の悩み事やいじめ、不登校などへの関わり
    • 家族に話すと「迷惑をかける」「心配をかける」と思い、家族に悩みを話せない子もいる。
    • 家族のいない場面での診察も可能であれば行う。居場所がないことを家族に聞かれるのは難しいこと。
  10. 診断書などの書類の作成 
    • 下記のような手当を受けることができる。
      • 特別児童扶養手当
      • 障害児福祉手当
      • 障害者手帳の診断書
      • 通級指導教室、特別支援学級などに関わる診断書
      • 福祉サービスを利用する際の診断書
  11. 他機関との連携
    • 幼児期、学童期などライフステージに応じて連携先は異なる。
    • こどもにあった福祉サービス、行政サービスを考える。
    • 病院だけでサポートするのではなく、地域によってどのような機関がどのような支援を行なっているのかを知り、他機関と連携しながら子供の診療を行なっていくと、こどもにとっても生きやすい居場所が地域の中に広がっていく。
    • 不明な場合は、地域の保健センターや、子どもや障がい福祉に関わる行政窓口に問い合わせるのも良い。

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