PDA:patent ductus arteriosus
今回は、動脈管開存症(PDA)についてのまとめブログです。
PDAについて確認する前に、動脈管の役割について、復習しましょう。
通常、胎内では動脈管は主肺動脈と大動脈をバイパスして胎児循環を成り立たせています。しかし、出生して新生児循環に移行すると収縮し閉鎖します。
正期産児では生後1~2日で閉鎖する動脈管ですが、この動脈管が閉鎖せずに残り続ける場合、どのような影響があるのでしょうか?
総論
・動脈管が遺残し,大動脈→肺動脈シャントが生じた結果,肺高血圧となる。
・先天性心疾患の内15%を占める
・先天風疹症候群でも起こる
・聴診では2LSBで連続性雑音を認める。
上記のような特徴のある疾患ということを踏まえつつ、細かい内容を勉強します。
病態
・胎生期の動脈管は、右心室-肺動脈-動脈管-下行大動脈とつながる動脈管弓の形成を担っている。通常、出生後の動脈管は動脈血酸素分圧の上昇とプロスタグランジン(PG)E2濃度の低下により中膜平滑筋は収縮して生後48時間までに機能的にほぼ閉鎖(動脈管壁の平滑筋細胞の収縮)、生後2-3週間で器質的に閉鎖する(構造自体の閉塞)。新生児期以後も閉鎖しない場合をPDAという。
・PDAでは、大動脈から肺動脈に血液が流れ、左房に還流する。
・重症例ほど肺血流が増加し、左房・左室容積が拡大し、全身への血流が減少する。そのため、全身への臓器血流が低下し、悪化すると腎不全、消化管機能の低下、頭蓋内出血、肺出血などの合併症を引き起こす。
・早産児では、在胎週数が若いほど、また体重が小さいほど動脈管の機能的閉鎖はしにくく、いったん機能的閉鎖をしても、器質的閉鎖が起こりにくく再開存しやすいです。
未熟児動脈管開存症の原因
①機能的閉鎖がしにくい:酸素の収縮作用が弱く、未熟肺のプロスタグランジンE分解が遅いため、動脈管壁平滑筋が縮まない。
②器質的閉鎖がしにくい:動脈管内膜肥厚がなく、動脈管索になりにくく、再開存しやすい。
③心筋が未成熟:肺血流量増加による心不全をきたしやすい。
・構造的および生理学的な未熟性によって閉鎖が遅延する早産児PDAと、正期産児のPDAでは病態・重症度・治療法が異なる。
→動脈管を介して肺血流量が増えると、その分、体血流量は減少します。体血流量減少は未熟な全身臓器に虚血性病変を生じさせる可能性があります。下半身の臓器は上半身に比べて血流量はより減少しやすく、腎不全や壊死性腸炎のリスクです。
疫学
・先天性心疾患の内,15%を占める。女児に多い。
・早産児PDAの発生率は、出生時の在胎週数に反比例し、在胎26週未満で出生した半数以上が生後2ヶ月以後も認める。低体重児,RDSに合併した場合の注意点として,サーファクタント投与で悪化することがある(下記のPDAと呼吸を参照)
・一方、正期産児のPDAの発生頻度は2000人に一人程度、心雑音が聴取されないsilent PDAは20人に一人程度との報告がある。
PDAと呼吸
・早産児は不十分な肺サーファクタントにより呼吸不全を併発する。
・RDSを併発している児では、低い膠質浸透圧と毛細血管の透過性亢進状態にあるため、動脈管に伴う肺血流の増加と微小血管の血圧上昇が、肺胞や間質の浮腫を導く。
・生後24-72時間を超えてもPDAがある場合、肺血管抵抗が下がり、前述の浮腫が増悪し、呼吸状態を悪化させる。
身体所見・症状
・軽症では無症状。中等症以上で気道感染や左心不全
・肺血管抵抗が高い生後早期は収縮期雑音が聴取され、肺血管抵抗の低下とともに動脈管血流が増加すると第二肋間胸骨左縁で連続性雑音が聴取されます。
・脈圧が増大し、拡張期血圧が低下し、心拍数が増加(速脈;バウンディングパルス)。
・重症度のスコアとして、CVD(Cardiovascular Distress)スコアがある。
CVD(Cardiovascular Distress)スコア
・未熟児PDAの初期症状として、拡張期血圧と収縮期血圧との差が開大します。それは、動脈管を介する左右短絡血流量は拡張期に大きいためです。
・拡張期血圧の低下bounding pulse(脈圧の増大)、尿量減少、心雑音、心尖拍動、頻脈、呼吸障害、腹部膨満、代謝性アシドーシス、肺出血などの症状に注意が必要です。
・上記のような症状から、PDAのスコアリングとしてCVDがあります。

UCSF Benioff Children’s Hospital
PDA開存している早産児で注意する症状チェックポイント
・肺血流量増加による心不全症状
・肺うっ血にともなう呼吸障害
・体血流量減少に伴う尿量減少や消化管機能低下症状
検査
心エコー検査
・1.5mm以上の動脈管径と血流波形、左室拡張期末期径の拡大、左肺動脈拡張期血流速度の増加(左右短絡の評価)、下行大動脈や腎動脈拡張期逆流、最大左房容積、上大静脈血流量の変化、内大脳静脈のゆらぎなどが指標となる。
・心負荷の評価として、左房径/大動脈径比 (LA/Ao)、左房容積係数(LAVI)、拡張期末期左室内径(LVIDd)の拡大があるかを評価します。
血液検査
・血中のB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)や、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-pro BNP)は、PDAの重症度評価の際に使用する。
・BNP, NT-proBNPは絶対値ではなく、経時的変化が重要となる。
胸部X線検査
・心陰影の拡大、肺血流量の増加所見などを認める場合がある。
・左第一弓突出(大動脈拡大),左第二弓突出(肺血流量増加),左第四弓突出(左室拡大),肺血管陰影増強,すりガラス状陰影
・生後早期は肺が過膨張であったり、左室陰影が右室陰影に重なるため、左心系の拡大が分かりにくいことがあります。重症例では、拡大した左房が左気管支を上方に押し上げているような所見が見られる場合もあります。
治療と管理
酸素・PEEPの管理
・酸素投与は、肺血流量の増加に伴う心不全を助長する可能性があります。呼吸管理では、必要最低限度の吸入酸素濃度に限定し、高濃度酸素投与は控えましょう。
・呼吸管理としては、呼気終末持続陽圧(PEEP:positive end-expiratory pressure)をかけることで肺血管抵抗を上げ、肺血流を減少させる。
水分管理
・水分投与量の制限は肺血流量増加による心不全には有効です。また動脈管が閉鎖しやすい環境をもたらします。
・しかし、体血流減少に伴う虚血の原因となる可能性があるので、過度の水分量制限は控えた方が良いです。
薬物療法
新生児期には,プロスタグランジン阻害薬投与を行う。
インドメタシン
・0.1-0.2 mg/kgを1時間以上かけて投与することが多い。
・副作用としては、腎障害、消化管穿孔、血小板減少、低血糖などがある。
イブプロフェン
・2018年1月より、イブプロフェンL-リシン静注製剤(イブリーフ静注20mg)の承認が得られた。
・イブプロフェンとして、初回は10 mg/kg、2回目および3回目は5 mg/kgを15分以上かけて24時間間隔で静脈内投与する。
・副作用としては、尿量減少、腎機能障害、血中クレアチニン増加、血中尿素増加など
外科的治療
・インドメタシン不応例、インドメタシン投与による副作用のため追加投与できない症例、すでにNECが疑われたり、出血があってインドメタシンを投与できない症例に行う。
・就学前に結紮,切断術を行うのが望ましい。
・カテーテル治療(コイル,ADO:Amplatzer動脈管閉鎖栓)も治療選択肢としてあり。


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